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この件については、ほぼひと月前の間。採りあげるかどうか迷っていました。どうも、この件は論じようがない、というような気がしていましたので。
まずは、新聞記事の全文を引用します。
「沖縄女性、慰安所で頑張った」 橋下氏「感謝の念」
琉球新報 2013年7月6日
日本維新の会共同代表の橋下徹大阪市長は5日、県内から参院選比例代表に立候補している公認候補を支援するため来県した。橋下氏は応援演説で、米施政権下の県内で日本政府による米兵向け慰安所が設置されたとして「レイプを止めるために、沖縄県の女性が一生懸命になってやってくださった。感謝の念を表す」などと発言した。橋下氏は5月の米兵風俗利用発言を撤回し、米側に謝罪の意を示していたが「過去に女性を性の対象に利用していた、とアメリカに言いたい」と述べた。橋下氏は沖縄本島中南部の4カ所を遊説した。沖縄市の胡屋十字路では「米軍の沖縄占領時、日本の政府が真っ先に作ったのは、RAAという特殊慰安所協会だ」などと主張した。「女性の人権を蔑視していると言うが、沖縄の女性が特殊慰安所協会で一生懸命頑張ったことを全部無しにするのか」と持論を展開した。
沖縄女性史研究家の宮城晴美氏によると、日本政府が米国占領下の県内で、慰安所を設置した事実は確認されていない。
RAA(特殊慰安施設協会)については、Wikipediaにも記述がありますが、東京、熱海・箱根、大阪・名古屋に施設があっただけで、沖縄については言及がない。
小生は、おそらく沖縄でも、米兵相手の売春はなかったわけではないと思います。したがってこの事実誤認は、「沖縄の女性に感謝」という発言の主旨とは直接は関係がない。ただお粗末の一言でしょう。
さて。
このことについての、報道は多くなかったようです。琉球新報のほかは、朝日新聞ぐらいでしょうか(毎日新聞は、琉球新報の記事を引用している)。小生の予想に反して、報道は少なかったです。
冒頭で、小生は、この件は論じようがない、というような気がした、と言いました。小生が最初にこの記事を見たときの感覚は、不気味というか、気持ち悪いというか、理解不能というか、ちょっと言葉にならない、というか…。言葉で説明できない気味悪さを感じました。あるいはメディアもそういう感じだったのでしょうか。
「言葉にならない」では論評になりません。とりあえず、メディアがどう報道しているかを見て、それを手がかりにしてみましょう。
琉球新報に、この発言に対する批判の声の記事があります。
橋下氏慰安所発言「身勝手で屈辱的」県内識者ら批判
琉球新報 2013.07.06
参院選の応援で来県した日本維新の会共同代表の橋下徹大阪市長が5日、「レイプを止めるために沖縄県の女性が一生懸命になってやってくださった。感謝の念を示す」などと発言したことを受け、県内の識者や人権団体からは「感謝されてもうれしい人などいない」「男目線で身勝手だ」などと批判が上がった。慰安婦制度を容認し、在沖米軍に性風俗産業の活用を勧めた発言もあっただけに、「感覚が理解できない」との意見も聞かれた。女性学を専門とする宮城公子沖大准教授は「米軍の性暴力を止めるために、沖縄の女性が頑張ったという発言は上から目線で、女性にとって屈辱以外の何ものでもない」と批判した。
「女性たちは貧困の中で、米兵の性の相手をせざるを得なかった。感謝されてもうれしい人などおらず、二重に女性たちを傷つけている。本当に悔いて謝罪しなければ、何の意味もない。男たちも『おかしい』と声を上げるべきだ」と強調した。
「女性たちが頑張って性暴力の防波堤をしたのか。追い詰められこそすれ、甘んじて蹂躙を受け入れるなんて、とんでもない」。沖縄平和市民連絡会共同代表を務める宮城=内海えみこ琉大准教授も憤りを言葉に込める。「こうした橋下氏の発言に、『お国のため』を優先して人権が尊重されなかった、かつての日本を想起させる」と指摘。「男目線で身勝手な作文。弱者への共感や理解が及ばないままに、女性を持ち上げるから、ずれが起こる。口を出せば出すほどぼろが出ている」と述べた。
沖縄人権協会事務局長の永吉盛元弁護士は「一連の発言をみると、慰安婦制度の肯定を前提にしていると感じる。基本的人権を尊重する憲法の趣旨からみても、そのような発言を繰り返す彼の感覚が理解できない。ずれているとしか言いようがない」と話す。その上で「発言の背景に、軍隊の存在を正当化したいという考えがみえてくる」と語った。
(以下略)
小生が非難されることを覚悟の上で、これらの批判の中で、小生の気持ちにぴったりしないものをえらべば、「上から目線」「女性にとって屈辱」「人権」「男目線」「憲法」というような言葉でしょうか。「発言の背景に、軍隊の存在を正当化したいという考えがみえてくる」というのは、全く共感できません。
この際、「憲法」「人権」は、批判の根拠にはならないでしょう。橋下ですら、人権を尊重している、と言っています。抽象的ではなく具体的な、論理的ではなく感覚的な部分で、橋下の発言に違和感がある。「上から目線」も具体性に乏しい。「女性にとって」「男目線」と言われると、男性である小生は、なんとも言いようがありません。
そういうものを取り除いてみると、残るのは「女性たちは貧困の中で、米兵の性の相手をせざるを得なかった。感謝されてもうれしい人など」いない、「二重に女性たちを傷つけている」、「弱者への共感や理解が及んでいない」ということでしょうか。
橋下は、沖縄の女性たちが「役に立った」から感謝しているが、同情はしていない、ということでしょうか。(橋下は、おそらく口では「同情している」というでしょう。)「被害」にあった沖縄の女性たちは、感謝と同情と、どちらを望むでしょうか。あるいは、どちらも望まない、そっとしておいてくれ、ということでしょうか。
橋下は口で「感謝する」だけで、何もしないでしょう。出来るわけがないです。まさに、「リップサービス」でしょうが、サービスにもなっていません。
沖縄県の女性は、橋下に何というでしょうか?「感謝するなら、大阪に基地を持って行け」でしょうか、「じゃあ、あんたの娘を沖縄の風俗業で働かせたら?」かな?沖縄の風俗嬢なら「同情するならカネをくれ」でしょうか。
なんとなく、自分は安全なところにいて、適当なことを言っている、ような気がします。それなら「上から目線」というのもわからなくはないです。
小生が「言葉で説明できない気味悪さ」を感じたのは、橋下が沖縄の女性たちの気持ちを「共感」していないからでしょう。
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