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「民間出身校長」の不祥事続出

橋下のイニシアティヴで民間から公募した市立小学校の校長が、3か月で退職した、という事件については、すでにこのホームページで取り上げました。(「公募の民間人校長、3か月で辞任」)

さらに続いて、「民間出身校長」をめぐってトラブルが起こっているというか、「民間出身校長」が続けてトラブルを起こしました。いや、これからも起きるかもしれませんので、起こしています、の進行形のほうがいいかもしれない。

まずはセクハラ疑惑。

会合で児童保護者の体触る…大阪市・民間人校長がセクハラ、懲戒処分へ 校長「いいコミュニケーションとれていると思ったが…」
2013.8.28 10:53 msn産経ニュースwest

大阪市教委が今年度から導入した校長公募に合格し、4月に市立小に着任した民間出身の男性校長(59)について、市教委が「児童の母親の体を触るなどした」として調査していることが28日、分かった。市教委は校長の行為がセクシャルハラスメントにあたると認定すれば、懲戒処分する方針。

そして、

民間校長偽アンケート、教委実施装い自身の評価
YOMIURI ONLINE(2013年9月13日14時16分 読売新聞)

全国公募で大阪市西淀川区の市立小学校長に今春就任した民間出身の男性校長(50)が今年6月、「民間出身校長の採用の参考にする」と偽り、校長としての自身の評価などを保護者らに尋ねるアンケートを勝手に行っていたことが分かった。

そしてさらに、

<大阪市>民間出身校長の不祥事、新たに3人 セクハラなど
毎日新聞 9月20日(金)7時30分配信

 市教委や学校関係者によると、西成区の中学校長(59)は今年4〜5月に個人面談した6人の女性教職員に、「結婚せえへんの?」「なんで子供作らへんのか」などと質問。教職員の指摘を受け、校長は6月の職員会議で謝罪した。

 生野区の中学校長(37)は地域との連絡を巡って教頭と口論になり、「間違っていたら謝罪すべきだ」と問い詰め、教頭は土下座して謝った。教頭は「パワハラまがいだった」と市教委に話している。6月には修学旅行で川下りをした際、ふざけて生徒を川に落とした。生徒にけがはなかった。

 一方、鶴見区の小学校長(57)は出張や休暇の手続きを取らずに計3回、職場を離脱した。市外に長時間出かけたこともあった。

というわけで、11人採用した民間出身校長のうち、半数以上の6人がトラブルを起こしている、ということになります。あまり矢継ぎ早に起こるので、なんだか混乱してしまいます。というわけで、表にしてみましょう。

誰が何をした
1住之江区の小学校長(38)3か月で退職
2?の小学校長(59)セクハラ「児童の母親の体を触るなどした」
3西淀川区の小学校長(50)市教委に無断で(市教委実施と装って)アンケートを実施。
4西成区の中学校長(59)セクハラ。6人の女性教職員に、「結婚せえへんの?」「なんで子供作らへんのか」などと質問。
5生野区の中学校長(37)パワハラ。教頭と口論し、教頭を土下座させた。
6鶴見区の小学校長(57)出張や休暇の手続きを取らずに計3回、職場を離脱。市外に長時間出かけたこともあった。

やれやれ、元民間人の小生としては、民間出身だから悪いのではない、橋下が集めた民間人だから悪いのだ、と言いたくなります(笑)。

元民間人として、小生が多少同情できるのは、6のケースでしょうか。民間の会社といっても様々でしょうが、企業の規模、業種、役職などによっては、勤務管理が緩やかなところもありそうです。

3のケースは、非常識ではあるが、仕事上の勇み足みたいな感じなので、ちょっと情状酌量の余地ありか?ただ、ウソをついてはいけない、というのは、社会人の常識ですからね。

昔だったら、4のケースはセクハラにはならなかったなあ、ということで、ちょっぴり同情。

2と5のケースは、同情できません。

こうやって見て来ると、問題が起きる前に3か月で辞職した校長は正しかったのかも、とも思いますね。

念のため、民間人でない方々に申し上げておきますが、セクハラ・パワハラは、民間企業でも許されません。ただし、中小企業などでは、セクハラ、パワハラ防止の体制が出来上がっていない、企業内教育が不徹底というところもあるかもしれません。その点、公務員、教員はきちんとセクハラ・パワハラに関する研修などを実施していると思われます。

とはいえ、体制が整備されているからと言って、セクハラ・パワハラが起きない、というわけではなく、民間企業でも、お役所でも、あるいは学校でも、起きているでしょう。

一例をあげれば、大阪市役所ですね。橋下の公務員イジメは、パワハラです。

2のケースが最も重大(処分が重い)なので、フォローしてみましょう。

<民間校長>セクハラで処分 研修後に現場復帰へ 大阪市
毎日新聞 9月10日(火)21時36分配信

市教委は11日付で校長を現場から外し、研修後に再び校長として現場復帰させる方針。

なんとなく甘い処分と感じますが。解雇でもいいのでは?

市教委は校長の記憶が曖昧なことや過去の事例を考慮し、より軽い減給が妥当と判断した

まあ、そういう判断もあるでしょう。しかし、

被害を受けた母親らは「(この校長は)学校にはいてほしくない」と話しているという。

こうなると、校長の仕事なんかできないのではないか?なぜ、退職させない?

