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官邸と自民党

安倍首相は、かなり前から大阪都構想には賛成を表明していました。

1年前の2014年2月13日衆議院予算委員会で維新の党の浦野靖人議員の質問に答えて。(以下は動画の書き起こし)

(浦野議員)
総理、大阪都構想に賛成でしょうか、反対でしょうか、率直に。

(安倍首相)
大阪都構想についてはですね。大阪都構想を実現する制度的な枠組みとしてすでに平成24年九月に議員立法により大都市地域特別区設置法が成立をしたわけでございまして、私も当然賛成をしているわけでございまして、大阪府と大阪市においてはですね、同法に基づく特別区設置協議会が設置をされて、大阪都構想実現に向けて協議が行われているというふうに承知をしております。

あまり内容のない答弁ですが、このころ橋下は出直し選を仕掛けていました。維新の党の浦野氏は安倍首相からそれに対する応援の言葉を引き出したかったのでしょう。

出直し選で橋下が再選されたのが3月23日。4月18日には安倍首相が大阪のあべのハルカス視察。大阪都構想には関係ないですが、安倍晋三と橋下の親密さ匂ってきます。

首相、維新との関係に配慮 橋下氏と「ハルカス」見学
日本経済新聞 2014年4月19日(引用省略)

既に述べましたが(「出直し選後…9月中旬まで」「総務省をまきこんで」)新藤総務相は「協定書」が維新の党の議員だけで構成された法定協議会で作成されたことには苦言を呈していたにもかかわらず、特別区設置協議書を特段の意見なし、としたのにも、なにやら官邸の「配慮」がうかがわれます。

こういう流れの中で、維新の党と方針転換した公明党の賛成により協定書が可決された直後の2015年1月13日、安倍首相は、大阪都構想は意義があるという発言をしました。

首相「都構想意義ある」 憲法改正でも維新に秋波
産経ニュース 2015年1月14日(一部引用)

安倍晋三首相は14日、関西テレビ番組に出演し、維新の党最高顧問の橋下徹大阪市長が主導する「大阪都構想」について一定の理解を示した。同時に維新に対し、憲法改正に向け協力を求めた。自民党大阪府連が反対する大阪都構想に対して官邸サイドは表向き関知しない姿勢を示すものの、首相は都構想に理解を示すことで悲願の憲法改正に向けて維新をつなぎ留めたい思惑がありそうだ。

 首相は番組で、都構想に関し「二重行政をなくし住民自治を拡大していく意義はある。(5月17日の)住民投票で賛成多数となれば必要な手続きを粛々と行いたい」と述べた。
(以下略)

前の章(「官邸が仲介したか」)でのべたように、公明党と橋下の「取引」を官邸が仲介したという疑惑はあるものの、表向きは大阪都構想には賛成でもない、反対でもない、中立の立場。

菅官房長官「市民が判断すること」
産経ニュース 2015年3月13日(全文引用)

 菅(すが)義偉(よしひで)官房長官は13日の記者会見で、「大阪都構想」の協定書議案が同日の大阪市議会本会議で可決されることに関連し、「(大阪都構想の是非は)最終的には市民が判断することだと思っている」と述べた。

各党本部は自民、公明、民主は「地域が決めること」と中立でした。共産党のみが明確に反対。

都構想で自民・谷垣氏「地域で決めていただく」
産経ニュース 2015年4月13日(引用省略)

枝野氏、「都構想」賛否は「党大阪府連が判断」
産経ニュース 2015年4月27日(引用省略)

ただし、谷垣氏は個人的には大阪都構想に反対だったようです。

「大阪都構想は『羊頭狗肉』」と批判 自民・谷垣幹事長
産経ニュース 2015年4月15日(引用省略)

住民投票を一週間後に控えた5月11日、菅官房長官が、突如大阪府連を批判。

自民大阪府連を菅氏が批判 都構想反対で共産と共闘
朝日新聞デジタル 2015年5月11日(全文引用)

菅義偉官房長官は11日の記者会見で、橋下徹・大阪市長が進める大阪都構想をめぐり、反対の立場から共産党との共闘を打ち出した自民党大阪府連に対し、「個人的には全く理解できない」と厳しく批判した。政権のスポークスマンである官房長官が、党の地方組織の方針を正面から批判するのは異例だ。

