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大阪都構想の「協定書」(正式名称「特別区設置協定書」…ご覧になりたい方はこちら) で大阪府・大阪市特別区設置協議会が作成したもの。大阪市を解体してその権限と財源、資産と負債を大阪府と5つの区にどのように配分するかということを府と市で取り決めたものです。
小生は大阪都構想を批判しようと思いました。つまり、この協定書のとおりにやってうまく行くのかどうかを検証しよう、ということですが、それは、協定書の内容を詳細に検討してみなければわからないでしょう。
ということで一応読みました。読んだ、というか、目を通した、と言うほうが正しいか。さっぱりわかりませんでした。具体的イメージがわかない、と言う感じでしょうか。
橋下市長は、協定書の中身を「いちいち市民が知る必要ないんですよ」と言うようなことを言ったみたいです。まあ、それぐらいわかりにくいのでしょう。しかし、わからないのでは批判は出来ない。
これはマズイな、と思っていたところ、大阪都構想住民投票を前にして、大阪市が「特別区設置協定書について（説明用パンフレット）」 (表紙-P7)・ (P8-13)・ (P14-19)・ (P20-25)・ (P26-39) を作成・公表しました。すこしばかりわかりやすくなったようです。というわけで、小生の分かる範囲内で、しかも小生が興味がある問題についてざっと目を通してみました。
以下、順に見ていきます。皆さんも、お手元にパンフレットを置いてご覧になりながら、当ホームページをお読みになるとわかりやすいかと思います。
それには以下のような手段があります。
�）椒曄璽爛據璽犬箸亙魅Εぅ鵐疋Δ如▲僖鵐侫譽奪箸鬚澆襦�
��pdfファイルをダウンロードして、インターネットとは別ウインドウで開く。
��パンフレットを印刷する。
�ぢ膾緝棔β膾綮圓縫僖鵐侫譽奪箸�ほしい、送ってくれ、と頼む。
普通は�，��△任靴腓Δ�、もし真面目に電卓片手に読もうという方がおられるなら、��か�い�いいかもしれません。計算結果を紙に書き込んでいけるからです。
また、もしかしたらこのパンフレットは将来古書として値段が上がる、と思われる方は、�い�いいでしょう。だだし、書き込みをすると古書としての価値は下がります。
冗談はさておき。
では1ページ目から。
特別区設置協定書について
（1-2ページ）
橋下市長殿の大阪都構想応援演説。この手のパンフレットに冒頭に市長あいさつぐらいはあってもいいですが、パンフレットの本来の目的が大阪都構想の中身を中立的に説明するということであり、内容的には橋下市長の大阪都構想への思い入れ、大阪都構想の応援演説みたいなものを、長々と2ページにわたって載せるとは…。橋下センセイお得意のルール違反では無いにしてもマナー違反みたいなもの、と思いませんか。
小生が知りたいのは大阪都構想の中身であって、橋下がどう思っているかではない。
小生がこの発言の中で興味を持ったのは、大阪都構想の効果額「17年間で2,700億円」の部分のみ。これについては別途、このホームページで取り上げました。
協定書のイメージ
(3-4ページ）
まさにイメージであり、説明ではない。こういうイメージは言葉での説明があってはじめて意味を持つ
もくじ
特別区とは、協定書とは、今後のスケジュール
(5-6ページ）
皆さんご存知のこととして省略。
協定書策定までの背景・経緯（7ページ)
ずいぶん簡単な経緯だなあ、法定協委員の入れ替えだとか、議会招集拒否だとか、橋下と公明党中央との取引の結果、大阪公明党が住民投票に賛成に態度を変える、なんてことは書かれていないなあ、とは思う。
このあたりの経緯では、先に述べた橋下の「ルール違反ではないにしてもマナー違反」連発だったので、余裕があれば、本ホームページできちんと取り上げたい。
協定書そのものの内容の説明は次の� 銑�ですね。その中で、� 銑ぁ�8-14ページ）は大阪に住んでいない小生は興味がないし、財政にも関係ない。
�テ段牟茲搬膾緝椶了�務の分担（15-16ページ）
