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橋下の仕掛けた「出直し市長選」にたいして、反橋下陣営は、対立候補を擁立しない、と言う作戦に出ました。
まずは、経緯を見てみましょう。
2月3日、橋下が正式に市長辞職を表明すると、その当日自民党、民主党は対抗馬擁立を見送ると表明。
橋下市長、辞職正式表明…各党候補擁立見送りへ
読売新聞 2014/02/03
これに対し、自民、民主両党の府連は３日、出直し市長選について「全く大義名分がない。巨額の市民の税金を使うのはナンセンス」（自民党大阪府連会長の竹本直一衆院議員）などとして、対抗馬擁立を見送る方針を確認した。公明、共産両党も同調するとみられ、事実上の信任投票となる可能性が高まっている。
共産党はちょっと違いました。
共産党が候補擁立へ
msn産経ニュース 2014/02/04
共産党大阪府委員会は４日、橋下徹大阪市長（日本維新の会共同代表）の辞職に伴う出直し大阪市長選に、候補を擁立する方針を決めた。他党にも支持を呼び掛ける。
しかし、すぐに軌道修正
＜大阪出直し市長選＞共産、候補擁立の結論見送り
毎日新聞 2014/02/05
共産が候補擁立見送り表明、橋下氏�狷箸蠢衙亅瓩陵輿蝓。横憩�に自動失職
msn産経ニュースwest 2014/02/14
日本維新の会共同代表の橋下徹大阪市長による出直し市長選（３月９日告示、２３日投開票）をめぐり、共産党大阪府委員会は１４日、独自の候補者擁立を見送ると発表した。すでに自民、民主、公明の３党が「大義がない選挙」「独り相撲させる」などとして見送り方針を決定しており、維新を除く主要政党が対抗馬を出さない情勢となった。
この「不戦敗」について、橋下は
候補擁立見送りは「ひきょう」 橋下氏が反対４党を批判
msn産経ニュース 2014/02/04
日本維新の会共同代表の橋下徹大阪市長は４日、出直し市長選をめぐり、自民、民主、公明、共産の４党について「大阪都構想を否定した。市長選に候補を出さないのはひきょうで、都構想を認めたことになる」と批判した。
「不戦敗作戦」には、最初に不戦敗を言い出した自民党ですら、疑問視する声があったようです。
早々「不戦敗」は…自民、大阪市長選決定先送り
2014年2月5日18時03分 読売新聞
石破氏は会談後、記者団に「仮に（与党系の候補者を）出さないとしても、なぜ出さないのか、市民に納得していただける対応をしないといけない」と述べた。
橋下市長辞職「評価しない」６割…読売世論調査
（読売新聞 2014年2月5日）
出直し大阪市長選、反対５６％ 朝日新聞・ＡＢＣ調査
(朝日新聞 2014年2月10日）
◇厳しい視線 「評価せず」６４％、大阪都構想の賛否拮抗 “不戦敗”政党への不満も 本紙世論調査
（産経新聞 2014年2月16日）
| 資料名 | 出直し選 | 橋下 | 不戦敗作戦 | 大阪都構想 | ||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 賛成 | 反対 | 支持 | 不支持 | 賛成 | 反対 | 賛成 | 反対 | |
| 読売 | 31％ | 61％ | *** | *** | 30% | 57％ | *** | *** |
| 朝日 | 34％ | 56％ | 46％ | 41％ | 29% | 59％ | *** | *** |
| 産経 | 27％ | 64％ | 47％ | 41% | 35% | 57％ | 39% | 40% |
いずれも、出直し選には反対だが、不戦敗作戦には反対と言う結果のようです。
橋下個人の支持・不支持は支持がやや多く、大阪都構想への支持・不支持 ほぼ半々。要するに、出直し選を仕掛けたことについては、橋下個人への支持不支持や大阪都構想への支持不支持とは関係なく「出直し選」「不戦敗」には批判的だ、ということでしょう。
評価しない理由は、
評価しない理由（複数回答）は、「多額の費用をかけるのは税金の無駄遣い」が８９％で最も多く、次いで「任期の途中で辞職するのは無責任」、「議会ともっと話し合うべきだ」が各７８％だった。
