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NHK「かぶん」ブログ 2012年01月18日 (水)
全文掲載:芥川賞受賞会見・田中慎弥さん
少年の性と暴力の衝動を描いた「共喰い」で第146回芥川賞の受賞が決まった田中慎弥さん(39)。 昨日の受賞会見では「もらってやる」発言が物議を醸しています。どのような文脈での発言なのか、受賞会見を全文掲載します。
司会)田中さんに今の気持ちから一言
確かシャーリーマクレーンだったと思いますが、アカデミー賞の候補に何度もなって、最後にもらったときに「私がもらって当然だと思う」って言ったそうですが、まあだいたいそういう感じです。
4回も落っことされた後ですから、ここらで、断ってやるのが礼儀だと思いますが、私は礼儀を知らないので。 もし断ったと聞いて、気の小さい選考委員が倒れたりなんかしたら都政が混乱しますんで。都知事閣下と東京都民各位のためにもらっといてやる。あの、とっとと終わりましょう。
(以下略)
これは、石原慎太郎の1月6日の発言を受けての発言でしょう。芥川賞候補作を「バカみたいな作品ばっかり」と、けなしました。
田中氏は、小説を書くことに人生を賭けているような人ですからね。この人40歳にならんとしているらしい。芥川賞を4回も逃している。これまで、アルバイトもせずにモノをかきつづけていたらしい。母親に食わせてもらっていた、とか。子供が、胆が座っているのにも感心するが、母親も子供を信頼していたのか?
まあ、とにかく、こんなこと言われたら、田中さんが怒るのは当たり前。
しかも言った、石原慎太郎は、学生時代にちょろっとバカみたいな小説(注)を書いて、それが芥川賞をもらっちゃった。別に作家になりたいと思ったわけでもないのに、小説家になっちゃった人間ですからね。
それにしても、「もらっといてやる」というのは、唐突ですね。「もし断って…都知事閣下と東京都民各位のため」は枕ことばでしょう。要する「もらっといてやる」を引き出すための意味の無いことば。要するに田中氏は「もらっといてやる」と言いたい。石原の「くれてやる」という態度に対する反応ですかね。いや、本当に「くれてやる」とか「くれてやろう」と発言したのかもしれない。
田中さん、本当に、賞を断ってもいい、と思ったのかもしれない。でも賞はほしかったんでしょうね。結局もらってますから。断りたくても断れない、その辺の屈折した心理が、この記者会見によく表れていると思います。また、こんな場で、こんなことは言いたくない、と思ってもいる。小説家は小説が全てだから、記者会見は本来不要。また、こういう場では、普通にありがとう、とか、嬉しいとか素直に言いたい。しかし、言うべきこと(石原批判)は言わねばならない。で「とっとと終わりましょう。」という言葉が出てきたんじゃないか。
田中氏も、賞をもらうんだったら「もらってやる」なんて言わないで、素直に、「私は4回も賞を逃しております。小生はその程度の作家であります。今回は私のバカみたいな作品に賞をくださる、ということ、まあ、ご辞退申し上げるのが礼儀でしょう。
しかし、小説は雑誌に載せて下さる、賞金もくださるし、これで有名になれて仕事も増えるでしょうから、ありがたく頂戴します。」ぐらい言っておけばいいのに。
ついでに、「石原先生も、芥川賞を受賞されました。私と同様、バカみたいな作品を書かれたんでしょう。その後石原先生は、たくさんの小説を書き、駄作家としての地位を確立されました。私も、今後精進し、せいぜい普通の小説家になりたいと思います。」なんていうのはどうか。もっとも、こういうセリフはあとから思いつくんですよね。
さて、石原氏はその後、この田中さんの発言について、テレビでインタビューに答えて、「いいじゃない、むしろ皮肉っぽくて・・。俺はむしろ彼の作品を評価したんだけどね。もう一つのは全然だめだけどね」って言ったらしい。
これも見当違いのコメントです。田中氏は、個々の小説、あるいは誰の小説を評価する、しない、という事で怒ったのではなく、小説家をバカ呼ばわりしたことに対して怒ったのです。小説家を代表して怒ったと言ってもいい。そのあたり、石原は全く理解していないですね。
(注)石原の「太陽の季節」が芥川賞を受賞するについては、選考委員の中で意見が割れたそうです(Wikipediaご参照)。個人的にはバカな小説だと思います。
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