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「従軍慰安婦問題発言」は自発的発言

知恵袋の質問で、なぜ、橋下徹はあのような発言をしたのだろうか、というのがありました。「発言の意図・狙いはなにか。」「隠された狙いがあるのでは?」「寝た子を起こすような発言」「批判を浴びるに決まっているのになぜ」「なぜ今この発言を」というものです。橋下にとっては好ましくない結果をもたらしたと思われるこの発言を、大騒ぎになる、ということが予想されたのに、なぜ、ということでしょう。

そして、こういう疑問に対する答えとして「誰かに知恵をつけられたのか」「マスコミの誘導に引っかかったのだ」とか「マスコミの誤報・虚報。一方的な橋下叩き」など、と言われています。

どうやら、マスコミは、橋下を「叩いた」ようです。とりわけテレビでは「叩いた」らしい。橋下氏は、週刊朝日を徹底的に叩きました。週刊朝日を叩いた、というより朝日新聞を叩いたのであり、マスコミの代表としての朝日新聞をたたいたというべきでしょう。そこで、今回の件は、好機到来とばかりに、復讐された。

しかし、少なくとも、この一連の騒動(とあえて言います)の発端となった発言に関する報道は、比較的正確であったようです。そのことは橋下も当初は認めていました。したがって、マスコミの誤報ないしは虚報であった、とはいえない(マスコミの誤報説については別途)。

マスコミの誘導に引っかかったか、というと、13日の発言については、そうではないようです。13日の発言については、全文書き起こしがあります。質問の最初は「村山談話」について。

Q 村山談話で昨日も自民党の高市早苗氏が侵略という言葉はどうかと批判的なことを言っていた。安倍首相も侵略とははっきり言っていない。植民地支配と侵略をおわびするという村山談話については橋下代表はどう考えるか。

それに対する橋下の答えは、「侵略の定義は明確ではないが」といいつつも、

侵略だということはしっかりと受け止めなければいけない。実際に多大な苦痛と損害を周辺諸国に与えたことも間違いない。反省とおわびはしなければいけない。

それにつづいて、

ただね、やっぱり事実として言うべきことは言っていかないといけないと思ってますから、僕は従軍慰安婦問題だって、慰安婦の方に対しては優しい言葉をしっかりかけなければいけないし、優しい気持ちで接しなければいけない。

橋下が聞かれていないことまで、一方的にしゃべっています。このあとも、かなり長い発言ですから、あらかじめ準備してあった持論を展開した、という感じです。

「誰かに知恵をつけられたのか」はどうでしょうか。

たとえば橋下は、「日本軍または日本政府が、従軍慰安婦を強制連行したという証拠はない」は、非常に限定的な意味で言っています(こちらをご参照)。これは、弁護士的というか、言葉の使い方を良く知っている人の発言ですね。普通の人は「証拠がない」は、その「事実がなかった」と受け取ってしまいますが、そうではない。

では、橋下は日本政府が従軍慰安婦に賠償するべきか、というと、おそらくNOというでしょう。法律的には、証拠がない=無罪=賠償責任なし、ということですね。

実は、「証拠がない」ので政府は賠償しないが、民間の協力によって、実質的な賠償をしよう、というのが日本政府のやってきたこと。橋下の言うことは、日本政府の従来の方針に矛盾しません。

この発言は、橋下が、法律専門家だからできる発言と言えるでしょう。

「従軍慰安婦は、当時は必要だった」は、その見解の当否はさておいて、従軍慰安婦の存在を必要悪とはいえ肯定的にとらえる、というのは結構ユニークなものでしょう。現代の日本人では、あるいは韓国でも、アメリカでも売春は悪、が常識でしょう。いや、売春は、昔から肯定はされていなかったかもしれません。さらに軍隊と結び付けて、限定し、「当時は」と付け加えて、今の売春は肯定していない。現行の法律と矛盾しない範囲内での、肯定です。

米軍司令官に対する「風俗活用」発言でも、橋下は合法の範囲内での「風俗業」を提案しているだけであり、法に抵触する売春を提案しているわけではありません。橋下の一連の発言の中で、法を尊重する、という態度は一貫しています。

ただし、橋下は、合法であればいいというだけで、道徳的な善悪の観念はありません。 以下のwikipediaの記述をご参照ください。

合法でさえあれば道徳にしばられず競争すべきだとしている。例えば、著書の中では「ルールをかいくぐるアイディアを絞り出すことこそ、いまの日本にとって一番必要なんじゃないか!」「明確なルールのみが行動の基準であって、明確なルールによる規制がない限りは何をやっても構わない」「ルールの隙を突いた者が賞賛されるような日本にならないと、これからの国際社会は乗り切れない」などと述べている。
(Wikipedia「橋下徹」「エピソード」「思想」(リンク切れ)

橋下には「合法的な風俗業」が道徳的に善か悪か、という考え方がないのでしょう。であるがゆえに、米軍司令官に「風俗業の活用」を平気で提案できたのでしょう。売春そのものが善か悪か、ということについても、何も言っていませんし、その理由も言っていません。

というわけで、一連の発言は、かなり弁護士的であったり、橋下オリジナルの発想であったりします。そして、彼の従来の発言とも矛盾はしません。彼が誰かに知恵をつけられて、ということはないでしょう。いや、知恵をつけられたものだとしても、それを消化して彼オリジナルの考えとして提示した、と思われます。

さて、では橋下の発言の意図・狙いはなにか。これについては、またのちほど。


従軍慰安婦の実態に関する小生の見解については、こちらをご参照。


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