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オスプレイ訓練、八尾飛行場で

まずは、簡単に経緯をみてみましょう。

6月2日、
大阪府の松井一郎知事(日本維新の会幹事長)は、沖縄県に集中する米軍の新型輸送機オスプレイの訓練の一部を大阪で受け入れる意向を固めた。6日に菅義偉官房長官と会談し、沖縄の負担軽減の一環としてオスプレイ訓練受け入れを沖縄県外の自治体に要請するよう求める際に表明する。八尾空港(同府八尾市)を候補地としている。
「オスプレイ訓練、八尾空港で受け入れの意向 松井知事」 朝日新聞デジタル 2013年06月02日)

6月3日、日本維新の会共同代表の橋下徹大阪市長が正式に表明。

一方、八尾市の田中誠太市長は3日、府に対し「受け入れられない」と伝えたことを明らかにした。(中略)

維新は従来から「沖縄の負担軽減」を外交・防衛政策の柱の一つに掲げているが、八尾空港での訓練受け入れに関しては地元自治体に打診しておらず、八尾市などは強く反発している。
「橋下氏、官房長官に候補地として提案 地元の反発には『松井知事が協議すると思う』」 msn産経ニュース 2013.6.3 )

そして6月6日、橋下は予定通り、菅義偉官房長と安倍総理と会談して、これを提案。

橋下氏は首相との会談で、「政府が八尾空港と決めたら、全力で私と松井氏が地元を説得する」と表明。首相は「ぜひ検討させていただきたい」と応じたという。菅氏は会談後の記者会見で、「訓練移転など負担を全国で分かち合っていくことは大事。提案を歓迎したい」と語った
「橋下市長:オスプレイの八尾受け入れ、官房長官に伝える」毎日新聞 2013年6月6日)。

松井は大阪府知事ですから、大阪府への受け入れを検討する、と言ってもまあいいでしょうが、橋下は、大阪市長だから、八尾市について勝手にどうこうする権限はありません。

そもそも、米軍の戦略のなかで、オスプレイをどこに配備し、どこで訓練をするか、という問題があります。日本政府はそれを受けて、地元の自治体と協議して、合意が得られれば決定、というというのが筋でしょう。最終的には、合意が得られなくても、強行するかもしれませんが。

知恵袋での八尾飛行場の問題点の指摘は、以下のようなものでした。

  1. 住宅地のど真ん中の八尾飛行場に、安全性に問題ありと言われているオスプレイの訓練を受け入れるというのは、危険。
  2. 八尾飛行場は、最大離陸重量5.7tを超える航空機の使用は原則認められていない。 (オスプレイは空虚重量: 15.032 t 最大離陸重量 垂直離陸時: 23.981 t 短距離離陸時: 27.442 t)
  3. 周辺に航空法の高さ制限を超える違法な構造物や樹木が650件も存在するため、安全上の問題を抱えている。
  4. 八尾空港は日米地位協定に基づく「共同使用施設」ではないので、もし受け入れるなら、 日米地位協定を変える必要がある。日米地位協定を変えれば、日本の八尾空港の周辺の 空は、日本の空ではなくなり、アメリカの空になり、民間機などの 飛行制限がかかる。

1については、オスプレイは普通のヘリより安全、という説ありよくわかりません。 2と3については、飛行場およびその周辺の環境を整備すればいいのかもしれません。 4についても、地位協定を変更し、飛行場を共同使用するための、取り決めを結べばいいこと、とはいえるでしょう。まあ、大したことはないか?

6日の検討開始の段階では、政府はこういう反応を示しています。

以下、「オスプレイ 八尾で訓練、本格検討 政府、コストなど課題見極め<」(msn産経ニュースwest2013.6.6)より、適宜抜粋。

防衛省幹部によると、オスプレイの燃料はセスナや陸自ヘリと異なるため新たな給油施設が必要となり、数十億円のコストがかかるという。格納庫の確保も難題で、空港、隣接する駐屯地とも格納庫は満杯の上、新設する土地もない。

