朝日新聞2012年7月7日03時01分
野田政権は尖閣諸島(沖縄県石垣市)を国有化する方針を固め、東京都の石原慎太郎知事に6日、尖閣諸島を購入する意向を伝えた。政権幹部はすでに地権者側とも交渉しており、購入を前提に折衝を進めている。政権は年内に国有化にめどをつけたい考えだが、領有権を主張する中国が反発を強める可能性がある。
野田政権が購入を検討しているのは、魚釣島と南小島、北小島の3島。事務レベルで都側と非公式に交渉してきたが、政府高官が6日、都庁に石原知事を訪ね、3島の国有化を検討していることを伝えた。
3島はいずれも無人島で、現在は個人が所有している。日本の排他的経済水域(EEZ)の基点になっており、日本政府は「国際法上も歴史的に見ても、我が国固有の領土」(野田佳彦首相)との立場だ。
石原知事は今年4月、米ワシントンでの講演で「東京が尖閣諸島を守る」と述べ、都の購入方針を表明。地権者の同意を得て、来年4月に購入する考えで、現在、購入資金として全国から13億円を上回る寄付金が集まっている。石原氏はその一方で「本当は国がやるべきだ」とも主張している。
都が購入に乗り出したことで、来年3月末で切れる地権者との賃貸契約を更新するのは難しい情勢だ。政権は「挑発的な言動を繰り返す石原氏が購入に踏み切れば、日中関係がさらに悪化する」(政府関係者)として、首相官邸が主導し、都が購入を決定する前に、国有化に道筋をつける必要があると判断した。
尖閣諸島の国有化をめぐっては、民主党の前原誠司政調会長が4月、「沖縄県の土地を他の自治体が買うのは筋違い。国が買うべきだ」との考えを示し、自民党も5月に発表した次期衆院選の選挙公約第2次案で「尖閣諸島の国有化」を明記している。
ただ、石原知事は7月6日の記者会見で「できるだけ早く取得したい。国は間接的に尖閣を守ることができる。(国も)すべての協力をすると言っている」と年度内に購入する考えを強調。石原氏は、これまでも取得後に国に売る可能性も示唆しており、一度東京都が同諸島を購入した後に、国が都から買い取る形で国有化する可能性もある。
尖閣諸島の周辺海域には石油や天然ガスなどの地下資源が豊富に埋蔵されており、中国も領有権を主張している。2010年9月に尖閣諸島沖で起きた中国漁船衝突事件でも日中関係が悪化。中国側は都の購入方針にも強く反発しており、日本政府が国有化に踏み切れば、日中関係が緊迫化することも予想される。
◇〈尖閣諸島〉沖縄県石垣島の北約170キロに位置し、面積3.82平方キロメートルの魚釣島(うおつりじま)、1平方キロメートル未満の久場島(くばじま)、北小島、南小島、大正島と岩礁群からなる。東京都が購入を表明しているのは魚釣島、北小島、南小島などで現在は個人が所有。政府は2002年度から3島の賃借契約を地権者と結び、年間2450万円を支払っている。