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橋下徹批判とは離れて、「従軍慰安婦の実態」について、小生の意見を述べたいと思います。というのは、知恵袋での意見の中に、かなり偏った（と小生には思われる）意見が多かったということと、そもそも、従軍慰安婦って何という質問があったからです。小生が実態を知っている、というわけではありません。何を言いたいか、というと、実態はよくわからないのだ、ということを言いたいのです。
そもそも従軍慰安婦＝売春婦で、戦前は売春は合法でしたが、だからといって、裏の商売であるのは今と同じ。だから、これに関して証言をする人は少ない。慰安婦だけでなく、慰安所の経営者、使用人、あるいは慰安所を利用した兵士、あるいは慰安所に関与した軍関係者など、関係者は少なくないはずですが、証言すれば、この人は売春にかかわっていた、とわかってしまいますから、自ら証言する人は少ない。
Wikipediaによれば、従軍慰安婦問題が顕在化したのは、戦後25年経過した1970年代になってからということです。また、1991年になってようやく、＜韓国で元慰安婦が初めて名乗り出て、自らの体験を語った＞とあります。この問題が本来は顕在化しにくい問題であった、ということがわかると思います。
従軍慰安婦に関する議論の中では、従軍慰安婦の強制連行があったかどうか、ということが問題になります。たとえば、橋下は＜日本軍または政府が、従軍慰安婦を強制連行した証拠はない＞と言っています。＜証拠がない＞は、その事実がなかったということではありません。「証拠不十分で無罪」ということは、よくある話ですね。
さらに言うなら、強制連行の事実がなかった、ともいえないでしょう。小生は、軍が強制連行したことはないだろう、とは思います。というのは、慰安婦の募集は基本的には民間業者の仕事だからです。
民間業者は、強制連行に近いことをやったかもしれません。売春婦を集めるのに、だますとか脅す、というのは、昔も今もあるでしょう。親の借金の肩代わりで身売りをした、というのもあるはずです。ほとんどの女性は、好んで売春婦になりたくないでしょうから。
では、軍が強制連行したかどうか、については「証拠がない」。しかし、軍は交通手段を管理していました。慰安婦の「輸送」には便宜を図ったかもしれない。
慰安所の実態はどうだったでしょうか。おそらく、時と所で異なり、さまざまであったでしょう。軍や政府が、公式にやっていたなら、慰安所の規格（？）や慰安婦の待遇などが定められ、文書で記録が残ったでしょうが、民間の裏の商売なので、そういうものがありません。良心的な業者もいたのでしょうが。悪質な業者もいたでしょう。
慰安婦は高給を約束されて、進んで応募した、という人もあります。確かにそれらしい事実はあります。しかし「慰安婦」の業務を明確に説明したかどうか。給料から諸経費と称していろいろ差し引いたかもしれないし、前借した借金の返済に充てられたかもしれない。さらには、戦況が悪化すれば、それすら支払われなくなったかもしれない。給料の中から、いくらかでも貯蓄が出来たとしても、戦後のインフレで、価値は目減りしたでしょう。
一日何人客をとれ、というノルマはあったでしょう。逃げ出せば連れ戻され、暴行される、ということもあったでしょう。第一、言葉も通じない、地理もわからない外国では、逃げ出してもしょうがない、ということもあるでしょう。Sex-slaveという表現がぴったりの実態だった、ということもあったでしょう。
こういう慰安所の経営に軍がどこまで関与したか、これも様々でしょう。
軍が非公式に、慰安所の設置を業者に依頼したことがあったかもしれない。業者のほうから、ここで商売をやりますから、よろしく、ぐらいの挨拶があったかもしれない。軍は、慰安所の衛生管理には、口を出したかもしれませんね。兵士に性病をうつされたら困りますから。兵士には「衛生サック」＝コンドームが配給されていた、ということです。それを使用する場所はおのずと限られますから、軍が全く関与していない、とは言えないでしょう。
余談ですが、兵士はみな慰安所に行ったかというと、そうではないようです。行く人は行ったが、行かない人は行かなかった、らしい。これは、今の風俗業に行く人は行くし、行かない人はいかないのと同じでしょう。そして、当時の一般社会でも同じだったらしい。
面白いのは、妻帯者は行くが、独身者は行かないという傾向があったそうです。
要するに従軍慰安婦の実態は、時と所によりさまざまで、軍の関与もさまざま。ある特定の事実をもって、全体がこうであった、と推定することは、出来ないと思います。
小生は、従軍慰安婦について調査したこともなく、売春について調査したこともありません。小説などで読んだ限りでは、売春の実態とは、こういう感じではないのか、それを従軍慰安婦に当てはめれば、こうなるのではないか、考えています。
（追記）
○軍による強制連行について
上で、「軍による強制連行の証拠はない」と書きましたが、誤りであったようです。
秦郁彦氏によれば、原則として、強制連行は無かったが、オランダ人女性を慰安婦として徴用した白馬事件や、フィリピン人女性を慰安婦として徴用した件などについては、強制連行のケースもあった、ということのようです（Wikipedia「秦郁彦」「慰安婦論争についての評価」より）。
「白馬事件」日本軍占領中のインドネシアで日本軍人によりオランダ 人女性に対して行われた監禁・強姦事件がありました。と呼ばれています。これについてはWikipediaの記述をご参照ください。
○慰安婦の実態でわかっていること
この項を書いた後で、保坂正康著「昭和陸軍の研究《第�敬堯嫋赦体Ψ蓋綮法沈鏝綣匆颪悗留�<7>のこされた「戦後補償」問題をみつめて」に慰安婦問題に触れている個所があるのに気づきました。（朝日文庫版 下巻 ｐ.599〜）
保坂氏は「巷間、論議されている慰安婦問題について、私は、全く別な視点を持っているので、その角度から論じてみたい。いわば昭和陸軍を検証しているその流れからの視点である。」としています。つまり、巷間の論議からは中立的な立場からの議論であり、そういう意味で信頼できると思います。
上では、軍の関与については具体的に述べていませんが、この書では、「慰安所がはじめて誕生したのは昭和１３年（１９３８年）春とされている。中国戦線でのことで、このときに上海派遣軍の兵站部が慰安所を管理することになった。軍が慰安所に関与したのは間違いない。」「おそらくこの第一号の後の慰安所は民間業者と派遣軍、方面軍との間の、阿吽の呼吸で開設されたのであろう。」「民間業者は部隊が動くにつれて、慰安婦を連れ歩いているが、その時の交通手段はむろん軍の輸送船船団に乗せられて移動している。」などど書かれています。
そのほか、いろいろ参考になることが多いです。
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