小生は、当ホームページの「橋下はなぜウケるのか−世論調査の結果から」で、橋下の支持される理由は「政治的な理念・思想」「具体的な政策」ではなくて、「リーダーシップ、実行力」であり「何かやってくれそうな期待感」ということになる、と書きました。
しかし、前回紹介した「『大阪府民の政治参加・選挙に関する世論調査』報告書」の橋下の大阪府知事としての実績に関するアンケートでは、そうともいえないような結果が出ています。質問と結果は以下の通りです。
問14 あなたは、それぞれの分野について、橋下前知事時代の府政をどう評価しますか
A.大いに
評価するB.ある程度
評価するC.あまり
評価しないD.まったく
評価しないE.
わからないA+B.
評価するC+D.
評価しない(ア)経済・財政 27.5 44.3 11.6 3.9 12.4 71.8 15.5 (イ)福祉 9.1 36.8 24.4 5.5 24.3 45.9 29.9 (ウ)教育 21.8 37.0 18.0 8.0 15.2 58.8 26.0 (エ)地方自治 23.3 38.8 12.7 5.1 20.2 62.1 17.8
元の表をちょっと加工して、「A+B 評価する」「C+D 評価しない」の列を加えてみました。
問14は、なぜこの4つの分野に絞ったのか、なぜ「経済・財政」をひとくくりにしたのか、そして、政策の具体的内容が、わかりません。そのあたりが、小生としては不満なのですが、いずれにせよ、福祉政策以外はおおむね60%から70%の人に支持されています。
この結果だけを見れば、橋下の大阪府知事としての実績もそれなりに評価されている、と言えるのではないでしょうか。はたして、「具体的な政策」は、橋下の支持される理由といえるのかどうか。
というわけで、橋下の大阪府知事としての実績を、オーソドックスに評価してみたいと思います。つまり、橋下が何を言って、何を実現したか。言い換えれば、橋下の公約はどういうもので、実施した政策はどういうものであったか、そしてその効果はどうであったか。
もうすこし、具体的に見る必要があると思われますので、とりあえずWikipedia「橋下徹」を見ることにしましょう。(Wikipediaは、しばしば改訂されますので、該当部分を小生のホームページにコピーしておきます。)
まずは、公約をみてみましょう。知事選公約については、 「大阪府知事選出馬」「知事選挙公約」をご参照。
公約は、「4つのトライ」と「17の重点事業」から成ります。この2つがどのように対応しているか、表にまとめてみました。「トライ」に書かれている文章を一つ一つのことがらに分解し、それに対応する「事業」をその右に並べてみました。
4つのトライ | 17の重点事業 |
---|---|
1「子どもが笑う、大人も笑う大阪に」 | |
安心して子どもを産み育てられ、 | 1.「(仮称)出産・子育てアドバイザー制度」を創設 2.小児科・産科の救急受け入れを促進 3.妊婦一般健康診査の受診回数を拡大 4.乳幼児医療費助成を拡充 5.不妊治療費補助を拡充 6.駅前・駅中に保育施設の整備を促進 7.子どものいる若い夫婦への家賃補助制度を創設 |
公立小学校に緑があふれ、 | 9.大阪府内の公立小学校などの運動場を芝生化 |
食育教育の充実で子どもが伸びやかに育ち、 | |
10.大阪府内の全公立中学校に給食の導入を促進 | |
明るく豊かな学校生活が送れ、 | |
多様な府立高校が選べ、 | |
ボランティア団体・NPOに活気があり、 | 8.障がい者や高齢者への公共公益活動を支援 |
専門的な公立病院がある大阪に。 | |
2「人が集い、交わるにぎわいの大阪に」 | |
メリハリの利いた補助制度と | |
商業地域・市街地に人が集まる仕組みづくり。 | 12.大阪府内で冬季イルミネーション・イベントを実施 13.「石畳と淡い街灯」の街をつくる |
11.安全な地域づくりをめざして防犯カメラの設置を支援 | |
3「中小企業が活き活きし、商いの栄える大阪に」 | |
府庁全体が中小企業振興のサポーターとして働き、 | 14.中小企業活性化のため大規模コンベンションを開催 |
大企業の要望を取り入れられる。 | |
15.大阪の活力アップのため知事による積極的なセールスを展開 | |
大阪府立大学というシンクタンクがある大阪に。 | |
4「府民に見える府庁で、府民のために働く職員と、 主役の府民が育てる大阪に」 | |
むだな出費を抑え、 | 16.セーフティネットを除き大阪府が出資する法人を抜本的に改革 17.府立施設や府の事業で必要性のないものは民営化・売却を促進 |
道州制をめざした投資会社大阪府庁。 | |
住民への直接サービスは市町村にどんどん権限を委譲し、 府庁は、各市町村にまたがる事業や各市町村の調整、 また大阪府の方向性を決定する司令塔の役割に徹する組織を再編。 | |
現在の大阪府の事業は、効果が見えにくいプロジェクトや 単なるお金貸しの事業ばかり。 今後は、効果がはっきり見える事業にしか投資しない。 府議会からのチェック機能、情報公開の徹底。 | |
大阪の笑顔のために、国とたたかう、府職員の士気が満ちあふれる大阪に |
こうしてみると、4つのトライの文言に対応する重点事業がないものがあります。つまり、選挙の段階では、具体的な事業は考えられていなかったということです。
また、当初は、「トライ」の1「子どもが笑う、大人も笑う大阪に」に重点が置かれていて、17の重点事業のうち10がこれに対応しています。そのほかの「トライ」には、対応する「重点事業」が少ない。つまり、これだけ見れば、福祉に重点が置かれた公約であるような印象を受けます。
さらに、その10の重点施策のうち9つまでが、子育て、教育に関するものです。この当時、というより、いまでもそうなのですが、少子化による人口減少・高齢化が問題になっていたことを反映して、公約に掲げたのでしょうか。それとも、橋下自身7人の子持ちですので、一種の公私混同なのでしょうか(笑)。
次に、橋下は公約どおり政策を実行したかどうかを検証します。
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