（読売）
「多額のお金がかかる」が３１・２％で最も多く、「反対する議員とも議論し説得すべきだ」（３０・０％）、「政治姿勢が評価できない」（２１・２％）が続いた。数字にばらつきがありますが、朝日の調査は複数回答で、産経は複数回答ではなかったということでしょう。
(産経）
ついでに、ここに注目。
「(橋下の)法定協議会から都構想に反対する自民、民主、共産各党の議員を外すべきだ、との主張については賛成１８％、反対６３％」（朝日）
出直し選への反対が多いということとあわせて、橋下の強引なやりかたはまずい、反対派の議員ともよく話し合え、ということですね。
いずれにせよ、常識的には「不戦敗」はまずいでしょう。
民主主義の原則に則って、堂々と討論して、選挙（多数決）で決着をつけるべき。
小生は、反橋下が統一候補を擁立すれば、橋下に勝てたかもしれない、と考えていました。
橋下が平松に勝って大阪市長になった時の、開票結果を見てみましょう。
| 候補者名 | 得票数 | 得票率 | 橋下 徹 | 750,813 | 59.0% | 平松邦夫 | 522,641 | 41.0% |
|---|
どの政党を支持しているが誰に投票したか、という詳しい世論調査をみれば、わかるのですが、あいにく見つかりません。
仮に、公明党支持者も、一般の人たちと同じように橋下に投票した、すなわち約60％が橋下に投票したとすれば、票数としては12万票。
今度の「出直し選」では、公明党は橋下を支持しないでしょう。となると、前回橋下に投票した約12万票が平松に移動する。とすれば、橋下の得票数は63万票、平松の得票数は64万票で、ほぼ拮抗します。
橋下の支持率は、低下傾向です。前回のダブル選当時と比べればかなり落ちているでしょう。
大阪都構想、反対が上回る 朝日新聞・ＡＢＣ府民調査
(朝日新聞 2013年11月19日)
大阪市の橋下徹市長の支持率は、２月の前回調査の６１％から ４９％に低下、不支持率は２５％から３１％に上がった。橋下市長の支持率が５０％を割るのは初めて。知事時代は７９〜５４％ だった。
橋下氏支持率５８％、根強い人気維持…読売調査
（読売新聞2013年11月25日）
橋下氏の支持率は５８％で、前回調査と同じ。府知事時代の５７％（２０１１年４月調査）に次いで過去２番目に低いが、指導力や発信力への評価は高く、根強い人気を維持している。ここでいう「前回調査」はこれか？
大阪都構想、府民の５２％賛成…読売世論調査
（読売新聞 2013年9月7日）
橋下徹・大阪市長の支持率は５８％。前回調査の７２％より１４ポイント下がった。
11月時点の橋下の支持率が、朝日は49％、読売は58％。だいぶ数字に差がありますが、支持率低下傾向は間違いないでしょう。
そして、前回の参院選挙比例代表選出 大阪市における各党の得票
| 政党名 | 得票数 | 得票率 |
|---|---|---|
| 日本維新の会 | 320,110 | 29.08% |
| 自由民主党 | 255,095 | 23.17% |
| 日本共産党 | 141,507 | 12.85% |
| 民主党 | 69,295 | 6.29% |
| 自+共+民 計 | 465,897 | 42.31% |
| 公明党 | 211,568 | 19.22% |
| 維新以外 計 | 677,465 | 61.53% |
日本維新の会は320,110票（29.08%）。これに対して、自民+民主+共産で、465,897票（42.31％）。
政党支持率と、候補者個人の支持率は別ですが、 今回公明党が反橋下にまわると、橋下はまず勝てない。反橋下の統一候補を立てれば、まず勝てる、ということになりそうです。
素人の小生でも、これぐらいの計算をするのですから、プロは当然やったでしょう。それでも、自民、公明、民主、共産各党は、対立候補を擁立しても勝てない、と見たのでしょうか。
仮に、対立候補を立てて戦うとなると、争点は「大阪都構想」になるのでしょうか。
