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大阪都構想推進を争点とした大阪の出直し市長選の発端となったのは、法定協議会において、公明党が区割り案の絞り込みに反対したことですが、橋下はこれについて、公明党が約束を破った、と言っています。この件について、検討します。
大阪府・大阪市議会において、橋下と大阪維新の会に対立していたのは、自民党、民主党、共産党です。公明党はまあどちらかと言えば橋下支持であった、と言えるでしょう。
公明党は、橋下が当選した2011年12月の大阪市長選では、「自主投票」とした。これがなければ、橋下は当選したかどうかはあやしい、と言われています。
橋下は市長になったとはいうものの、大阪市議会では、日本維新の会は議会の過半数を占めていませんから、公明党の協力を得ることは必須でした。橋下の提案した多くの条例等、すなわち、君が代条例、職員基本条例、教員基本条例、政治活動規制条例、大阪都構想実現に向けた「特別区設置協議会 の設置議案」等の成立に協力しました。
また、自民党大阪市議団の橋下市長に対する「首長と政党代表の兼務は困難で市政運営に支障を来す」と市長と日本維新の会代 表の兼務の解消を求める意見書は公明党の反対で否決されました
かの有名な?橋下の「従軍慰安婦問題発言」をめぐり、大阪市議会が市長問責決議案を提出した際に、公明党が反対に回り、決議案が否決されました。
さて、第一回法定協議会の開催は、平成25年2月27日、以降平成26年1月31日まで、計13回開催されています。
第13回法定協議会については、以下のように報道されています。
大阪都構想、橋下氏ら提案の区割り案絞り込み見送り
2014年1月31日21時17分 朝日新聞
「大阪都構想」の制度設計を話し合う大阪府と大阪市の法定協議会は31日、橋下徹市長(大阪維新の会代表)と松井一郎知事(維新幹事長)が提案した特別区の区割り案の絞り込みを、反対多数で見送った。橋下氏が目指す来年4月の大阪都移行は厳しい情勢となり、橋下氏は近く松井氏と共同で記者会見を開き、今後の方針を表明する。大阪都構想は、大阪市を廃止して複数の特別区に分割し、広域行政の権限については「大阪都」に移す内容。橋下氏と松井氏は4種類の分割案(区割り案)を法定協に示していたが、議論を前に進めるため、17日の協議会で1案に絞り込むことを提案していた。
31日の協議会では、これまで維新に協力してきた公明が「区割り案を一つに絞り込む手法は、様々な角度からの議論を奪う」(清水義人府議)として、4案での議論を続けるべきだと主張。都構想に反対している自民、民主、共産も絞り込みに反対を表明した。
協議会後、橋下氏は「4案のまま議論していれば、最低でも5年、延ばされれば10年、平気でかかる」との認識を示し、2月3日に松井氏と記者会見して今後の方針を表明する考えを明らかにした。松井氏は協議会前、事態打開のために出直し選挙に打って出る可能性について「それも選択肢」と述べていた。
そして、橋下は「出直し選」を決断するわけですが、それはさておき、橋下は公明党の、これまで維新に協力してきた公明が区割り案の絞り込みに反対したことについて、翌日の日本維新の会の党大会でこう述べています。(ニコニコ生放送「日本維新の会 第2回大会 生中継」14/02/01より)
「僕は公明党と約束したんです。先の衆議院選挙で6議席、維新の会は候補を立てないと。あの頃は維新の会は、まぁまぁ勢いがありました。だから公明党から、候補者を立てないでくれと申し入れがありました。それで話しをして、大阪と、兵庫県において、我々は6議席、議員を立てない。そのかわり、我々が一番こだわっている大阪都構想統治機構改革には協力をよろしくお願いいたしますと、住民投票までは進ませてください、住民投票で否決をされたら僕も納得はするけれども、住民投票のところまでは、やらさせてくださいというはなしを、衆議院選挙の直前にした。そして、衆議院選挙、僕は維新の会の候補、全部はまわることはできなかったけれども、公明党の全選挙区はまわりました。都構想を進めてくれるからやりました。
ところが昨日(1月31日)、大阪府・市協議会で都構想の中身を詰めているところなんですが、1案に絞って議論を深めさせてもらいたいという僕と松井知事の提案に関して、自民・民主・共産が反対するのはわかりますが、公明までが反対しまして、事実上、都構想の議論はストップします。」
衆院選での「選挙協力」の見返りに、大阪都構想推進で維新の会に協力する、とかいう約束があった。それを公明党が反故にした、ということらしい。
たしかに、「選挙協力」のようなもの、があったことは事実のようです。
