橋下徹大阪市長の予算が仕分けられた。20日発表された市の来年度当初予算案は、義務的経費を中心とした「骨格予算」となり、学力向上や防犯などの分野から市長肝いりの事業が姿を消した。一方で、橋下市長が実現に意欲を見せた中学校の全員給食などの費用は計上されており、市長と対立する市議会側は早くも「骨格に肉がいっぱいついている」(自民市議)と牽制(けんせい)。項目によっては厳しいチェックが入りそうだ。
橋下市長が辞職を表明した3日時点で「予算編成は9割以上済んでいた」(財政局幹部)。そこから市は、骨格予算を組むために「すでに着手している事業の継続」「緊急性・必要性が高い」などの要件を満たさない予算項目を次々とそぎ落としていった。
市民局は自転車盗などの街頭犯罪を防ぐために制服姿の警備員120人にパトロールさせる「街頭犯罪抑止チーム」新設事業として3億300万円を予算要求。橋下市長も予算化を明言していたが、骨格予算には計上されなかった。
担当者は「(市長の)政策色が強く、緊急性の面では弱かった」。補正予算に望みをつなげるが、当初予定していた6月の運用開始は厳しい状況という。
キタの再開発地区「うめきた」に新駅を設置するための設計費などとして計上予定だった計1千万円も落ちた。都市計画局の担当者は「もともと設計などの作業は来年度後半に行う予定だった」と話し、平成34(2022)年度の開業計画に影響はないと説明。しかし、新駅を活用してキタと関西国際空港を直接結ぶ関空アクセス改善構想への期待感に水が差された格好だ。
一方、市立中学校で4月から新1年生を対象に全員給食を導入する費用18億900万円は計上され、市教委関係者は「無事に中学校に給食を届けられそうだ」と胸をなで下ろした。橋下市長が全員給食導入へ旗を振り、当初は予算化が確実視されていたが、辞職表明で一転して仕分けの俎上(そじょう)に載り、担当者が気をもむ展開になっていた。
このほか、保育施設整備などを進める小規模保育事業の25億2800万円を計上。大阪府内の全消防のレベルアップを図るために市と府の消防学校が連携して訓練・研修を行うための費用1億100万円も盛り込まれた。市消防局幹部は「災害に備えるために運用開始を遅らせるわけにはいかなかった」と安堵(あんど)した。