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東京都の石原慎太郎知事が表明した尖閣諸島(沖縄県石垣市)購入計画について、都議会の民主、自民両党は前向きな姿勢を示し、購入後の活用に向けた知事の方針も明らかになった。「石原新党」の問題などが絡み、購入に向けては微妙な温度差も浮かび上がったが、12億円を超える寄付金を寄せた国民の強い支持を背景に、計画自体は実現に向け着々と進んでいるといえそうだ。
民主「基本的には賛成」
自民「知事とともに努力を惜しまず知恵を絞る」
5日に始まった都議会では、12日の本会議代表質問で両党の前向きな姿勢が初めて示された。最終的に購入議案を審議する当事者として、議会からようやく一定の意思が示された形だ。
購入理由となる「都にしかできない活用策」の方向性も、輪郭が見えてきた。
「都は沖ノ鳥島周辺での漁業活動振興、世界自然遺産の小笠原諸島における自然保護など、荒廃した尖閣諸島を蘇生させ国土保全につなげるためのさまざまなノウハウを持っている」
知事が質疑で述べた裏には、都内に約220の島があり、これら伊豆、小笠原両諸島で日本の排他的経済水域(EEZ)の4割を押さえている事実がある
都は都心から約1700キロ南の沖ノ鳥島周辺に設置した魚礁にマグロ類を呼び寄せ、回遊実態も調査。小笠原では固有植物を食べるヤギ駆除などで自然保護に取り組んできた。尖閣でもヤギ獣害があり、周辺ではマグロも取れる。都の離島振興の実績は約1900キロ離れた尖閣にも生かせる−との考えだ。
<公有化に賛成>
「ただし民主、自民の代表質問をよく読むと賛成したのは尖閣の『公有化』だ」。都議会関係者はこう指摘し、購入に単純に「賛成」したとはいえない議会側の微妙な立場を明かす。
本会議で購入に「大いに賛同」とした民主都議も、賛否の幅が大きい党内事情に配慮し「私としては」とあくまで個人の考えと前置き。知事与党の公明は、質疑で尖閣に触れていない。
こうした微妙な温度差が表面化した場面があった。
経済港湾委員会の理事会で購入に前向きな民主の理事が「購入議案はいずれ出る。事前の検討も必要」と海洋調査専門家の参考人招致を提案したが、自公は「まだ議案さえ出ていない中では時期尚早」と懸念を示し、結論は出なかった。
背景には、知事自身も繰り返す「本来は国の役割」という大前提をどう判断するか。購入意義を説く一方で「国にいつでも売る」とも話す知事への戸惑い、衆院解散や石原新党の可能性も浮上する中「いつまで知事でいるか不透明」との不安などがある。
<調査時期焦点>
ただ、各会派では本格的な審議に先立って検討体制づくりも整いつつある。「仮に購入議案を通しても目的外支出だとの反論で、行政訴訟でひっくり返される可能性も否定できない」との懸念があるためだ。
自民では36人全員が参加した「尖閣諸島公有化推進政策研究会」を発足。民主は政策調査会に近くプロジェクトチームを置く。公明も自治体の財産取得に関する法令や判例などの研究を始めたという。このほか都議有志が、周辺海域調査を行う計画を立てている。
都も1日約1千万円の寄付が集まる高い支持を背景に、国に尖閣の戦略的活用で権益確保を図るよう要求することを準備。石垣市を訪問するなど尖閣問題に携わってきた知事本局長を副知事に据えるなど、足場を固めている。今後は議案が提案される12月の定例会に向け、上陸調査の時期などが焦点となりそうだ。