配備と訓練は別だから、こういう施設整備は必要ない、などという話もあったが、ただ単に八尾飛行場への離着陸の訓練をしたところで、あまり意味はないでしょう。

政府高官は「どの自治体も及び腰の中、今回の提案はありがたいが、沖縄の負担軽減と抑止力の強化の両面で、八尾はメリットが少ないのでは」と指摘する。

訓練環境としても疑問符がつく。八尾空港周辺は普天間飛行場と同じように住宅密集地。民間空港のオスプレイ使用には地元の反発が強い。一方で、沖縄での訓練をある程度代替できなければ、沖縄の負担軽減効果も限定的となる。

 米軍は本土全域でオスプレイの飛行訓練を行う計画で、できるだけ多く給油・中継拠点も確保したい考えだが、すでに岩国基地(山口県岩国市)を拠点としており、東日本での拠点確保を優先させたいのが米軍の本音だとの指摘もある。


オスプレイを戦略的な観点からどのように配備するか、そのうえで、訓練をどこでやるか、については、そもそも、米軍のほうの都合がある。ただ、やみくもに提案しても意味がないでしょう。

オスプレイの「訓練」の内容について、小生の見解を述べておきます。

日本にやってきたオスプレイがやった訓練は、飛行ルートの確認のようなものでした。地形を確認しながら低空で飛行する、というようなもの。低空で飛行すれば、レーダーに探知されにくいのだそうです。要するに実践を想定した訓練でした。

そういう訓練をやるなら、基地から発進しなければ意味がない。オスプレイは輸送機ですから、基地から発進して、別の基地へ飛ぶ、ということになるのではないでしょうか。 八尾はいまのところ基地ではありませんね。つまり、そういう訓練には適さない。

操縦技術の訓練などは、米国内で済ませていたのでしょう。そういう熟練したパイロットが、日本へやってきたのでは。日本国内で事故を起こしたら、大変なことになりますから。 橋下が、真面目にこの問題を考えているなら、こんなことは言いださないでしょう。

橋下や松井が、軍事の専門家ではないにしても、専門家の意見を聞くことぐらいはできそうなものですが、それをやったのでしょうか。

もう一つ。こういう話は、地元の理解を得る、というのが重要。米軍だって、地元住民を敵に回したくはないでしょう。住民全部とはいわないまでも、大多数の住民の理解を得たい。

いきなり言われれば、誰でも驚き、反発します。それで大多数が反対に回るでしょう。やはり、時間をかけた根回し、説得は大切。

八尾市民の反対は当然予想されます。八尾市長や市議会議員は、本音はどうであれ、表向きは反対せざるを得ないでしょう。そこから話を進展させられるかどうか、橋下はある程度の見通しないしはシナリオが描けているのでしょうか。

本気で八尾飛行場での訓練を実現しようとするなら、極秘の根回しが必要でしょう。それをやったのでしょうか。しかし、何の権限も責任もない人間が、十分な根回しなど出来る訳がありません。

やはり、順序としては、米軍(米国)から日本政府に提案があって、それを受けて日本政府が関係自治体と協議する。その結果をもって、再度米国と協議する。というのが妥当でしょう。

そもそもが、外交・防衛問題。米国政府と日本政府が協議して決める話で、一市長の出る幕ではありません。橋下には外交・防衛の責任はありません。米軍と折衝するのも政府なら、地方自治体と折衝するのも政府。

今回は、日本維新の会の共同代表という立場で政府に提言した、ということなのでしょうが、権限も責任もありませんから、提案して、政府に下駄を預けて、あとはよろしく(知らないよ)ということにならざるを得ないでしょう。まったくもって無責任です。

橋下は、沖縄の基地負担軽減を考えています、身を切る覚悟です、とみせたいのでしょうが、もはや彼は大阪府知事ではありませんね。そういう意味でも身を切ることにはならない。他人(八尾市)の犠牲において、自分がいい子になろう、という虫のいいパフォーマンスでしょう。落ち目と言われている橋下徹と日本維新の会の選挙前の人気回復を狙ったものでしょう。

しかも、橋下は、この提案が実現すれば、自分の手柄とするでしょうし、実現しなければ、政府なり、八尾市なり、米軍のせいにすればいいだけです。


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