 菅氏は橋下市長や松井一郎・大阪府知事と親交がある。大阪都構想にも理解があるとされ、維新に配慮を示した。菅氏は記者会見で「私は総務副大臣の時から大阪問題を党内で取り上げてきた」とも発言。自身の地元である横浜市について、大阪市よりも人口が多くて面積が広いにもかかわらず、市職員が少ないと指摘して、都構想実現による行政の効率化に期待感をにじませた。

これに対して?谷垣幹事長が応酬

大阪都構想、自民党本部と府連の違い 谷垣幹事長が言及
朝日新聞デジタル 2015年5月11日(全文引用)

■谷垣禎一・自民党幹事長

 (「大阪都構想」について)京都の議員として見ると、関西のいろんな問題の時に、大阪が先頭に立ってくれないと、いろんなことが進んでいかないことがあると思う。大阪市がなくなることは「どういうことなんだろうな」と感じる。自民党本部は、今まで「地域のことは地域で決めることだ」と申し上げてきた。

 ただ、我が党の大阪府連は反対だ。自民党的にいえば、あそこは維新が出来て以来、選挙で相当、苦労が続いていて、あそこの議員は必死の戦いをしている。同志が必死の戦いをしているのに「党本部は知らん」と言ってていいのか。同志に大きなシンパシーを持っているということは、申し上げたい。(記者会見で)

翌日、石破氏が両者を足して2で割るような発言。

石破氏「谷垣幹事長の発言は当然」 大阪都構想めぐり
朝日新聞デジタル 2015年5月12日 (全文引用)

■石破茂・地方創生相

 (「大阪都構想」に反対する共産党との共闘を打ち出す自民党大阪府連を、菅義偉官房長官が批判した一方、自民党の谷垣禎一幹事長が理解を示したことについて)私が自民党政調会長、幹事長の時に、維新という与党ではない党が大阪で勢力を伸ばし、我が党が第一党から転落した。府議会のみならず、大阪市議会をはじめ、あちこちでイニシアチブを失った。大阪での勢力回復は、党の責任ある立場としてやっていかなければならない。谷垣幹事長の発言は、大阪府連が苦しい立場にあり、一つひとつの議席回復で協調関係を大事にする幹事長として当然だ。自分が幹事長であってもそう思う。

 菅官房長官の発言は、維新よりも政府に否定的な方と一緒に組むのはどうなんだろうねと、政権に対する距離に基づく発言だ。官房長官、幹事長の立場の違いによるものだ。評論家風で恐縮だが、そう思っている。(記者会見で)

大阪府連は本部に応援を要請。

自民官邸目立つ溝=大阪都構想
時事ドットコム 2015年5月12日
(一部引用。「目立つ溝」については、既に述べたとおり。この記事で注目すべきはこちら↓。)

 12日の党総務会では、竹本直一衆院議員(大阪府連会長)が「党本部と府連の一体感を見せてほしい」と訴え、西田昌司参院議員(京都府連会長)は「党三役が大阪入りし、反対表明してもらいたい」と語った。菅長官を念頭に「後ろから鉄砲玉を撃っているようなことをしてはまとまらない」とけん制する意見も出て、谷垣禎一幹事長が「早急に対応したい」と引き取った。

しかし、党3役の大阪入りは実現せず、大阪入りしたのは田中和徳・組織運動本部長。

最終盤、国政からも本格参戦し「総力戦」 急遽の動きで一部混乱も
産経WEST 2015年5月15日(一部引用)

また、これまで住民投票に積極的に関与してこなかった党本部も同日、田中和徳・組織運動本部長を派遣した。

二階俊博氏も大阪都構想については反対だったようです。大阪都構想が住民投票で否決された直後の発言。

【大阪都構想「否決」】「結局負けちゃった」 自民・二階氏、官邸に遠慮せず橋下氏こきおろす
産経ニュース 2015年5月18日(一部引用)

「やかましいこと言った人がおったでしょ。結局負けちゃった。引退してもらうよりしようがない」

 二階氏は18日、都内での講演で「大阪都構想」の住民投票が否決されたことを受け、橋下氏をこうこき下ろした。

 二階氏は「住民投票で反対派が負けてしまえば、大阪の政治はめちゃくちゃになる」とも強調。(中略)

自民党幹部によると、二階氏は住民投票の開票日前、谷垣氏に「都構想は、官邸の言う通りにしてはならない」と迫ったという。

本当は大阪都構想には大反対だったが、党としては中立ということなので、住民投票の結果が出るまでは表向きは反対と言わなかったようです。

官邸が中立という党の方針を無視して大阪都構想の応援した、というのは異例でしょう。谷垣氏、二階氏が立場をわきまえて自制していたのとは対照的です。


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