みなさんご存じではあると思いますが、重要なのでちょっと見ておきましょう。
■基本的な考え方
大阪市と大阪府で現在行っている事務について、次の考え方により、特別区と大阪府で分担します
◆特別区は基礎自治体として、住民に身近な事務を行います。
◆大阪府は、特別区を包括する広域自治体として、大阪全体の成長、都市の発展に関わる事務などを行います
とりあえず、これだけでいいでしょう。
これは、下の図を見るほうがいいでしょう。
特別区設置直前の職員数は大阪市35,400人、大阪府82,400人、合計で117,800人ですが、この図の最下段は「大阪市・府合計77,100人}となっています。なぜこういうことになるかと言うと、点線枠で囲ってある部分の人員、大阪市の17,500人、大阪府の23,200については合計に加算されていないからです。
これについては図の下に注があります。＜大阪市の点線枠内の職員（※１の計17,500人）については、民営化等を検討しているものです。最下段の合計欄は、この17,500人と大阪府の警察23,200人（※２）を除いています。＞
ん？大阪市の職員17,500人が民営化はいいとして、まさか警察23,200人まで民営化はしないでしょうね。
それはさておき、合計の数字だけを見ると統合直前は「大阪市・府 合計77,100人」、特別区設置当初「特別区、一部事務組合、府 合計77,300人」、将来のイメージでは「（同左）合計 75,600人」。
さて、みなさんどう思われますか？
77,100人が最終的に75,600人になる、というのは1500人減るということ。減少率は1.9％。そんなに人件費が減るようには見えません。
金額に直すとどれぐらいでしょうか。1人当たりの人件費を年7百万円（公務員の給与の平均がこれぐらいだったと記憶しています）とすれば、7百万円×1,500人＝105億円・年。府の予算額が年3兆円、市の予算額が1.7兆円、計4.7兆円。105億円はこれの0.2％。
それに、人員が1,500人に減らすのに17年かかるというのは、大阪都構想による人件費削減といえるのかどうか。自然減じゃないですかね。
あと、注目すべきは、「一部事務組合」の存在でしょう。これについては、「��一部事務組合、機関等の共同設置」で説明されています。
さて、いよいよ財政の問題に入ります。
大阪都構想により、大阪市の仕事のうち、「住民に身近な事務」は特別区が、「広域的な事務」については府が行うことになりますから、それに必要なおカネ、すなわち大阪市の収入もそれに応じて、分配しなければならない。その分配をどうするか、ということがここに書かれています。
ところで、このパンフレットで扱われているのは大阪市の収入のすべてではない。
大阪市「財政のあらまし（平成26年12月）」4ページに大阪市の収入1兆7,116億円の内訳があります。
そのうち、このパンフレットで説明されているのは、市税6,419億円（パンフレット21ページ図では6,300億円）、地方交付税486億円、臨時財政対策費954億円、譲与税・交付金等661億円合計2,101億円（21ページ図では2,200億円）。
国庫支出金3,479億円、公債収入592億円、その他特定財源4525億円については、この項では説明の対象外。というのは、「国庫支出金」「その他特定財源」は両方合わせて特定財源、すなわち資金使途の決まっている財源なので、その仕事をやる地方自治体（府または5特別区）の収入になることは決まっているからということでしょうか。
さて税源の配分と財政調整の「基本的な考え方」は
◆各特別区で必要なサービスの提供ができる財源を確保し、各特別区間の税収の格差を是正します。
◆大阪府には、大阪市から移管される事務に応じた財源を配分します。
府と5特別区に必要なおカネの配分は、「税源の配分」と、「財政の調整」の2段階の作業を通じて行われる。
＊「税源の配分」とは、税金の種類ごとに、特別区の税金なのか、大阪府の税金なのかを決めることです。
具体的にどういうことか。
