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橋下と大阪維新の会は、２重行政の無駄を省くことによって、余ったおカネで財政を立て直し、さらにインフラ投資をすることによって経済を活性化させる。そうすると税収が増えるので、福祉にもおカネが回せる、と主張しています。
では、2重行政解消の効果額、すなわち2重行政の無駄を省くことによって生み出される財源はいくらになるのか。実は、これが良くわからないのです。
「大阪都」の節約効果、最大976億円 府市が試算
「年4000億円」目標に遠く及ばず
2013/8/9 22:42 日本経済新聞
目標とはいえ年4000億円と言う数字が976億円に減ってしまう、というのはどういうことか理解に苦しみます。何の根拠もなく、単なる願望的な数字だったのでしょうか。
それはまあいいとしましょう。問題はこの976億円の中に「２重行政の解消」以外の効果が含まれているということです。
この976億円の内訳をみてみましょう。
都構想とは別に取り組む市営地下鉄の民営化による効果約275億円や、市単独で実施している市民サービス削減などの効果237億円も含めたとしている。
これは、市単独でも可能な施策であり府市統合の効果とは言えません。
ということは明らかな統合効果は人件費の削減なのか。
市を中核市並みの権限を持つ区に再編した場合、将来的に職員を約4200〜1200人削減できると試算。人件費圧縮効果として約270億〜30億円を計上した。
(注）人件費に270億円〜30億円と幅があるのは、大阪市を特別区に分けるわけかた、いくつに分けるかによって、人件費に違いが出て来るからです。そして、それ以外の効果額には違いはありません。
この新聞記事では「最大270億円」の算定根拠については示されていませんが、とりあえず統合効果のように読めます。（注）
(注）このページを書いている時点ではわからなかったのですが、このなかには、大阪府・大阪市が統合を前提とせずに実施しつつある人員削減効果も含まれていて、純粋な大阪都構想の人件費削減効果は105億円と判明しました。しかし、とりあえず人件費削減は全部純粋な効果額とみなして話をすすめます。
そして、この府市統合以外の効果と人件費削減の効果を976億円から差し引くと残りは194億円。ではこの194億円は統合効果なのか、というとこれまた良くわからないのです。
詳しく見ていきましょう。
新聞記事のもとの資料は大阪府のホームページ「第６回大阪府・大阪市特別区設置協議会について」にある資料４ 「大阪における大都市制度の制度設計（パッケージ案）【試案３（５区 北区・中央区分離）】」のなかの「8.府市再編による効果（試算）」
前にも簡単に触れましたが、大阪都構想では大阪市をいくつかの特別区に分けるということになりますが、その区割案ごとに試案が4つ示されています。しかし、区割りによって変わってくるのは（２）人件費削減効果のところだけ、らしい。そして、そのなかで、人件費削減効果が一番大きいのが、【試案３（５区 北区・中央区分離）】。というわけで、この【試案３】を見ていきます。
この資料の「２．現時点で算定可能な再編効果額の試算（総括表）」を見ると、
（１）現在の改革の取り組みと（２）大都市制度の実現に分かれていて、（２）が人件費削減効果のようですね。（１）の706億円と（２）の170億円〜270億円を足すと、876億円〜976億円…これは、新聞記事の効果額最大976億円と一致する。
（１）のなかで金額が大きいのは��AB項目関連と��-1市政改革プラン関連の効果です。その他の項目は、金額が小さいので、とりあえず無視。そして、��-1の数字は237億円で、これも新聞記事の「市民サービス削減237億円」と一致する
では、「AB項目」のなかに、統合効果とそうでないものがあるとして、それはどうなのか。
突如AB項目と言うのが出てきてとまどいますが、AB項目とは、「A項目とB項目」のこと。そしてA項目とは「経営形態の見直し検討項目」B項目とは「類似・重複している行政サービス」のことらしい。
A項目「経営形態の見直し」というのは、たとえば「民営化」というようなことですから、業務を府市の行政から切り離す、ということ。であれば、府市再編とは関係ない、のかな。 たとえば、新聞記事に出ている「地下鉄の民営化」はA項目になっています。地下鉄は市営ですから、府には関係ない。それを民営化しても、府市統合効果2重行政解消、と言えないのは明らか。だが、ほかの項目についてはどうなのだろうか。中身を見ないとわからない。
B項目「類似・重複している行政サービス」の重複を解消すれば、府市再編による効果といえる、のか。
しかし、同じような業務をやっているからと言って、本当に同じと言えるかどうかは、中身を良く見ないとわからない。また仮に同じ業務をやっているとしても、無駄があるとは限らない。たとえば、府立病院と私立病院があって、全く同じサービスをおこなっているとしても、両方とも常にフル稼働であれば、無駄、とはいえない。だとすれば、何が重複していて、何が無駄なのか、それぞれの業務内容、提供しているサービスの内容を見ないと、わからない。