市教委は民間出身の校長を3年間の任期付き校長として採用しているため、降格や職種の変更はできない。

なるほど、採用条件に問題があったのですね。こういう「事件」を想定して、採用条件を詰めておくべきでした。

さて、橋下先生は何と言っておられるか。

「公募制度自体は悪くない」セクハラ校長問題で橋下・大阪市長
msn産経ニュース 2013.9.10 21:41

 橋下徹大阪市長は10日、民間出身の公募校長が保護者に対するセクハラ行為で懲戒処分された問題に関し「採用の問題で、制度自体が悪いのではない」と述べ、公募制を続ける考えを示した。市役所で記者団に語った。
「制度」には採用方法、採用条件なども含まれるのではないか?そこまで含めて「制度」と呼べるのではないか。
 採用時の規定でほかの職務に就けないため、研修後に校長として復帰させることについては「教育委員会の判断だ」と強調。規定を改めるかどうかも「ほかに仕事があるのかどうかだ」と明言しなかった。

人事権は教育委員会にありますからね。しかしこんなことも言っている。

橋下氏、セクハラ校長に「1回チャンス与える」
YOMIURI ONLINE (2013年9月13日09時08分 読売新聞)

大阪市立小学校の民間出身の男性校長が保護者らへのセクハラ行為で更迭された問題を巡り、橋下徹大阪市長は12日の記者会見で、男性校長が研修後に学校現場への復帰を目指すことについて、「社会人としてあるまじきことだが、ワンチャンスを与えてもいい失敗だ」と理解を求めた。

 橋下市長はこの日、男性校長に対する減給6か月の懲戒処分について、「甘くない。6か月の減給はかなりのものだ」と厳しく対応したことを強調。「校長といっても神様じゃない。スーパーマン校長は求めていないし、外部の視点を教育行政に持ち込むことに意義はあると思っている。1回チャンスを与え、研修しても出直しが不可能だったら辞めてもらう」と述べた。

「甘くない。6か月の減給はかなりのものだ」というのはともかく、「1回チャンスを与え、研修しても出直しが不可能だったら辞めてもらう」こういう校長を歓迎する保護者や教員がいるかどうか、こういう校長が、校内を仕切れるのか、対外的に学校を代表出来うるのか、ということが問題でしょう。実質的には、もうチャンスはない、とみるべき。

「校長といっても神様じゃない。スーパーマン校長は求めていないし、」

いや、スーパーマンを求めているのではなく普通の校長を求めているのですが。

セクハラ公募校長「不適格なら退場」 橋下市長、分限免職の可能性に言及
2013.9.20 13:08 msn産経ニュース

大阪市の公募で採用された民間出身の校長や区長による不祥事が相次いでいる問題で、橋下徹市長は20日、保護者らへのセクハラ行為で市教育センター付に更迭された市立小の前校長の男性について「不適格なら分限対象。指導研修で適格性を見極め、校長として退場してもらうのか決める」と述べ、分限免職処分の可能性に言及した。

おっと、そんなこと言っていいんですか。校長の人事権は教育委員会にありますよ。

☆  ☆  ☆

いろいろ突っ込みどころが多すぎて困りますが、橋下の一連の発言のなかで、どこまでが市長の責任で、どこまでが教育委員会の責任か、というのがあいまいなのが気になります。

詳しいことはわかりませんが、校長の人事権は市長にはなく、教育委員会にあるでしょう。校長を選んだのは、教育委員会であり、校長の処分についても、教育委員会の役割でしょう。おそらく制度的には、市長には何の権限も責任もない。そういうひとが、あたかも自分が何かできるような顔をして云々する、というのが危険なような気がします。事実、橋下は教育委員会には影響力を行使することができるのでしょう。しかし、最後には教育委員会の責任、と言って逃げることが出来る。

さて、この民間公募制度(ここでは、単に民間から公募するということのみを制度といっているわけではありません)の欠陥はどこにあったのでしょうか。

こういう問題を起こす校長を採用してしまったこと。採用方法、選考方法に問題がったのでしょう。

教員から昇格して校長になるのだったら、永年教員として勤めている間に、校長不適格者は、自然淘汰されてしまうでしょう。長い目で選考がなされているわけです。ところが、公募校長ではそれがない。

採用後の研修にも、問題があったかもしれません。前に挙げた6つのケースのうち、6のケースは、服務規律を徹底しておけばよかっただけのことかもしれませんし、4のセクハラ問題は、今は、こういうことでもセクハラと認定されますよ、警告しておけばよかったのかもしれません。

次は、雇用契約という観点からは、問題を起こした校長を免職にもできず、配置転換もできないこと。これこれの場合には、免職という条件を付けて採用するべきだった。採用条件に問題があったということですね。

いずれにせよ、校長の採用に関することは、教育委員会の役割です。この民間出身校長をめぐる不祥事の責任は、きちんとした「校長公募制度」を作らなかった教育委員会にあるでしょう。厳密に言うと、市長には責任はない。

橋下の責任は、民間公募制度を導入すればすべて問題解決のようなことを言って、強引かつ性急にすすめたことでしょう。大阪市教育委員会は、橋下に乗せられることなく、慎重に制度設計をするべきでした。教育委員会は、橋下の介入を断固拒否すべきだったのだと思います。

橋下批判を目的としている小生としては、全面的に橋下が悪い、といいたいところですが、それは、問題の本質が明らかにならないと思います。ゆえに、あえて、教育委員会の責任を問いたい。

民間の目で学校を見直す、というのはよいことだと思うが、民間出身校長がその効果を発揮するには、周到な準備が必要だ、と述べました。また、民間校長も、教育委員会も、市長にも問題あり、と言いました。

今回も全く同じことを言いたいと思います。

(「橋下徹時事評論集」-おわり)


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