下の表の「大阪市」の部分は、大阪市の「平成25年度の一般会計、政令等特別会計決算について」の11ページの表による税種別の税収金額です。そして、「都構想」の部分は大阪市の税収を、「協定書」に基づき税種別に分配したらこうなる、と言うもの。
| 大阪市 | 都構想 | ||
|---|---|---|---|
| 税種 | 金額 | 特別区 | 府 |
| 個人市民税 | 135,463 | 135,463 | |
| 法人市民税 | 125,171 | 125,171 | |
| 固定資産税 | 267,978 | 267,978 | |
| 都市計画税 | 54,452 | 54,452 | |
| 軽自動車税 | 1,257 | 1,257 | |
| 市たばこ税 | 32,134 | 32,134 | |
| 事業所税 | 25,415 | 25,415 | |
| 計 | 641,870 | 168,854 | 473,016 |
（単位：百万円 出所:大阪市ホームページ）
この表の一番下の数字は、パンフレット21ページ下の図の「市税 6300億円」、「特別区 1700億円」、「大阪府 4600億円」に大体一致します。
ここまでが財源の分配であり、これだけでは終わらない。次の段階が「財政の調整」。
財政の調整とは、仕事に必要な財源を特別区と大阪府に分けるとともに各特別区に配るときには特別区ごとで収入に大きな差が出ないように調整することです。
「特別区ごとで収入に大きな差が出ないように」というよりは、＜各特別区で必要なサービスの提供ができる財源を確保＞することが目的ですね。特別区はそれぞれ独自に個人市民税、市たばこ税、軽自動車税などを徴収しますが、それだけでは、税収の多い特別区とそうでない区が出て来る。その結果税収の少ない区の住民サービスの水準が、税収の多い区より劣る、と言うことがあってはならない。そのために調整をする。
さて、具体的に府と5区にどう配分するか。
■特別区と大阪府に配分する財源は大阪府の特別会計で管理し、その配分割合（大阪府の条例で定める割合）は、特別区の設置後3年間は毎年、その後は概ね3年ごとに大阪府・特別区協議会（仮称） [P26参照]で検証します。
要するに配分割合は条例で決めるが、別途「大阪府・特別区協議会（仮称）」で検証する、らしい。
もう少し詳しく見ると、調整方法には2種類ある。
府の特別会計に入った5つの税のうち、法人市民税、固定資産税、特別土地保有税は、使途の決まっていない税金なので、配分を＜大阪府の条例で定める割合＞を掛けて算出する。こうして配分されるおカネが「特別区財政調整交付金」。
のこりの都市計画税、事業所税は使途の決まっている税金なので、その事務を府と特別区がどのように分担するかによって配分割合を決める。こうして配分されるおカネが「目的税交付金」。
次に、
＜財源の配分と徴収後のおカネの流れ（イメージ）＞
※財政調整財源・目的税（4,600億円）は、大阪府の特別会計で管理し、その配分割合を特別区設置後3年間は毎年、その後は概ね3年ごとに大阪府・特別区協議会（仮称）で検証します。その際、大阪府の受け取る財政調整財源等が大阪市から移管された事務の分担に応じて使われているか検証します。
これは、前段が20ページの「基本的な考え方」の下にある文章とダブっているように見えます。違うのは後段＜その際、大阪府の受け取る財政調整財源等が大阪市から移管された事務の分担に応じて使われているか検証します。＞この主旨は、「目的税交付金」の配分については別途決まるので、配分割合については検証する必要はないが、大阪府が「目的税交付金」を大阪市から移管された事務のために使っているかを検証するということらしい（推測です）。
ところで、「特別区財政調整交付金」の配分割合について＜＊なおこの配分割合は、消費税など国の制度の影響を受けることから、特別区設置の日までに知事と市長で調整することにしています＞などと書かれているが、府の条例で定める、と言っているのと矛盾するのでは。