大阪維新の会、公明党の公認全9区への擁立見送り
読売新聞 2012年9月8日
地方政党大阪維新の会が国政選挙に候補者擁立というのはちょっとおかしいのですが、この頃は、いつ衆院解散が行われてもおかしくない、と言う情勢。そして、大阪維新の会は全国政党日本維新の会を設立して国政進出することが決まっていました。事実2012年9月28日、日本維新の会設立。そして、衆院解散は11月16日、選挙は2012年12月16日。
そういう情勢の中、<大阪維新の会は次期衆院選で公明党が公認候補を擁立する9小選挙区すべてで 維新候補の擁立を見送る方針を決めた。>
小生には、この「選挙協力」についてはなんとなくおかしい、と思います。
この新聞記事だけを見ると取引には見えないのです。普通いわれる選挙協力は、同じ一つの選挙で、ある選挙区では公明が候補者を立てて維新は立てないが、別の選挙区では維新が候補者を立てて、公明は立てない、というような、候補者の調整のことでしょう。維新の会は候補者を立てない、というだけで、それに対する見返りがないのです。
橋下の言うとおり、見返りとして大阪都構想と言う政策への協力があった、というのもなんとなくおかしい。というのは、大阪府議会で大阪都構想の検討が始まったのは2011年7月のことです。まあ、大体ダブル選の3か月前と言うことでしょうか。この段階では大阪市は大阪都構想の検討は始めていません。この段階で、「住民投票までは進ませてください」、「わかりました」、などと言う約束が出来るものなのか?
そもそも、「国政」選挙で候補者を擁立しないという「選挙協力」の見返りが大阪都構想という「地方政治」の「政策への協力」というのは、全く質の違うものを取引する不自然さがある、と言う感じがします。国政と地方政治、選挙協力と政策への強力という二つの意味で不自然なのです。
そんなことを考えているうちに、こんな記事が見つかりました。話は、2011年11月、大阪ダブル選挙前までさかのぼります。
大阪ダブル選:既成政党、「維新の会」の国政進出を警戒
毎日新聞 2011年11月9日
関係者によると、堺屋氏は、公明党が大阪都構想に賛成するなら、次期衆院選で公明候補が立候補予定の大阪4小選挙区に維新の候補者を立てない意向を伝えたという。ダブル選の態度を決めかねていた公明党の関係者は「自主投票を求められた」と受け止めた。
堺屋太一氏は、橋下の応援団の一人。彼が、橋下が大阪市長に立候補した大阪W選で公明党が<自主投票>にするなら、<次期衆院選で公明候補が立候補予定の大阪4小選挙区に維新の候補者を立てない>と約束したらしい。厳密にいうと、公明党はそう受け取ったらしい。
この記事がどの程度信頼のおけるものかはわかりませんが、もしこれが本当なら、橋下は「衆院選挙での協力」と「大阪都構想への協力」と言う取引をした時期を<衆議院選挙の直前にした。>と言っていますが、これは事実でないと言うことになります。そして、そのほうがつじつまがあう。
つじつまがあう、というのは、選挙協力の発端が大阪W選にまでさかのぼるとすれば、前に述べた疑問は解消します。維新は衆院選では、ダブル選での借りを返す意味合いですから、衆院選では代償としての公明党の維新の会候補者への支援はない、と言うのは当然。 そして、大阪W選とと国政選挙との取引であった、というのであれば、一応選挙と選挙の協力であって、選挙と政策というよりは、自然でしょう。
ここからは憶測ですが、真相は次のようなものではないかと思います。
<堺屋氏は、公明党が大阪都構想に賛成するなら、次期衆院選で公明候補が立候補予定の大阪4小選挙区に維新の候補者を立てない意向を伝えたという。ダブル選の態度を決めかねていた公明党の関係者は「自主投票を求められた」と受け止めた。>ということで、公明党はこの時点では大阪都構想そのものに賛成する、と言うことだとは思っていなかったのでしょう。そして、衆院選で「自主投票」の貸しを返してもらってそれで取引終了、と考えていたのではないか。
前に引用した記事では、堺屋氏は創価学会の幹部と会談した、とあります。そして「自主投票」は創価学会の決めたことで、公明党の決定ではない、と言えないこともありません。
あるいは、公明党中央と大阪公明党との間で、意思疎通を欠いたというようなこと、すなわち公明党中央は取引の内容を知っていたが、大阪のほうには知らされていなかった、と言うようなこともあるかもしれません。
橋下は<衆議院選挙の直前>に<住民投票までは進ませてください>と話したといいましたが、堺屋太一氏が、創価学会幹部と話した、というのは事実なのかそうでないのか。そして、橋下は本当に衆院選挙の直前に話したのか(堺屋氏とは別に、このタイミングで話した、と言うこともあるでしょう)もしそうなら、誰と話したのでしょうか。創価学会なのか、公明党なのか、公明党でも国会議員なのか、大阪の地方議員なのか。 そしてその時、相手はどういったのでしょうか。