大阪都構想の支持率も40％近くで、賛否半ばと言う状態でした。大阪都構想を争点にするのは難しい。というのは、大阪都構想の目的は大阪の活性化であり、そもそも大阪の活性化を望まない市民はいないでしょう。だから、大阪都構想に正面から反対、というのはやりにくい。
仮に大阪都構想に反対、と言おうものなら、橋下からは、お得意の「では対案を出せ」、と言われるかもしれない。
また、自民党・民主党・共産党は大阪都構想に反対を唱えていましたが、公明党は、大阪都構想に反対したわけではなく、区割り案の絞り込みに反対しただけです。各党の足並みをそろえるのは難しい。仮に区割り案の絞り込みに反対、ということで統一したとしても、それでは、橋下の掲げる「大阪都構想推進」という明確な方針に対しては、弱い。
橋下は、「大阪都構想の設計図を作らせて」と訴えていました。大阪都構想への賛否は住民投票で問う、出直し選は大阪都構想そのものへの賛否を問うものではない、というわけです。
このあたり橋下は、反対派が設計図を作るということすら邪魔している、と有権者に印象付け、改革派対守旧派のような構図をつくろうとしていたのでしょうか。
公明党は、具体的には法定協議会では区割り案の絞り込みに反対したのですが、これは言い換えれば橋下の強引な政治手法に反対した、ということでしょう。この橋下の政治手法への反発は、各党とも共通しています。では、橋下の政治手法を争点とするのはどうでしょうか。
前項でみたように、橋下の支持率はまだ50％近くあり、支持が不支持を上回っていました。橋下を支持する、しない、と言う争いになれば、橋下は有利です。改革派橋下に守旧派が抵抗し、橋下の個人攻撃をしている、と言うふうに受け取られかねない。
また、橋下に対抗できるような人気のある（知名度のある）候補者を擁立するのは難しいかもしれません。
有力対抗馬といえば、誰でも前市長の平松邦夫氏を思いつくでしょうが、平松氏はのらなかったらしい。
平松前大阪市長、出直し市長選「勝手にやれば」 スポーツ報知 2月4日(火)7時4分配信 橋下と戦って勝つには反橋下の統一候補を立てる必要があるが、この人選が難しい、また、 反橋下として、どのように主張していくか、統一した方針が立てるのは難しい。
各党で話し合って統一することは可能だったかもしれませんが、それには準備する時間がない、ということだったのではないでしょうか。
それにしても、橋下の市長辞職正式表明当日に、自民、民主が不戦敗方針を表明というのは、ちょっと早すぎるか。
しかし、これには伏線がありました。
市議会、橋下市長の生命線に狙いつけ「口封じ」
（読売新聞 2013年12月16日）
今大阪市議会では、橋下氏の最大の武器でもある弁舌も影を潜めた各会派が市長である橋下氏の答弁をほとんど求めず、 局長級以下の市幹部ばかりを呼んで審議を進めたからだ。 （中略）
「口封じ」とも言える野党側の作戦。ある自民市議は「テレビカメラの前で話すことが、彼の政治家としての生命線。 論理のすり替えで正当性を主張するだけなのだから、わざわざ表舞台に押し上げてやる必要はない」と話す。
話し合いというのは、自分の意見を言うだけでなく、人の話を聞くというのもある。しかし、橋下は自己主張をするだけ。しかも詭弁を弄して、自分の意見を通そうとする。これでは、話し合いは無駄。
そして、今回の「不戦敗」作戦。
さらにおまけがあります。
橋下市長の辞職、４会派不同意へ 大阪市議会
（日本経済新聞 2014年2月14日）
「これが骨格？肉いっぱいだ！」大阪市会の対立会派、橋下市長予算案にさっそく反発
（msn産経ニュースwest 2014年2月20日）
議会が、橋下のいない間に、予算をバッサバッサと削っているということですね。なんだか大人げないような気もしますが、要するに感情的に受け入れられなくなっている。
この議会の態度には、もう、橋下には付き合いきれない、橋下の思惑通りにはさせないぞ、という意地のようなものを感じますが、いかがでしょうか。
あるいは、自分の思い通りにならずにグダグダ文句を言ってゴネている子供に対し、親が完全に無視する、と言う対応に出た、と言うふうにも見えます。
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