さて、ここまでが、大阪市税（パンフレット21ページ図の6,300億円）の配分について。「地方譲与税・税交付金・地方交付税・宝くじ」など（図の2,200億円）はどうなるか。これについては、ほとんど書かれていないから、図を見るしかないのだが、この図がおかしい。
まず、20ページ下の図では「地方交付税」は特別会計に入るようになっているが、21ページの図では特別会計に入らないで、直接5区に1,200億円大阪府に1,000億円配分されるように書かれている。これらは、特別会計で管理するのか、しないのか。
もうひとつ。パンフレットの21ページ図右の「特別区、地方譲与税・税交付金・地方交付税・臨時財政対策債 1,200億円」「大阪府、地方譲与税・地方交付税・宝くじなど1,000億円」となっている。「臨時財政対策債」は、要するに借金です。だから、特別区の借金は特別区が使うのは当たり前？。のこりの地方譲与税・税交付金、地方交付税は大阪市に対して国から交付されていた財源で、使途自由の一般財源。だから、府と特別区に配分しよう、ということらしい。では、これの配分比率はどうやって決めるのか？
協定書はどうなっているのか？
五 特別区と大阪府の税源の配分及び財政の調整（第５条第１項第６号関係）
*****（一）（二）省略*****
（三）特別区財政調整交付金に加算する額
特別区財政調整交付金に大阪府の条例で定めて加算する額は、当面、地方交付税を財源とする財政運営が不可避である点に鑑み、地方交付税や臨時財政対策債の発行可能額、公債費負担等を勘案したものとする。
これだけしか書かれていません。どうやら、地方交付税や臨時財政対策債の配分については、決まっていないようです。
さて、問題はこれで5つの特別区は与えられた役割分担に十分な資金を確保できているのか？
これに対する回答が後で出て来る��各特別区の長期財政推計[粗い試算]でしょう。そこに＜この長期財政推計の結果からは、特別区の財政運営は十分可能です。＞と書かれています。
これについてはのちほど。
次の「��大阪市の財産の取り扱い」に進みましょう。
基本的な考え方
大阪市の財産は、市民が長い歴史の中で築き上げてきた貴重なものです。
これを踏まえ、財産をその性質に応じて以下の2つに区分し、適切に承継します。
◆学校や公園など、住民サービスを進めう上で必要な財産は、事務の分担に応じて、特別区又は大阪府が承継します。
◆株式、出資による権利や債権、基金等の財産は、特別区が承継することが基本です。大阪府が処理する事務に密接不可分な財産に限り、大阪府が承継します。
府市の業務に必要な資産は、府市がそれぞれ承継し、それ以外は市と言うことのようですね。
次のパラグラフ。
◆大阪府が承継する財産は、事業が終了した後、その取扱いについて大阪府・特別区協議会（仮称）[P25参照]で協議します。大阪府が事業に不要になったからと言って、勝手に売り払ったりしてはイカンと言うことですな。
「３．公営企業等の財産の取り扱い」で地下鉄などについて書かれています。
◆特別区設置の日までに地下鉄・バス事業が民営化されない場合は、大阪府が承継先となります。特別区の設置後に民営化されたときは、新会社の株式は特別区に配分します。
どうやら、地下鉄等の「民営化」と言っても、完全に売却してしまうということではなく、株式会社化する、と言う程度のことを考えているらしい。株式会社にしたところで、株式の大半を地方公共団体が所有していれば、民営化は形だけなのだが。
それはさておき、大阪府が「地下鉄等」を承継しても、それを勝手に処分して府の収入にしてしまう、と言うようなことは出来ない。「地下鉄等」はあくまでも旧市民＝5特別区民のもの。
細かいところは省略。右ページ下の右下の＜財産の承継（イメージ）＞を見ましょう。大阪市の財産7兆6900億円のうち、府に移管されるのは1兆9100億円です。
そして次のページ「大阪市の債務の取扱い」。
ここは、左下の図。大阪市の負債3兆4300億円のうち、大阪府が3兆3200億円（うち市債は3兆3000億円）を承継します。しかし、上のほうには、市債3兆3000億円の「返済費用は大阪府が3割、特別区が7割」と書かれている。
