野田政権が尖閣諸島(沖縄県石垣市)について、20億5千万円で購入することで地権者と合意したことがわかった。近く関係閣僚で尖閣諸島の国有化方針を確認し、今年度予算の予備費からの拠出を閣議決定する方針。政府高官は4日、先行取得を目指していた東京都の石原慎太郎知事に会い、こうした状況を伝えたとみられる。
長浜博行官房副長官は3日、地権者側と極秘に面会。関係者によると、尖閣諸島の魚釣島、北小島、南小島の3島を国が20億5千万円で買い取ることで合意した。政権側は当初、3島の実質的な価値を「5億円程度」(首相周辺)と見積もっていた。だが、都が14億円超の寄付金を集めたことから、都に先駆けて尖閣諸島の国有化を急ぎ、約20億円での購入を決めた。
政権は、近く地権者側と正式な契約書を交わし、9月中旬以降の閣議で、尖閣購入について予備費からの拠出を決定したい考えだ。
一方、政府高官は4日、石原知事と東京都内で会談し、地権者側と合意したことを伝達。中国や台湾を刺激するのを回避するため、石原知事が要求している尖閣諸島への港湾施設整備には応じられないことも伝えたとみられる。
都は尖閣購入を前提に、2日に洋上からの調査を実施。石原知事は10月の再調査に自らも参加し、政府の許可がなくても上陸する意向で、政権の購入に反発するのは必至。政権は尖閣諸島の活用方法や都が集めた寄付金の扱いなどで引き続き都側と協議し、理解を求めていく方針だ。
尖閣諸島の領有権を主張している中国も国有化方針に反発しており、購入を閣議決定すれば、批判を強めるのは避けられない。首相周辺は、9月下旬の国連総会での日中首脳会談を想定し、「会談で日本政府の国有化方針を伝えたい」としている。
尖閣諸島をめぐっては、石原知事が今年4月、米国での講演で都が購入する方針を表明。これに対し、野田佳彦首相は7月7日に「尖閣諸島を平穏かつ安定的に管理する観点から所有者と連絡をとりながら総合的に検討していく」と国有化方針を明言。政権側は地権者と独自に交渉を重ね、都が集めた寄付金額を上回る20億円を提示、交渉を優位に進めていた。
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〈尖閣諸島〉沖縄県石垣島の北約170キロに位置し、面積3.82平方キロメートルの魚釣島(うおつりじま)、1平方キロメートル未満の久場島(くばじま)、北小島、南小島、大正島と岩礁群からなる。国が購入するのは、現在個人が所有している魚釣島、北小島、南小島の3島。政府は2002年度から3島の賃借契約を地権者と結び年間2450万円を支払ってきた。久場島も個人所有で防衛省が賃借。大正島は国有地。