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2014年1月31日の大阪府・大阪市特別区設置協議会(いわゆる法定協議会。以下法定協議会と言います)での区割り案絞り込み提案が否決されたことをうけ、橋下市長は、市長を辞職したうえで市長選へ立候補し「大阪都構想」への支持を市民に訴えました。再選されることで市民の「大阪都構想」への支持を確認し、それによって議会ないしは協議会の反対を押し切って、大阪都構想の議論をすすめよう、というものです。
それに対して反橋下の陣営からはこの出直し選は「大義がない」という批判が出ました。おそらく、自民党副総裁の高村氏の言葉が、広まったのでしょう。
「大義名分はない」 自民・高村氏が橋下氏批判
2014.2.5 msn産経ニュース
自民党の高村正彦副総裁は5日午前、大阪市の橋下徹市長が辞職し出直し選挙に出馬する意向を表明したことについて、「選挙があっても市議会の構成は変わらず何の解決策にもならない。大義名分がない」と述べ、議会側の賛同が得られず実現が困難となった大阪都構想への「民意」を問う選挙実施を批判した。党本部で記者団に語った。
「大義」なんて大げさな、とは思いますが、市長選をやっても、市議会の党派別構成は変わらない。したがって、法定協議会の党派別構成も変わらない。
もう少し詳しく言えば、
法定協議会の規約
第5条 協議会は、会長及び委員19人をもって組織する。2 会長は、次に掲げる者のうちから、これらの者の協議を経て、大阪府知事及び大阪市長が選任する。
(1) 大阪府知事 (2) 大阪市長 (3) 大阪府の議会の議長及び大阪府の議会が推薦した大阪府の議会の議員 9人 (4) 大阪市の議会の議長及び大阪市の議会が推薦した大阪市の議会の議員 9人
つまり、議会から選ばれる委員は、議会が推薦した者でなければならない。
そして、委員はおおむね議会における党派別構成比に応じて選出されています。この選出方法は、常識的といえるでしょう。
議会の党派別構成と異なる委員の選出を行おうとしても、議会が反対するでしょうから、議会の党派別構成が変わらない限り、法定協議会の委員は変えられない。
仮に大阪維新の会の議員が過半数を占めていて、勝手に委員を決められる、というのならともかくも、この時点では府議会も市議会も、大阪維新の会は過半数を占めてはいません。
とすれば、橋下が市長選で再選されても、議会の党派別構成が変わらないのだから、法定協議会の委員を変えることはできない。
橋下は、選挙で勝ったら法定協のメンバーを入れ替える、と言っていましたが、これは無理筋。ではなぜ橋下は、議会を解散しなかったのか。
ちょっと調べてみたのですが、総理大臣が衆議院を解散するように、市長が市議会を解散する、と言うわけにはいかないようです。
地方自治法の規定では、地方議会の解散は
しかし、市長が市民に訴えて議会をリコールさせるという手段も残されていますし、議会には自主解散権もありますので、市長から議会にお願いして、解散してもらってもいい。議会がそう簡単に自主解散に賛成するとは思えませんが、議会を解散せよとの市民の声が大きくなれば、議会もやむを得ず解散したかもしれない。
しかし、橋下はそうしませんでした。
たぶん、橋下は、市議会議員選挙をやっても勝てない、すなわち、日本維新の会が過半数をとる、ということはない、と見たのでしょう。
大阪市議会の会派別構成は、以下のようになっています。
大阪維新の会 32 公明党 19 自民党 17 OSAKAみらい 9 共産党 8 無所属 1 計86
(注.OSAKAみらいは、民主党の議員が中心の会派)
前回の市議会議員選挙は平成23年4月ですが、橋下の支持率は、低下傾向です。日本維新の会の支持率も低下傾向。
それに対して、前回市長選のように、橋下対反橋下となれば、自分の人気でまだまだ勝てる、と見たのではないか。 下の世論調査でも、橋下人気は低下傾向ではあるものの、まだ49%の橋下の支持者がいて、不支持の31%を上回っています。
橋下市長支持低下49% 大阪都構想、反対が上回る 府民世論調査
2013年11月19日00時00分
朝日新聞社と朝日放送(ABC)は16、17両日、大阪府民を対象に共同で電話による 世論調査を実施した。大阪市の橋下徹市長の支持率は、2月の前回調査の61%から49%に低下、不支持率は25%から31%に上がった。実現をめざす「大阪都構想] については初めて反対が賛成を上回った。 橋下市長と大阪府の松井一郎知事がダブル選挙で初当選して27日で2年になるのを 機に実施した。橋下市長の支持率が50%を割るのは初めて。知事時代は79〜54% だった。今回、全体の42%を占める無党派層では支持36%、不支持32%と割れた。
橋下の出直し選への批判としては、「大義がない」のほかに、任期途中の辞職は無責任、選挙費用が無駄、この時期に選挙をやると予算編成の事務が滞るなどというのもありました。
小生は、この出直し選には、こんなことで済む問題があると考えています。大げさに言えば、橋下のこの行為は、議会制民主主義の精神に反している。
法定協議会の委員の大半は、府と市の議会の議員から選出されています。ゆえに、法定協議会と市長の対立は、議会と市長の対立と言えます。
三権分立と言う考えからすれば、市長は、議会の決定したことを執行するに過ぎない、といえます。あるいは、議会は権力者の権力行使を監視するのが仕事ともいえます。そう考えれば、議会の意思が優先されるべき、ということになる。そこまで言わなくても、議会と市長(府知事)が対立するというのは、民主主義においては当たり前のことです。
人々は、選挙を通じて市長には行政の長としての仕事を委任し、議員には議員としての仕事=議会で議論することを委任したわけです。議員も市長も選挙で選ばれています。すなわちどちらも「民意」で選ばれている。そういう意味では、議会と市長は対等。どちらの「民意」が優先されるべき、ということはない。
橋下は、自分が多数の市民の支持をえて再選されることを、大阪都構想への支持とみなして、議会(法定協議会)に圧力をかけ、区割り案絞り込みを決定させよう、ということでしょう。
大阪都構想推進の民意が多数である、多数決は民主主義の原理である、といいたいのかもしれないが、それなら、多数決原理には、公開の場での十分な討論と、少数意見の尊重がセットになっている。
かりに市長選の結果が、仮に都構想を推進すべし、という多数意見だとしても、議論を「民意」=多数意見でだからと言う理由で封じ、議会(法定協議会)の少数意見?を無視していい、ということではない。
ここは、議会(法定協議会)できちんと話し合いをするべきでしょう。
もし議会の言っている「民意」が最新のものでない、というのなら、議会の選挙をやり直すべきでしょう。それは、前述のとおり、全く不可能なことではありません。
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