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尖閣諸島の国有化による日中関係悪化は不可避だったか

小生は、石原慎太郎は東京都が尖閣諸島を購入する、と発言したことで「寝た子を起こした」、そもそも尖閣諸島のことで何かをして中国を刺激するというのは得策でないという考えですが、そうではない、という考えの人もいました。

尖閣諸島の地権者のところには、多くの買収のアプローチがあったが、その中には中国側のエージェントや、公然と中国人と名乗る人物もあり、金額では350億円というようなものもあった。裏では、中国政府が動いているかもしれない。こんなふうに中国側に島を買収されてはたまらない。島が個人の所有であるからこういうことが起きる。だから東京都が購入するほうがいいのだ、というわけです。

しかし、所有権と領有権は別物です。所有者が日本の法律に従い、日本国政府の支配下にあれば、外国籍の個人・法人が土地を所有しても、別に問題はありません。しかも、日本が所有権を認めている地権者から島を買えば、日本の領有権を認めたようなものでしょう。はたして中国政府がそんなことを画策するかどうか。

それはさておき、個人が所有することが領有権保全の面で危険であるとしても、それが、東京都が所有すべきだ、ということにはなりません。

島の現状は無人島で、普通の利用方法は考えられないのですから、地権者が、個人で島を所有することには意味がないから手放したい、と考えたのは当然でしょう。島は、領有権ならびに隣接する海域の領海権を主張するためだけに存在しているようなものです。

だとすれば、国が所有し、直接管理するのが妥当で、防衛・外交の権限も能力もない東京都が所有するのは意味がありません。国が島を賃借しているという現状から考えても、所有権が国に移転するほうが自然でしょう。

つまり、所有者が島を手放すならば、国が購入するのが筋でしょう。東京都が購入するほうが望ましい、とは思えない。実際、石原慎太郎自身、東京都が購入するのは「筋違い」「本来は国の役割」と言っていました。

では、国が購入することが望ましいとして、事実国有化はなされたのですが、その際、中国との関係悪化は避けられなかったか。小生は、やり方によっては、それは避けられたと思います。 小生は、中国漁船衝突事件が起きるまでは、尖閣諸島問題については全く知りませんでした。おそらく、日中両政府の、尖閣諸島問題棚上げが成功していたのでしょう。日本でも中国でも、ほとんど知る人はいなかったのではないかと思います。 つまり、尖閣諸島問題は、本来、さほど注目されるべき問題ではない。したがって、地権者と国との売買がひそかに行われていれば、こんな大事にはならなかったのではなかったか、とおもいます。

国が尖閣諸島の賃借を開始したのは2002年(平成14年)4月のことです。このことを知っていた人は、日中双方にどれぐらいいたでしょうか。また、2005年(平成17年)には、魚釣島の灯台が海図に記載されましたが、そのことで、日中関係は悪化しませんでした。こういうことは、公表された事実です。しかし、問題にはならなかった。

尖閣諸島の国有化が望ましいとして、…そのことは、石原慎太郎も認めています…石原慎太郎は、どのような行動をとるべきだったのか。

地権者から石原慎太郎に、尖閣諸島購入の打診があったときに、彼は、尖閣諸島は国が所有すべきである旨、地権者を説得し、一方で、国に対して、ひそかに購入を働きかけるべきだったのでしょう。

もちろん、ひそかにやっても中国側にばれない保証はありません。しかし、ことがおおっぴらになってしまえば、中国政府としても、国内世論に配慮して強硬な姿勢を取らざるを得ません。見て見ぬふりはできないでしょう。だとすれば、ひそかに売買することで、今回のような大騒ぎにならなかった可能性はある、少なくとも、全くなかったとは言えないでしょう。

ただし、石原慎太郎は、まず、そんなことはしなかったでしょう。それでは、彼の出番がありませんから。


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