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収奪される先端技術(1)

アメリカの軍用機のコクピットはほとんど日本製で、ダッシュボードのセラミックや計器の中の液晶体は全て日本製。高級旅客機のそれも。彼らの覇権主義はあくまで日本の航空機に関する技術を自分の統治下に置き、我々はあくまで彼らのパーツメイカーの身分を脱し得ません。

「収奪される先端技術」の冒頭部分です。この節で石原は、日本の先端技術がアメリカの軍事技術に転用される一方で、アメリカは日本において航空機産業の発達を阻害し、航空機の開発・製造ができないようにしている、と主張しています。

その例として

「YS-11はアメリカの妨害で外国での販路を絶たれた」
「中曽根時代、三菱重工は次期支援戦闘機を独自に開発する計画を立てたが、その性能があまりに高度なもので当時は他のいかなる戦闘機もドッグファイト(空中戦)でかなうものは無く、アメリカ政府は強引にこの計画を潰し」た
「F-22に関しては、そのステルス(レーダーへの無反応)性を担保する塗料が日本製なのに、日本へは売らぬと言いだしている。しかも最初にアメリカが言い出した一機の値段はアメリカでの6倍近いものだったのに」

と言っています。

はてね。YS-11に関してはWikipediaでは、そういうことはなさそうで、他にもいろいろ売れない理由があったようですが。

いまどきのジェット戦闘機はドッグファイトをやるんですかね。機関砲を装備しているから、全くないとは言えないらしいが。空対空ミサイルで、勝負がつくのではないですか?>

実は、ゼロ戦とグラマンF4Fとの戦闘でも、速度性能、上昇性能、機動性能(特に低速時の格闘性能)で明白に劣っており、当初は、グラマンはゼロ戦にかなわなかったのですが、格闘戦を避けて一撃離脱方式をとってからは、運動性能の差は問題にならなくなったそうです。

新しい話で言えば、F-22については、「有視界戦闘(レーダーに頼らず、目視での戦闘)においても卓越した戦闘力を持つ。」ということだが、「高いステルス性とレーダー、更には早期警戒管制機や僚機とのデータリンクにより『ファーストルック・ファーストショット・ファーストキル(first look, first shot, first kill:先に見つけ、先に射ち、先に撃墜する)』を意図」している、とのこと。(Wikipedia)

詳しいことはわからないが、ステルス性、レーダーやミサイルの性能のようなものも、重要じゃないか。機体の運動性はそのうちの一つに過ぎないのでは?

それに、戦闘機だからといって、空対空の戦闘をやるだけではない。空対地とか空対艦の戦いを想定した能力も重要なのではないでしょうか?

F-22については、当初ロッキード社は日本やそのほかの国にも輸出したかったらしいが、そのステルス技術や電子機器類といった高度技術流出が懸念されたため、結局輸出しない、ということになったのは本当のようです。ただし、日本だけのことではありません。

塗料のことはわかりませんが、もしそれが本当にF-22に必要不可欠なもので、それが日本でしか生産できないものであれば、F-22を売ってくれなければ、塗料を売らないよ、という交渉も出来たはずですね。「ダッシュボードのセラミックや計器の中の液晶体」についても同じことが言えます。

それはさておき、航空機の製造(最終組立)はカネもかかるし、リスクも大です。これは、とりわけ軍用機についていえることです。いかに技術が優れていようとも、そう簡単にできることではないでしょう。

まあ要するに、石原は、いろいろある中の一つをとりあげで、大げさにいう、という癖があるようです。


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