正直言って、このあたりから、小生はわからなくなってきます。
しかし、まあ、とりあえずB項目は2重行政解消の効果で、A項目はそうでない、としてみましょう。
では、A項目、B項目の「効果額」はそれぞれいくらか。
この資料の「３ AB項目関連の効果見込額（項目別）」。なぜかA項目・B項目別に集計していないので、自分でやるしかない。で、やってみました。（こちら）。
この表の一番下をご覧ください。結果はA項目効果額488億円、B項目効果額11億円。ということは、2重行政解消の効果額はこのB項目での効果額11億円プラス人件費削減額270〜30億円を足した数字すなわち281億円〜41億円ということになるのか？
効果額については、いろいろな試算があるようです。たとえば、共産党は9億円と言っています。
大阪市議会特別委員会 都構想効果わずか９億円余
山中市議が試算“市民騙す暴走許せぬ”
ただし、ここには9億円の根拠が示されていません。
自民党は1億円と言っていたと思います。これは、どうやら、AB項目関連も全部統合効果とみなさず「��AB項目以外の府市連携の取り組み」の1憶円のみを統合効果と認めた、と言うことらしい。
もう一つ。
橋下市長の大阪都構想を、きちんと考えてみる
大阪都構想財政シミュレーション（その２）
関係ない効果額を分けてみた
この試算では、節約効果額から府市統合コストを差し引いたものを効果額といっているので、小生の試算の金額と単純に比べることはできません。そして、年度別に「効果額」がどうなっていくかを試算しています。
このひとの結論は、
最終の平成４５年度時点の再編コストを差し引いた効果額３０７億円の内訳は、大阪都構想関係８５億円、無関係２２５億円。
ですが、正直言って、この試算は精緻すぎて、小生は「ついていけない」（笑）。
要するに、試算した人が、976億円の内訳のどれを統合効果といい、どれを統合効果でないというかによって、数字が違ってくる、ということのようです。
そして、大阪都構想住民投票実施決定後の平成27（2015）年4月、大阪市が大阪都構想説明用のパンフレット「特別区設置協定書について（説明パンフレット）」(1/3)・(2/3)・(3/3)を作成・配布しました。
ここで橋下市長は「…行政改革を進めれば、この600億円（大阪都構想の初期費用のことです）を差し引いても、17年間で2700億円にのぼるお金を生み出すことができるのです。」（パンフレット3ページ目）と言っています。初期費用を差し引く前の効果額は3300億円。これは年あたり194億円。
府市の試算した効果額は年間976億円だったはずです。それが194億円、約5分の1になってしまいました。一体どういうことなのか。
これをきっちり説明すると、大変ややこしくなってしまいますので、おおまかに説明しましょう（御用とお急ぎでない方は、次章 をご参照）。
まずは、2つの「効果額」は意味が違います。「976億円」はさまざまな「節約ネタ」、これを実施すればいくら支出を削減できる、と言う施策の効果の合計。「17年間で2700億円」はある一定期間の支出削減額の累計。
そして、この効果額の累計を算出する過程で、大阪都構想に直接関係のない効果額のネタを外さざるを得なかった、ということなのです。詳細は「976億円と17年間で2,700億円」をご参照ください。
さて、いろいろな「効果額」がありますが、「17年間で2,700億円」は橋下市長公認の効果額。これを使って議論を進めることに、橋下市長も大阪維新の会も異議はないでしょう。
17年間で2700億円は1年あたり159億円になります。
そして、大阪府の予算規模は約3兆円、大阪市のそれは1.7兆円です（平成25年度一般会計）。ということは、「効果額」は府市合算の予算規模4.7兆円の0.34％ということになります。
大阪都構想のキモは「2重行政の解消」です。２重行政の無駄を省くことによって、余ったおカネで財政を立て直し、さらにインフラ投資をすることによって経済を活性化させる。そうすると税収が増えるので、福祉にもおカネが回せる、と言うことでしたね。しかし、たった0.34％では、インフラ投資はおろか、財政再建も出来ないでしょう。
そして、前記の年間976億円の内訳に「市単独で実施している市民サービス削減などの効果」がありますが、この金額が237億円。大阪都構想を実現しないでも、これだけの金額が節約できるのです。
「237億円」を「17年間で2,700億円」と同じように効果額累で計表現すれば、おそらくほとんどの「市民サービス削減など」の施策は大阪都構想実現前に実施されてしまうでしょうから、
237億円×17年間＝4,029億円
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