大阪ダブル選:既成政党、「維新の会」の国政進出を警戒 2011年11月9日

毎日新聞 2011年11月9日

 大阪府知事・大阪市長のダブル選は10日、知事選の告示で選挙戦に入る。「大阪維新の会」の橋下徹代表は次期衆院選での国政進出にも言及し、民主、自民、公明など既成政党を揺さぶっている。

 「偏った見解は難しいという態度決定になった」

 公明党大阪府本部代表の佐藤茂樹衆院議員は8日、知事選、市長選のいずれも自主投票で臨む方針を正式に発表した。同党の山口那津男代表も8日の記者会見で「大阪の複雑な状況があり、府本部の対応に委ねる」と述べ、党本部として関与しない考えを強調した。

 公明党にとって、最優先課題は次期衆院選だ。09年衆院選で8小選挙区で全敗。次期衆院選で候補を擁立する9小選挙区のうち、大阪府内だけで4候補を占める。同党幹部は「大阪は最重要地域。橋下氏を刺激したくない」との本音をもらす。

 伏線はあった。10月下旬、大阪市天王寺区の創価学会関西池田記念会館。作家の堺屋太一氏らが学会幹部を訪ねた。堺屋氏は橋下氏との共著で、府と大阪・堺両市を再編する大阪都構想に関する本も出版している。

 関係者によると、堺屋氏は、公明党が大阪都構想に賛成するなら、次期衆院選で公明候補が立候補予定の大阪4小選挙区に維新の候補者を立てない意向を伝えたという。ダブル選の態度を決めかねていた公明党の関係者は「自主投票を求められた」と受け止めた。

 ダブル選挙に距離を置く公明党に対し、橋下氏の対抗馬を支援する民主、自民両党も腰が定まらない。9月24日には大阪市内のホテルで自民党の石原伸晃幹事長が橋下氏と会談。石原氏が呼びかけ、橋下氏は都構想に賛同を求めたという。民主党も橋下氏を刺激しないよう、「大阪のことは大阪に任せる」(幹部)とのスタンスだ。

 既成政党の苦しい対応にはダブル選挙後、維新の国政進出に対する警戒感がある。都構想を実現するには、地方自治法など関連法の改正が必要。橋下氏は9月26日、記者団に「国政政党が都構想を潰そうとするなら、近畿圏を視野に国政をやる」と宣言した。次期衆院選の候補者擁立をちらつかせ、各党に揺さぶりをかけている。【高山祐、小林慎、岡崎大輔】


 ◇「橋下政治」の是非が争点に

 橋下氏との距離感に苦しむ既成政党に対し、ダブル選挙の争点に橋下氏の政治手法が急浮上してきた。4日夜、大阪市長選に出馬表明していた前市議、渡司(わたし)考一氏(59)=共産推薦=が突然、出馬取りやめを発表。渡司氏は5日の会見で「橋下さんの独裁宣言を許すことができない」と説明し、「反維新勢力の結集」を呼びかけた。

 維新は今春の統一地方選で、大阪府議選や大阪市議選などに多数の候補者を擁立。府議会では過半数を占める。橋下氏は今年6月のパーティーで「日本の政治に一番重要なのは独裁」と発言した。

 共産党が市長選に公認・推薦候補を擁立しないのは1963年以来、48年ぶり。それでも独自候補擁立を見送るのは、橋下氏の人気に危機感を強めているからだ。党大阪府委員会は市長選で平松氏の支援を明言。選挙戦は平松氏と橋下氏の一騎打ちになりそうだ。

 「橋下政治」の是非が争点に浮上した結果、大阪都構想など政策論議は低調になった。民主党幹部は平松陣営に対し「相手の土俵に乗れば『抵抗勢力』とみられる。相手にしない方がいい」と助言。平松氏は橋下氏の人気に対抗するため、「反独裁」を訴える。

 これに対し、橋下氏は「維新対既成政党」の構図を強調する。渡司氏の不出馬を受けて、橋下氏は5日、市長選候補予定者の合同討論会で「ビジョンがないまま、反維新、反橋下でまとまる。日本の政治の弱さの象徴ではないか。新しい政党が誕生しないと、日本再生はない」と皮肉った。