仮に橋下の言うとおりのことを橋下が言ったとしても、前に述べたように、「国政」選挙で候補者を擁立しないという「選挙協力」の見返りが大阪都構想という「地方政治」の「政策への協力」というのは、全く質の違うものを取引するという不自然なものを、相手が理解したでしょうか。こういう異例な取引をすること自体が間違っていた、と言えないでしょうか。
いずれにせよ、どこまでどういう協力をするかが書面になっていない以上、真相はやぶの中です。口約束がいかにいい加減なものか、ということぐらい法律の専門家である橋下は良くご存じのはず。橋下の身から出た錆でしょう。
さて、橋下の言うとおり、そういう約束があったとして、こういう取引をすること自体には問題があるでしょう。
大阪ダブル選と衆院選での選挙協力、ないしは衆院選挙協力の見返りが都構想への協力、というのは、有権者からは見えない一種の密約ではないか、ということです。
選挙では、各候補者は公約を掲げて戦うべきでしょう。有権者は、公約を見てだれに投票するか決めます。しかし、こういう「密約」があったのでは、有権者は判断が出来ない。
普通の選挙協力、候補者調整は、同じ選挙のなかで行われ、その際、公約のすり合わせも行います。選挙民はその公約をみて、その候補者に投票するかどうかを選択できる。しかし、国政選挙と大阪都構想住民投票の取引では、公約で候補者を判断することはできません。
具体的に言うなら、公明党の衆院選挙の候補者は、大阪都構想の住民投票に賛成します、と言う公約を掲げて衆院選を闘ったわけではありません。しかし、衆院選での公明党の候補者に投票したことが、結果的に住民投票実施に賛成する人に投票したことになってしまいました。これは、おかしいでしょう。
また、大阪ダブル選で、橋下徹候補者が公明党が次の衆院選で掲げる公約を支持する、と表明したでしょうか。あるいは、衆院選で公明党の候補者が、大阪都構想を支持します、ないしは、住民投票までは協力します、と表明したでしょうか。
まあ、それらしきことを言ったかもしれませんが、なぜ地方選挙で国政のことを、国政選挙で地方政治のことを言うのか、という批判は免れないでしょう。具体的に橋下が公明党の公約を支持するとして市長に何ができるのか、あるいは公明党の衆院選候補者が、大阪都構想に関して何ができるのか、というと、疑問が残ります。
政治の世界では、その種の取引は当たり前、ということを言う人がいるかもしれません。では、橋下徹は、衆院選不出馬を表明した時点で、公明党とこれこれの取引をした、ゆえに衆院選出馬はとりやめた、と表明したでしょうか。公明党についても同じことが言えます。やはり、これはおかしな取引、人には言えない裏取引なのです。
橋下はこの「密約」を公表しました。おそらくこの取引には問題がある、と言う意識が希薄なのではないかと思います。
仮にこういう取引があったとして、公明党の行為は裏切りなのか?
公明党は大阪都構想に反対してはいません。区割り案の絞り込みに反対しただけです。小生はこれを、もう少し慎重に検討しよう、と言う意味だと取ります。橋下は<住民投票までは進ませてください>と言ったそうですが、住民投票に反対しているわけではない。橋下は、区割り案絞り込みが出来ないと<事実上、都構想の議論はストップします。>と言っているが、そんなことはないのでは?
なんとなく言い訳めいて聞こえますが、この言い訳は一応成り立ちそうです。
そしてそういう言い訳をしないとしても、 公明党は当初大阪都構想推進の方向でいたが、構想を検討したら、2重行政の解消の効果なんてない、ということで、反対にまわったのなら、仕方がないのではないですかね。これを裏切りと言えるでしょうか。
「大阪都」の節約効果、最大976億円 府市が試算
「年4000億円」目標に遠く及ばず
日本経済新聞 2013/8/9
年4000億円あると期待されていた大阪都都構想の節約効果が全部で976億円に。しかも、この中には2重行政解消効果以外のものも含まれている、という。これでは、ちょっと待てよ、と言うのが普通でしょう。
さらに橋下はこんなことを言っている。
<数字は何とでもなる。見せ方(次第)だ。>これでは、公明党でなくても、橋下の言うことは慎重に検討しなければ、、と思うでしょう。
仮に公明党が橋下を裏切ったのだとしても、 橋下を裏切らないことが、市民を裏切ることになりはしないでしょうか。
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