毎日新聞2015年10月13日 大阪夕刊
自民党大阪府連は12日、大阪市内で府連大会を開き、11月22日投開票の府知事選に同党の栗原貴子府議(53)を無所属で擁立することを決めた。栗原氏も正式に出馬表明し、「維新政治による混乱から決別し、まっとうな府政を取り戻したい」と松井一郎知事(51)が再選出馬する大阪維新の会との対決姿勢を鮮明にした。出馬意欲を示す平松邦夫前大阪市長(66)にも支援を呼びかけ、非維新候補の一本化を目指す方針だ。
栗原氏は「維新政治による数年間、大阪は政党間対立で混乱を極めた。それが衰退につながっている」と批判。大阪経済のけん引策として「リニア中央新幹線や北陸新幹線延伸で、大阪を中心にした『新幹線ネットワーク』を構築したい」と述べた。さらに「大阪、堺両市に大阪経済のエンジンとして頑張ってもらう」と、大阪市解体を前提とした維新の看板政策「大阪都構想」をけん制。大会後、記者団に「(都構想は)終わったことで議論する気もない」と述べ、争点化を避ける考えを示した。
栗原氏は週内にも党本部の推薦を得たい考えで、その後、公約を発表する。維新との決別の象徴として、橋下徹大阪市長が知事時代に購入した府咲洲庁舎(旧WTCビル)からの撤退などを盛り込む方針だ。
栗原氏の出馬表明で、大阪ダブル選の主な候補予定者が出そろった。5月の住民投票に続き、橋下氏率いる大阪維新と自民中心の非維新勢力が激突する構図だ。著名人や官僚出身者が常連だった過去の選挙と異なり、現職地方議員や経験者が顔をそろえた。
大阪維新公認で出馬する松井氏は府議会議長だった父の地盤を継ぎ、会社役員を経て2003年に自民党から府議に初当選、11年に知事に転じた。市長選の吉村洋文(ひろふみ)前衆院議員(40)は弁護士で11年に大阪市議に初当選し、昨年国政に進出。都構想の設計図作りのリーダーを任されるなど政策通との定評がある。
一方、非維新陣営の市長選は、反都構想の論客で知られる柳本顕(あきら)大阪市議(41)。関西電力社員を経て1999年、同市議だった父の死去に伴い出馬し、25歳で初当選した。栗原氏は公認会計士で豊中市議から府議に転じ、2期目。周囲は「知名度は低いが、府政に詳しく、討論もできる」と評価する。
大阪維新はマニフェスト(公約)で副首都「大阪」の確立などを掲げ、実現のため「新たな都構想の設計図を作らせてほしい」と強調。自民は「制度論でなく政策によって大阪を成長させたい」として交通インフラの整備などを打ち出す。
選挙戦では、共産党が無所属で出馬する柳本、栗原両氏の支援方針を固め、民主党も支援を検討中。住民投票で支持母体の創価学会が「自主投票」を決めた公明党の態度が今回も鍵を握りそうだ。12日に自民府連会長に就任した中山泰秀衆院議員は「自公政権なので一緒にやるのが基本。告示までに話し合いたい」と支援を求める考えを示した。
市長選には前大阪市北区長の中川暢三(ちょうぞう)氏(59)も立候補を表明している。【小山由宇、平川哲也、熊谷豪、山下貴史】