なんだか変だと思いませんか。市債の7割を特別区に残せばいいような気がしますが。あるいは、返済費用も全額府がもち、その分を財政調整で府がもらえばいいような気がしますが。なぜ全額府が承継して、返済費用の7割を特別区が負担するのか？
＜◆大阪府や各特別区の負担額は税源の配分や財政調整の仕組みによって必要な財源が確保されます。＞などと書かれていますが、財政調整財源から、返済原資を差し引いて、残りを大阪府と各特別区に分配すればいいだけのことでは？
さて、したがって、実質的には移管される市債は9900億円です。市債以外の債務200億円が移管されるので、市から府に移管される債務はトータルで1兆100億円。
移管される資産は1兆9100億円、負債は1兆100億円。大阪府は純資産9000億円を手に入れることになります。
要するに資産から負債を差し引いた9000億円を大阪府は「もらった」ことになります。
ただし、資産が正しく評価されているかどうかはわからない。
たとえば、土地・建物・物品など。土地は比較的正確に評価できそうです。建物や物品は簿価と処分価格とは、違ってきそうです。
株式・出資金、あるいは債権などのなかに不良資産が含まれていないとも限らない。これは内容を良く見ないとわかりません。たとえば株式や債権のなかに、ATC、湊町開発センター、クリスタ長堀などの名前が出てきます。いずれも現在は黒字のようですが、ATCとクリスタは債務超過のようです。
民間の企業買収などでは、資産の評価は専門家がきっちりやるのですが、大阪府・市の場合はやったのでしょうか。
しかも、これらの資産は、基本的には大阪府の事業に関わるものであり、事業が終了したからといって、大阪府が勝手に処分して府の収入にすることは出来ない。
また、株式といっても、上場されていなければ簡単に現金化することはできませんし、出資金となるとなおさらでしょう。
というわけで、大阪府民は単純に9000億円もらったといって、単純に喜ぶわけにはいかない。
基本的な考え方
特別区が担う事務は、各特別区において実施することを原則としますが、専門性の確保が特に必要なもの、サービスの実施にあたり公平性・効率性を特に確保する必要があるものについては、一部事務組合や機関等の共同設置等により、特別区が連携して行います。
5つの特別区でばらばらに実施しないほうがよい事務については「一部事務組合」等で行うということ。もちろん、市を５つの特別区に解体しなければ、こういう組織は必要ない。
この「協議会」はすでに何度か出てきていておなじみですが、
＜大阪府・特別区協議会（仮称）のすがた＞ 委員構成とりあえずここまで。
大阪府知事、5人特別区の区長が基本です
（以下略）
協議事項
�‘段牟茲了纏�に必要な財源の確保に関すること
（財政調整財源の配分割合等）
�∈盪此�債務に関すること
大阪府が承継する
・財産の事業終了後の取扱い
・株式等の処分による収入などの取扱い
・財務リスク解消時の残余財産の取扱い
等
�Ｂ膾緝椶汎段牟茲了纏�の分担に関すること
など
以上をみると、大阪都構想は大阪市の分割解体構想であり、大阪府は大阪市から権限、財源、資産等を取り上げて、あとは勝手なことをするのではないか、と言う批判にこたえるために、こういう協議会を作ったのではないか、とおもわれます。
そして、協定書で決まっていない諸問題（とりわけ財源の配分）を後送りするために、この協議会を作ったのではないか、とも思われてしまいます。
善意に解釈すれば、大阪市の既得権を保護するのは当然のことですし、府市統合に関して大阪府と５特別区が話し合いながらやっていくのも当然、ゆえにこういう「協議会」も必要、と言うことになるでしょう。
しかし、2重行政があるなら府と市で話し合って調整すればいいのでは、という疑問に対して「府と市をあわせてふしあわせ」だから、話し合いでは解決できない、と言っていたのが大阪都構想支持者ではなかったか。だとすれば、この「協議会」もムダ、と言うことになりはしないか。
続きを見ると、
