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橋下徹「私の認識と見解」について

橋下は5月27日付で、「私の認識と見解」という文書を発表しました。

この文書は要するに、橋下徹の「従軍慰安婦問題発言」の言い訳です。外国特派員協会での講演(記者会見?)に向けて準備されたものでしょう。わざわざ英訳も作られています。

かなり、同じ言葉の繰り返しがありますので、適宜抜粋します。

まず、冒頭で、<私は、21世紀の人類が到達した普遍的価値、すなわち、基本的人権、自由と平等、民主主義の理念を最も重視しています。><極めてオーソドックスな立憲主義の立場を採(と)る者です。><21世紀の今日、女性の尊厳と人権は、世界各国が共有する普遍的価値の一つで><私の思想信条において、女性の尊厳は、基本的人権において欠くべからざる要素で>ある、と言っています。

そして、<いわゆる「慰安婦」問題に関する発言について」において<第二次世界大戦前から大戦中にかけて、日本兵が「慰安婦」を利用したことは、女性の尊厳と人権を蹂躙(じゅうりん)する、決して許されない><慰安婦の利用を容認したことはこれまで一度もありません。><かつて日本兵が女性の人権を蹂躙したことについては痛切に反省し、慰安婦の方々には謝罪しなければなりません。>と述べています。

さて、<…謝罪しなければなりません。>のあとに次の文章が続きます。

同様に、日本以外の少なからぬ国々の兵士も女性の人権を蹂躙した事実について、各国もまた真摯に向き合わなければならないと訴えたかったのです。あたかも日本だけに特有の問題であったかのように日本だけを非難し、日本以外の国々の兵士による女性の尊厳の蹂躙について口を閉ざすのはフェアな態度ではありませんし、女性の人権を尊重する世界をめざすために世界が直視しなければならない過去の過ちを葬り去ることになります。戦場の性の問題は、旧日本軍だけが抱えた問題ではありません。第二次世界大戦中のアメリカ軍、イギリス軍、フランス軍、ドイツ軍、旧ソ連軍その他の軍においても、そして朝鮮戦争やベトナム戦争における韓国軍においても、この問題は存在しました。

<日本以外の少なからぬ国々の兵士も女性の人権を蹂躙した事実について、各国もまた真摯に向き合わなければならないと訴えたかったのです。>

これについては、小生は、大人にしかられた子供が「○○ちゃんだってやってる」というのと同じ、と思いました。

外国人の反応にも、同じものがありました。

 元新聞記者で現米大学教授は「トゥ・クオ・クエ」(お前も同類さ)というラテン語の論法を引き合いにした。「戦場と性の問題は日本だけの問題ではない。他国もだ」という橋下氏の言い分はまさにそれであり、そういう論法は国際社会では評価されないというのだ。

ラテン語ですから、古代ローマ人も、こういうことを言っていたのか。子供ってどこの国でも似たようなもの、なのか、人間は昔からそうなのか。

しかし、知恵袋では、橋下氏のこの発言に誘発されて、そうだそうだ、アメリカ軍はいつ、どこで、こんなことをやった、あんなことをやった、韓国軍もこんなことをやった云々、という発言が相次ぎましたね。

「○○ちゃんだってやってる」というのは、自己弁護にもなりません。仮に国際社会が、過去の日本の歴史について、具体的には従軍慰安婦問題で、誤解していることがあれば、その誤解を解くべく、反論すればいいだけです。

<あたかも日本だけに特有の問題であったかのように日本だけを非難し>

これは本当でしょうかね。小生は、そんなことはないと思うのです。というのは、国民は、自国のこと以外は、すなわち、他国のことはどの国であれ、非難するものだ、と思うからです。何も日本だけが非難されている、ということはないでしょう。

<日本以外の国々の兵士による女性の尊厳の蹂躙について口を閉ざすのは…女性の人権を尊重する世界をめざすために世界が直視しなければならない過去の過ちを葬り去ることになります。>

そんなことはありません。日本が、日本自身についてきちんと反省すれば、「世界が直視しなければならない過去の過ちを葬り去ること」にはなりません。すくなくとも、その部分だけは。

なにも、他人が反省しなければ、自分も反省しなくていい、ということでもなし。自ら率先して反省すればいいのです。

さて、少し飛ばして

誤解しないで頂きたいのは、旧日本兵の慰安婦問題を相対化しようとか、ましてや正当化しようという意図は毛頭ありません。

うーん、そうは見えないんですがね。まさに相対化しているように見える。それに、<従軍慰安婦は、当時は必要だった>というのは過去の行為の正当化じゃないですか。

過去、そして現在の兵士による女性の尊厳の蹂躙について、良識ある諸国民の中から声が挙がることを期待するものでありますが、日本人が声を挙げてはいけない理由はないと思います。日本人は、旧日本兵が慰安婦を利用したことを直視し、真摯に反省、謝罪すべき立場にあるがゆえに、今日も根絶されていない兵士による女性の尊厳の蹂躙の問題に立ち向かう責務があり、同じ問題を抱える諸国民と共により良い未来に向かわなければなりません。

要するに、おれたちだって、人のことを文句言う権利があるだろ、ということか。

21世紀の今日、女性の尊厳と人権は、世界各国が共有する普遍的価値の一つとして、確固たる位置を得るに至っています。これは、人類が達成した大きな進歩であります。しかし、現実の世界において、兵士による女性の尊厳の蹂躙が根絶されたわけではありません。私は、未来に向けて、女性の人権を尊重する世界をめざしていきたい。しかし、未来を語るには、過去そして現在を直視しなければなりません。日本を含む世界各国は、過去の戦地において自国兵士が行った女性に対する人権蹂躙行為を直視し、世界の諸国と諸国民が共に手を携え、二度と同じ過ちを繰り返さぬよう決意するとともに、今日の世界各地の紛争地域において危機に瀕(ひん)する女性の尊厳を守るために取り組み、未来に向けて女性の人権が尊重される世界を作っていくべきだと考えます。

おお、素晴らしい!なんと立派なお考えでしょう。橋下様が、今後、このお言葉を実践なさることを切に望みます。

というのは皮肉。橋下はそんなこと本気で考えていないでしょうね。そのあたりが腹立たしいというか、やりきれないというか。

橋下は、なんだかんだ偉そうなこと言っていますが、しょせんは「○○ちゃんだって…」と言いたいだけじゃないでしょうか。

このあと、米国向け、韓国向けの内容の発言がありますが、こちらのほうはパス。沖縄の米軍の問題とか、日韓関係の改善とか言っているが、これも本気ではないでしょう。従軍慰安婦問題をめぐる発言は、橋下のウケ狙いの国内向けの発言


従軍慰安婦の実態に関する小生の見解については、こちらをご参照。


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