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公募の民間人校長、3か月で辞任

大阪市が公募した民間出身の校長が3か月で辞任、というお話。

給料最低・小規模校…民間人校長、謝罪なき退職
(読売新聞 6月26日(水)7時51分配信)

大阪市立小中学校で今年度から導入された校長の全国公募に応募し、4月に民間人校長として就任した市立南港緑小学校(住之江区)の千葉貴樹校長(38)が25日、「私が力を発揮できる場所とは違う」と述べ、同日付で退職した。

 同市の民間人校長は今春、11人が就任したが、退職は初めて。校長公募は橋下徹市長が掲げた教育改革の目玉だっただけに、3か月足らずでの退職は波紋を広げそうだ。

ごくごく一般論として、会社の常識は、世間の非常識、という言葉があります。それと同じで、学校の常識は、世間の非常識というようなことがあるかも。世間の常識で、学校の非常識をただす、というのは、やってもいいこと、と小生は考えております。

しかし、外部から任用された校長は、敵中に降下した落下傘部隊みたいなもの。周りは敵ばかり、みたいなもの。周到な準備と、バックアップがなければ、とても続けられないでしょう。尾道市の民間出身校長が、自殺した、なんて事件もありましたね。

本件はどうでしょうか。元校長は、どういっているか。

「経験を生かし、英語教育に力を入れたいとアピールしたが、今の学校の課題は基礎学力の向上だった。英語教育に力を注げる環境ではなかった」と説明した。

また、採用過程で市教委側と意見交換する機会が少なかったことに不満を述べ、「若いからといって、各学年1学級しかない小規模校に配属され、給料も経歴に関係なく最低級。年功序列だ」と批判。

3か月でやめた、ということについては、世論はおおむね否定的ですが、この人は民間の証券会社に勤めていたというなら、傷の浅いうちに損切り、と彼が考えても当然、という説もあり。小生も、この程度の「覚悟」ならば、あと何年やっても同じ。さっさとやめたほうが、教職員、児童、保護者のため、とは思う。

しかし、「今の学校の課題は基礎学力の向上だった。」これではダメです、こんなことも知らないようでは。小学校の英語教育なんて、おまけみたいなもの。

いまごろ処遇に不満をいう、というのもバカじゃないか。採用前に条件を詰めるべき。数字でわかる話。

橋下は何と言っているか。

橋下市長の退職する民間人校長評「自分第一の人」「もっと覚悟をもって公の世界へ」
(msn産経ニュースwest 2013.6.26 11:55)

退職した校長については、

「子供の将来にかかわる教育の世界に身を投じる際は、覚悟を持ってほしい」
「(希望先とは違う)学校に行かされる可能性があるなら、あらかじめ調べておくべきだ。本人の調査不足」

市教委については、

「(千葉氏は)自分を第一に考えるという、公の世界とは異なる考えの方であり、教育委員会は面接の段階で考え方を確認できたのではないか」

ごもっともです。元校長も言っています。

採用過程で市教委側と意見交換する機会が少なかった

これは本当でしょう。ちゃんと話をしていれば、本人が何をやりたいのか、市教委が何を求めているのか、本人がどういう処遇を求めていて、それに対してどういう処遇になるのか、それぐらいのことはわかるはず。

いったい、どういう選考プロセスを経て、民間公市長採用に至ったのか。

橋下市長“目玉改革”に暗雲? 民間公募校長3カ月で退職 退職理由「言えない」
(msn産経ニュース 2013.6.25 15:09)

校長公募は昨年7月に成立した市立学校活性化条例に基づき実施。全国から1290人が応募し、民間企業などから11人、教頭など市教委内部から52人が合格した。

うーん、選りすぐりの11人であることは、間違いなさそうですな。一体何を基準に選りすぐったのか?わかりませんね。

一体何のために公募したのか。その狙いはなんだったのか。いいだしっぺの橋下はどう考え、市教委にどう伝えたのか。

市立学校の教育についての、校長と市教委の権限(役割分担)はどうなっているのか、小生にはよくわかりません。一般的には、教育の政治的中立を確保するという意味合いで、市長は市教委のやることに口を出さないのではないでしょうか。口を出してもいいのかもしれませんが、出すなら出す以上、市長は市教委ときちんとコミュニケーションをとるべきではないのか。

校長を公募すればいい、とか、民間から登用すればすべて解決、というようなことはないでしょう。それなりのリスクがあることは、冒頭にも述べたとおり。橋下は、公募・民間人登用の狙いはなにか、その狙いを実現するためにはどういう手段が必要か、こういうことをきっちり詰めたうえで、市教委に指示する、ないしは依頼するべきであった、と思います。

おそらく、橋下は、具体的なアイデアなしに事前の準備も、フォローもしなかったのでしょう。市教委ともきちんと話をしていないのでしょう。市教委も、橋下の「上から」の指示、ないしは依頼に、おざなりに対応したのではないか。

この件は市長、市教委、校長、3者3様に問題がある。

迷惑するのは、教職員と児童、保護者。


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