協議方法最初から協議が整わないことを想定しているみたいですね。
○協議が整わない場合に調整を行う第三者機関を設けるなど、円滑な協議会運営を図ります。
■推計の目的・位置づけ・まとめ
◆特別区を設置した場合に、5つの特別区それぞれの財政運営が可能かどうかを検証するため、特別区ごとの長期財政集計を作成しました。
◆この長期財政推計の結果からは、特別区の財政運営は十分可能です。
要するに「特別区の財政運営は十分可能」と言いたいのでしょうが、とりあえず「特別区全体」のグラフを見ましょう。
財源対策前のグラフでは、当初5年間ぐらいは収入不足が続いています。ところが財源対策後はその間は収支ゼロとなって、その後は順調に余剰資金が積みあがっていく。
このグラフを見て大阪都構想は素晴らしい！と思うのは間違いです。
いや、自分はそんなことは思わなかった、と言う人もいると思いますが、恥ずかしながら小生はこの財源対策前と財源対策後のグラフを見て、これを大阪都構想の効果と錯覚してしまったのでした。アンチ橋下、アンチ大阪都構想の小生がそう錯覚したぐらいですから、橋下支持者、大阪都構想賛成派の人たちはそう思ったのではないでしょうか。
このことは、30ページ「長期財政推計を行うにあたっての考え方」から見ていくと…見るだけではダメで解説が必要かもしれませんが…わかります。
「１．算定方式」では、一番左に大阪市「今後の財政収支概算（粗い試算）」が置かれています。これは、大阪市が、大阪都構想の実現を想定しないで作成したものです。それを、「特別区分」…大阪市から特別区に移管される業務にかかわる部分と「大阪府分」…大阪府に移管される業務にかかる部分とに区分し、それに「再編効果額」…大阪都構想で節約できるおカネを足して、「再編コスト」…大阪都構想実現により発生する費用を引いて、特別区と大阪府に移管された業務にかかる収支見通しを算定した、と言うことです。
26-29ページのグラフは第17回大阪府・大阪市特別区設置協議会の資料(こちら）をもとに作成されていますが、グラフのもとになった大阪市「今後の財政収支概算（粗い試算）」はここにはなくて、市のホームページにあります。（[平成26年4月版]はこちら。)
この資料の2ページが「粗い試算」。これを見ると平成26年度から34年度まで収支不足が続いています。この間の収支不足の累計が1,736億円。
小生は当初、パンフレットの財源対策前のグラフで平成29年から33年ぐらいまでの期間、大阪府分をのぞいてすべて収支不足になっているのは、大阪都構想の初期費用のためであると思い込んでいたのですが、そうではなくて、大阪都構想が実現しなくても、そもそも赤字だったんですね。
そしてそれに対して、一番下の（参考）に＜補てん財源の状況 ・不用地売却代 560億円（27〜30年度）・財政調整基金 1644億円＞とあります。つまり、財源対策のネタもいちおう準備されているように見えます。
つまり、、大阪都構想実現のために財源対策が必要になったのではなく大阪都構想を実現しようがしまいが財源対策は必要であった、ということです。
そして、財源対策後のグラフで、5つの特別区の赤字がきれいに消えているのも、大阪都構想の効果ではない。財源対策を行えば収支がつぐなうのは当たり前。財源対策は帳尻を合わせる対策なのですから。
パンフレット30ページに財源対策が例示されています。
【財源対策（例）】
・土地の売却
・各特区別区の財政調整基金（貯金）の取り崩し
・大阪府からの貸付
・地方債の発行
地方公共団体の財源対策なんてわからん、と言う方がおられるなら家計に例えて見ましょう。生活費が足りなくなったので、とりあえず必要でないもの・ぜいたく品・金目のもの（たとえばハーレー・ダビッドソン）を売り払い、貯金を取り崩し、親にカネを借り、さらに不足したらサラ金からカネを借ります、みたいなもの。
財源対策は実行可能なら収支はつぐなえる。問題は実行できるかどうか。
具体的に言えば、遊休不動産（土地)があるか、財政調整基金（貯金）があるか、大阪府が貸付をしてくれるか、地方債を金融機関が引き受けてくれるか。家計の例で言えば、今必要でなくて売ってカネになるものがあるか、貯金があるか、親がカネを貸してくれるか、サラ金がカネを貸してくれるか。
