「橋下徹批判-ご挨拶と目次」で述べましたように、小生は当初石原慎太郎批判をやっていたのですが、石原は国政復帰を隠れ蓑にして都政から逃亡し、橋下徹の傘下に入ってしまいました。そこで、批判の対象を石原から橋下に変更しました。
さて、どこからはじめようか、と考えていたところ、橋下徹の従軍慰安婦問題に関する発言で、大騒ぎになってしまいました。これを取り上げない手はないでしょう。ということでなにはともあれ、大急ぎで。
文章や内容の不備、間違いがあればご指摘ください。
まずは、橋下徹の発言内容の確認。
橋下氏の発言要旨＝従軍慰安婦問題
時事通信 5月13日(月)21時0分配信
問題になった発言は以下の3つ
�‘�本軍または政府が従軍慰安婦を強制連行した証拠はない。
��慰安婦制度は、当時は必要だった。
�２�縄米軍に風俗業の活用を提案した。
まずは、「日本軍または政府が従軍慰安婦を強制連行した証拠はない。」について。
この発言は、従軍慰安婦が存在しなかった、ということではありません。従軍慰安婦は単なる売春婦、「従軍慰安婦」などというものは存在しない、と主張するひともいますが、従軍慰安婦を、軍人軍属を対象とした売春婦と定義すれば、そういう人たちは存在しました。
また、橋下は、「従軍慰安婦問題」が存在しなかった、とも言っていません。これまた、「従軍慰安婦問題」をどう定義するか、ということがあります。日韓の外交問題としてとらえれば、「問題」は存在するでしょう。もっとも、これに対して解決済みと主張する人がいますが。
戦前の女性が、自らの意思に反して、劣悪な条件で、軍人相手の売春をさせられた、という問題と定義すれば、問題は存在する。しない、という人もいますが、少なくともそういう証言をする人がいる、ということを問題と定義すれば、問題は存在する。
さらに「強制連行がなかった」ということでもない。軍による強制連行はなかったとしても、民間業者による強制連行はあったかもしれない。橋下はそれについては、何も言っていません。
そして、「日本軍または政府が従軍慰安婦を強制連行した事実はなかった。」でもありません。「証拠がない」ということは、「その事実がなかった」ということではない。証拠不十分で無罪、ということはよくあること。
「日本軍または政府が従軍慰安婦を強制連行した証拠はない。」は、従軍慰安婦に関して、非常に限定された事実を述べているのです。実は、橋下は、もっと限定的に、今証拠がないが、将来出て来ることはありうる、と述べています。
この発言はおそらく事実でしょう。そして日本政府の公式見解も、ほぼ、このとおりです。
なぜ、橋下は、こういうややこしい発言をしたのでしょうか。
おそらく、この発言に対して、韓国側および韓国の立場を支持する人たちからの「誤解」に基づくさまざまな反発があることを予想し、それにたいして、「私は、従軍慰安婦が存在しなかった、とも、「従軍慰安婦問題」が存在しなかった、とも、強制連行がなかった、とも、日本軍または政府が従軍慰安婦を強制連行した事実はなかった、とも言っていない」という反論を用意していたのでしょう。橋下の巧妙な論争術ですね。
この発言は意味がない、というか、誤解を招くだけで、従軍慰安婦問題の解決には役立たないでしょう。
橋下（日本人）が「証拠がない」といえば、「お前が盗んだのだろう」といわれた泥棒が「証拠があるなら出せ」と居直ったのとおなじ、と韓国の人たちに思われても仕方がないでしょう。
従軍慰安婦は売春婦です。売春は、裏の商売なので、それにかかわった人たちは、証言したくないでしょう。だから証拠が少ない。それがこの問題の特徴であり、この問題の解決を難しくしている原因なのです。証拠がないといって、片付く問題ではないでしょう。
したがって、この発言は、韓国・北朝鮮の人々の感情的な反発をまねくだけなのです。そして、この感情的な反発が、冷静な議論を妨げる。
従軍慰安婦問題は、日本と韓国（朝鮮）の人々がこの問題について共通の認識をもち、そのうえで問題解決を図らなければ、解決しないでしょう。そういう意味で、この発言は解決には役立たないだけでなく、かえって問題解決を困難にする、と思います。
まずはここまで。次は「慰安婦制度は、当時は必要だった。」について。
（追記）
○軍による強制連行について
秦郁彦氏によれば、「原則として、強制連行は無かったと主張しているが、オランダ人女性を慰安婦として徴用した白馬事件や、フィリピン人女性を慰安婦として徴用した件などについては、強制連行のケースもあったとしている。」
（Wikipedia「秦郁彦」「慰安婦論争についての評価」より）
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