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「愚劣な官僚・幼稚な国民」より。
ついでに言えば今日の日本経済の低迷の原因はいろいろあるが、肝心の問題についての議論が一向にない。それは国の会計制度の問題です。ここでこまごま申す暇もないが、この日本には従来、国家としてのバランスシートが無いのです。そんな馬鹿なと思う人が多かろうが、実際にないものはない。せいぜい大福帳の域を出ない。
バランスシートと聞いて、ピンとくる人はそんなに多くはないのではないでしょうかね。ですから、そんな馬鹿なと思う人は少ないかも知りませんが、実際にあるものはあるのです。
石原センセなんどもこういう発言をしていますが、誰も教えてあげる人はいなかったのでしょうか。先日の衆議院予算委員会でも、「この国には健全なバランスシートがない。財務諸表がない。」などと発言してしまいました。まあ、国会における決算の審議に提出される正式の書類ではない、参考資料のような位置づけということではあるとは思いますが。
余計なことですが、「健全なバランスシート」という表現は、バランスシートがあって、それを見たところ財務状況がよいことがわかる、そういうバランスシートを、「健全バランスシート」というのであって、バランスシートが無いなら、「バランスシートが無い」というべき。
実は、石原慎太郎が、バランスシートが無い、などと思い込むのも、無理はないのです。石原慎太郎に、あなたの言うことは違う、という人もいない。それほど、国のバランスシートは重視されていない。
国の会計は、基本的には「大福帳」、おカネの出入りを記帳しているだけ。これは、国の会計が、予算-決算を中心に運営されているからです。
国の予算-決算などというと、難しい感じがしますが、実は、都道府県でも、市町村でも、町内会でも、大して変わりはない。
町内会では、期の初めに、会費がいくら入ってくるか見積もり、事業計画を立て、それにいくらかかるか、予算案を作ります。そして、事業計画と予算案を町内会の総会などで承認して、そのあとは事業を計画通りに進めて、予算どおりにおカネを支出する。
期末には、事業計画どおりに行われたか、おカネは予算通りに使われたかを、役員が報告します。つまり、予算-決算手続きによって、役員が自分勝手にお金を使っていないか、をチェックするということです。
そういう意味では、おカネの出入りさえ押さえておけばいいわけで、「大福帳」で構わないのです。
では、石原慎太郎はそれではいけない、バランスシートが必要、財務諸表が必要、と言っているのか、というと、収支だけでは、国の財産がどれだけあって、借金がどれだけあるのか、これが把握できない、ということなのです。
バランスシート(貸借対照表とも言います)は、一般にはなじみがないかと思いますが、簡単にいえば、資産と負債の表のようなもので、資産は財産と言い換え、負債は借金と言い換えてみれば、大体のイメージはつかめるでしょう。
いま、国は借金だらけで、これをどうするかが問題になっています。これは、国が借金をして、それを使ってしまったからです。何に使ったかはともかく、一応国のために、国民のために使ったことになっています。
借金をすれば、収入は増える、だから、支出はできる。しかし、借金はのこる。収入は増えればいい、というものではないですね。収支だけを見ていては、このあたりがわからないのです。
増えた借金が、通常の収入…国の場合でいえば、税収…で返せないような状態になったら、…現に日本国はそういう状態だ、と言えるでしょう…どうするか。個人や会社の場合と同様、国も、財産を売って、その収入で返せばいい。どの資産を売却してこういう場合にも、バランスシート(財産と借金の表のようなもの)が役立ちます。
そういうわけで、国もバランスシートを作ってみた、のですが、あまり知られていない。重視されていないのです。そのわけは、国の財産をおカネで評価するのが難しいということなのです。
国の財産、たとえば、国有林でも道路でもよろしい、学校や病院の土地建物でもよろしい、こういうものは簡単に売るわけにいかないですね。売れないものを、おカネで評価しても仕方ない、ということもあるし、実際値段をつけるのは、難しいでしょう。
要するに、バランスシートがあれば、問題はすべて解決、というわけではありません。
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