トップページへ・
「橋下徹批判」のトップへ
「大阪都構想について」のトップへ・
前のページへ
大阪都構想反対派の人々の中には、大阪都構想は詐欺である、と言う人もいました。たとえばこのようなもの。
これぞ戦後最大の詐欺である 適菜収(作家、哲学者)+本誌取材班
――特集大阪都構想の大嘘
新潮45 2015年5月号掲載
ここでは、大阪都構想の内容と言うよりは橋下徹の手法に焦点をあてています。そして、橋下徹の手法にはウソや詐欺的なものはたくさんあります。
小生は橋下がこういう詐欺まがいの手口を使うことを知っていましたが、大阪都構想批判の材料には使いませんでした。小生は、アンチ橋下ではありますが、橋下とは切り離して、客観的に大阪都構想自体を評価したい、ということです。大阪をよくしたいと真面目に考え、そのうえで大阪都構想を支持している人々に対して詐欺呼ばわりは失礼だと思った、ということもありました。
もっとも、上記のようなきれいごと的な意味合いだけではなく、大阪都構想の賛否を争う上でも、メリットはないかデメリットがある、と言う計算もあったのですが。
橋下の支持者は、橋下のそういう面を承知で橋下を支持しているのであり、橋下がウソつきである、と言っても聞く耳を持ちません。だから、橋下の手法について云々と言っても意味がない。それに、橋下の支持者でない人が、橋下への個人攻撃への反感から、大阪都構想支持の思いを強くする可能性があると思ったからです。
というわけで小生は、大阪都構想は「わからない」といい、橋下と大阪維新の会の言う大阪都構想はあやしい、とまでは言いましたが、ウソであるとか詐欺であるとまでは言いませんでした。
そして、今でも、大阪都構想はやっぱりよくわからないというのが正直なところでもあります
というのは、大阪都構想が実現すれば大阪の諸問題はすべて解決、と言うことはないにしても、行政機構改革としての大阪都構想は、なにがしかの効果はあるかもしれない、と思います。小生には行政機構の良しあしを評価する能力はありません。学者や評論家が延々と議論するぐらいの問題でしょう。
また、大阪市の財政問題に関しては、小生としてはこれ以上突っ込んで調査できません。
そもそも詐欺かどうかというのは、なかなかわからないものです。投資話なら配当金がはいってこないとか、オレオレ詐欺なら本当の本人と連絡をとるとか、決定的な事実が明らかになるまでわからないのが普通です。 大阪都構想について言えば、それが実施されてはじめて結果が出るわけで、実施されていない時点では詐欺と断定するのは難しいでしょう。
しかし、小生がこの「大阪都構想について」で述べてきたところで、大阪都構想…厳密に言えば、橋下と大阪維新の会の提唱する大阪都構想…は、かなり怪しいものであることがお分かりになると思います。
怪しいとまではいかなくとも、この「大阪都構想について」の冒頭でも述べましたように、世論調査では70%の人が大阪都構想は「説明不足」…その意味合いは「わからない」と言うこと…と感じていました。
にもかかわらず、大阪都構想の住民投票で、ほとんど賛否半ばするような結果になったのか。言い換えれば大阪都構想はなぜウケたのか?
