大阪市を廃止し5つの特別区に分割する「大阪都構想」の是非を問う住民投票が告示され、5月17日の投票日に向け賛否両派のPR合戦が激しさを増している。住民投票には公職選挙法が準用されるが、通常の選挙より制限が緩やかで、より自由な活動が可能だからだ。テレビCMやコント、オリジナルメロディーまで取り入れるなど“総力戦”の様相を呈している。
「大阪を5つの区にすると言っているが冗談じゃない。東京23区と比べて5区は少なくて恥ずかしい。大阪のプライドがずたずた」
28日夜、大阪市内で開かれた反都構想集会。社会風刺集団「ザ・ニュースペーパー」のコントで、安倍晋三首相に扮(ふん)したメンバーが都構想を揶揄(やゆ)すると、参加者約6千人(主催者発表)からどっと笑いが起きた。
反都構想を掲げる竹山修身堺市長や平松邦夫前大阪市長も駆けつけた「大阪市なくしたらアカン! 府民大集合」の一幕で、主催者は「お笑いという柔らかい手段で都構想の問題点を分かってもらい、反対派を増やしたい」と狙いを明かす。会場では反対派の共通キャッチフレーズ「We Say NO! 5・17OSAKA」が書かれたTシャツの販売も行われた。
また、政治団体「府民のちから」も近く、反対票の投票を呼びかけるはがき約20万枚を市民に郵送する。
選挙で特定の候補者の当選のために行われる「選挙運動」に対し、住民投票に向けて賛成・反対を呼びかける「投票運動」は買収や個別訪問は禁止されているが、チラシや街宣車、看板の数量、活動資金に関しては実質無制限で、投票日も活動することができる。
推進派の大阪維新の会は広報費として約4億円を投入。維新府議は「都構想のための政党だ。ここで金を突っ込まなければ、いつ突っ込むのか。考えつくすべてのことをやる」と息巻く。代表の橋下徹大阪市長が笑顔で登場するテレビCMを放映中のほか、今後、ラジオCMも流す予定だ。
市内の全戸に折り込み広告を計約15回配布し、巨大看板も約10カ所に設置。「CHANGE OSAKA! 5・17」「賛成」と書かれたTシャツも販売したほか、街頭演説やチラシ配布は議員総動員で行う。
さらに「都構想オリジナルメロディー」も制作。明るい曲調で歌詞はないが、「おなじみの音楽でごみ収集車が来たのが分かるように、音楽で都構想を連想してもらえるようにする」(維新府議)のが狙いで、イメージアップを図る。
一方、反都構想を掲げる自民党大阪府連の広報予算は数千万円規模にとどまるため、12日投開票の市議選で返還された供託金1人当たり50万円などを府連に集めて活用する。5月からはテレビで反都構想CMを流す予定で、党関係者は「告示期間後半に集中的に流すよう狙いを絞る」。
今月23日には住民投票反対運動対策本部を設置し、市議を中心に反都構想集会を開催。府連関係者は「地べたをはいずり回って、住民投票の主役である市民の活動を掘り起こしてきたい」と意欲を燃やす。