遊休不動産や財政調整基金がなくても、ことの行きがかり上、まさか大阪府が特別区におカネを貸さない、なんてことはないでしょうし、よほどのことがない限り、金融機関が地方債を引き受けてくれない、と言うこともないでしょう。だから「特別区の財政運営は十分可能」なんて大げさにいうほどのことではない。
では、財源対策後のグラフで、余裕資金が積みあがっていくのは大阪都構想の効果ではないのか、というと、それは間違いなく「大阪都構想の効果」なのです。つまり、大阪都構想の効果がある＝節約ができるのであれば、余裕資金が積みあがるのは当然。
問題はこの「効果額」がどれくらいのものなのか、そして、それが本当に大阪都構想の効果なのか。これについては、すでに「2重行政解消の効果額」で検討しています。
ただし、こういう長期推計をやること自体に意味がないわけではない。推計しておけば、いついくらお金が足りなくなりそうなので、その時にはこうしよう、と言う計画を前もって立てることが出来る。
5つの特別区の財政力に大きな差がないようだ、と言うこともわかる。
もっとも、５つの特別区がみな当初5年ぐらいは赤字なのに対して（６）大阪府…大阪市からの移管事務かかる収支は最初から黒字で、お金がどんどん積みあがる、というのはちょっと気になりますが。
[再編効果]「再編コスト」については、別途検討していますので、ここでは省略。
これでひととおり、「パンフレット」に目を通しましたので、まとめらしきことを書きます。
○税源の配分・財政調整については、決まっていない部分があるらしい。
○大阪市から大阪府に移管される資産は、大阪府に移管される業務に関するもののみ。
○大阪市債は大阪府が承継するが、返済資金の7割は特別区が負担する。つまり、実質的には7割の市債が特別区に残る。
○大阪府は、純資産（資産-負債）9,000億円を受け取ることになるが、資産の評価がきちんとされているかどうかはわからない。
なにやら、決まっていないこと、おかしなこと、わからないことなどがある。
○大阪府が大阪市から移管された財源については、特別会計で管理し、「大阪府・特別区協議会（仮称）」で財源の配分割合、使途をチェックする。
○大阪市から大阪府に移管された財産は、業務遂行上その財産が不要になった場合、その処分については「「大阪府・特別区協議会（仮称）」で協議する。
○5つの特別区で共同で実施したほうが良い事務については「一部事務組合」などで実施する。
大阪府が大阪市から移管された財源や資産を勝手に使うのではないか、という批判に応える意味で「特別会計」「大阪府・特別区協議会（仮称）」が準備されています。
なるほど、と納得できる反面、一部事務組合の存在とあわせて、出来上がった大阪都構想全体はなにやら複雑な感じがします。大阪都構想には、行政組織の簡素化みたいな狙いがあったのではないでしょうか。そういう意味で、疑問を感じます。
また、「大阪府・特別区協議会（仮称）」には、「協定書」で決まっていないこと調整する、という役割があるようです。問題解決後送りの装置といえるのではないか。また、これがうまく機能するかどうかは不明。
○パンフレットでは「特別区の財政運営は十分可能です。」と言いきっているが、実は「資産を処分し、貯金を取り崩し、大阪府や民間金融機関から借り入れをすれば特別区の財政運営は十分可能です。」と言っているに過ぎない。
小生は、住民投票前にこのパンフレットを一通り読み、なんとなくおかしい、とは思ったものの、詳しく検討する余裕がありませんでした。住民投票で大阪都構想が否決されて時間的に余裕が出来たので、改めてきっちり読み直したら、いろいろわからないことが出てきました。それを解明していった結果が以上のとおりです。
どうでしょうか、皆さん。大阪都構想はわからない、と思いませんか？
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