たしかに橋下と大阪維新の会は巧妙であったのかもしれませんが、大阪の人々のほうにも原因があったのではないか。そして、橋下と大阪維新の会はそれをうまく利用した、と言うことではないでしょうか。
以下、考えられる原因を列挙します。
そもそも、大阪の人々には、大阪の将来に対する不安があり、何とかしなければいけない、と言う思いがありました。
大阪経済の地盤沈下であり、大阪府・市の財政問題であり、市役所問題であったりする。 そういう問題があることは事実です。しかし、大阪維新の会のホームページでは、こういう諸問題を強調して不安をあおっているように見えます。
それに対して、これらの諸問題を一挙に解決できる策として、「大阪都構想」を提示したのです。
大阪の人々には大阪は東京に対して後れを取っている、というような一種のライバル意識、あるいは東京のように反映させたいという願望のようなものがある。東京と大阪で何が違うかというと、行政組織のあり方です。これもまぎれもない事実ではあります。しかし 実際には行政機構をマネしただけでは「都」になれるはずがないのに、「大阪都構想」と言う名前で、大阪も都になる、東京のようになれる、というイメージを抱かせたことが、大阪都構想の支持者を増やした原因でしょう。
民間では企業合併などで業務を効率化して、企業を再生させる、と言うような話は良くあります。
大阪都構想も、民間企業の統合のようなセンスで、統合すれば合理化になる、という錯覚があったのではないでしょうか。
しかし、ただ組織を統合したからといって、それが合理化に即つながるということはありません。
間接部門を統合して効率化する、生産性の悪い設備は廃棄して、生産性の良い設備を稼働させて稼働率を上げる、過剰設備・過剰人員を廃棄する、というような合理化策を実施して初めて合理化が出来る。
これは、民間企業でも、公共機関でも同じです。
合理化のためには何かを切り捨てなければなりませんが、何を切り捨てるかは、それで利益が増えるかどうか(コストを減らせるかどうか)、と言う明確な基準があり、基本的にはそれで割り切ります。
しかし、公共の仕事にはそういう明確な基準はない、というか、「利益」で割り切るわけにはいかないのが公共の仕事です。それゆえ、公共機関の統合は、民間の組織の統合とは別物である、といえましょう。そして、「合理化」は、公共機関の統合のほうが難しいのではないでしょうか。
大阪都構想は「東京の行政機構のマネ」の要素があると思いますが、同時に民間の企業合併のマネではないかと思います。
その根底には、民は効率的、官は非効率、官は民をまねるべきだ、という「常識」があるように思われます。
大阪都構想で2重行政を解消して、無駄を省いておカネが余る、余ったおカネで財政を再建し、インフラを整備する、そうすれば大阪の経済が活性化するので、税収が増える。そこで福祉も充実できる。ここまでが「2重行政の解消」の効果ですね。そのうえ、大阪市が解体されることで、市役所改革もできるし、既得権の打破もできる。
明確にこういったかどうかはさておき、まあ、こんなことを言っていました。大阪都構想が実現すれば、大阪の諸問題はすべて解決、損をするのは一部の既得権者だけ、と言う感じです。
もしこれが本当なら、とりわけ損をするのは一部の既得権者だけということであれば、ほとんどの人が賛成するでしょう。
橋下徹は敵を作ってやっつけるという手法を良く使いますが、ここでも「一部の既得権者」を敵に回すことによって、その他大勢の支持を得ようとしたのです。
一部の既得権者とは、主に公務員と政治家でしょう。すべてを政治のせいにして、その他の人々は責任を追及されません。
そして、一部の既得権者を敵に回すことによって、橋下は正義の味方になれるし、橋下の支持者も正義の味方の仲間になれます。
以上をまとめますと、大阪の人々には、諸問題が山積する大阪に対して危機感を抱いており、それに対して、諸問題を一挙に解決する手段として「大阪都構想」が提示された。それは、東京の行政機構のマネであり、民間の組織統合のマネであったが、大阪の人々に東京への対抗意識ないしはあこがれがあり、民は効率的と言う常識があったため、大阪の起死回生の策として支持されてしまった、ということでしょう。
こういうふうに見ると、大阪の一部の人々に大阪都構想がウケたのは当然だったのでしょう。
「Yahoo!知恵袋」で大阪都構想の賛否の議論があり、小生は「大阪都構想はわからない。大阪都構想をやってみてダメなら元に戻す、と言うことはできないからとりあえず反対に投票すべし。」という意見を述べました。
それに対して賛成派からは、「わからないのではなくて、わかろうとしないのだろう」と言われました。小生としては、いくら調べてもわからない、というか、調べると次々と疑問が出てきたのですが。
しかし、大阪都構想賛成派の人々には大阪都構想はわかりやすかったのかもしれません。
リンク大歓迎!
このWebサイトはリンクフリーです。