<尖閣購入> 波紋広げる 石原都知事「政府にほえづらを」

毎日新聞/04月19日00時09分配信

東京都の石原慎太郎知事が沖縄県・尖閣諸島の一部を都が購入すると表明し、都庁内外に波紋が広がっている。野田佳彦首相が国が購入する可能性に言及したことで都庁内には「国が買えばいい」との声もあるが、多くの幹部職員は「知事は本気だ」と受け止めている。19日に帰国する石原氏の言動に注目が集まる。

 尖閣諸島の一部を所有する男性(69)=さいたま市=と石原氏を仲介したのは自民党の山東昭子参院議員。山東氏によると、男性は山東氏と30年来の知人で、昨年9月1日に初めて石原氏と引き合わせた。石原氏は衆院議員時代、個人で尖閣諸島を購入しようと男性の母(死去)と会ったことがあったという。

 男性は10年に起きた中国漁船衝突事件など尖閣諸島を巡る問題に触れて「個人で管理するには限界がある」と売却の意向を伝えたところ、石原氏は購入に前向きな姿勢を示した。その後も交渉を続け、今月になって売却の意思を固めたという。

 一方、石原氏は購入を表明した16日、報道陣に「面白い話だろ。これで政府にほえづらかかせてやろう。何もしなかったんだから、連中」と語った。藤村修官房長官が、国が購入する可能性に言及した17日には「いつごろ決断するのか。こっち(都)は取引、もうすぐ終わりますから」と話した。【佐々木洋、ワシントン古本陽荘】

◇「寝耳に水」の都庁

 「しばらく前、知事周辺から都外での土地購入について財務担当に問い合わせがあった。まさかこんな話だとは……」。都幹部の一人が打ち明ける。尖閣諸島の買い取り交渉は、都庁内の根回しなしに極秘裏に進められていた。

 都は知事の特命事項があると、知事本局など部局が横断的にプロジェクトチームを作って対応に当たる。石原氏の表明を受け、都は購入の準備を進めているが、関係者によると、ネックになりそうなのが(1)購入の事業目的(2)現地調査−−だ。

 (1)について石原氏は漁場としての活用や自然エネルギー開発、自然保護などを示唆している。都幹部は「小笠原の世界遺産登録などが参考にならないか検討する」と話す。ただ石原氏に近い都議会自民党の宮崎章幹事長は「都民の利益につながるのかなど、知事に聞かないと判断できない」と慎重姿勢だ。公明党の中嶋義雄幹事長も「購入理由の説明が難しい。東京も地方自治体の一つで、外交問題に踏み込んでいいのかという問題もある」と話す。

 また、土地購入の際は面積確定のための測量が必要だが、所有者と貸借契約を結んでいる国は第三者の上陸を認めておらず、方法は定まっていない。年度末までは国との契約が残っており、それまでの売買も可能かどうか「これから調べる」(知事本局)という。

 財務局によると、99年以降に都が都外の土地を購入したのは、千葉県八街市の児童養護施設の1件のみ。価格が2億円以上で面積2万平方メートル以上なら、都議会の議決も必要になる。民主党の山下太郎幹事長は18日の総会で「6月の第2回定例会で関連予算案を組んでくる可能性もある。情報収集をして(対応方法を)シミュレーションする必要がある」と話した。