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出直し選の結果、橋下は市長に再選されはしたものの、府議会、市会とも維新は過半数を制していない。こういう状況の中で、「法定協議会」のメンバー入れ替えなど不可能、と小生は思っていましたが、なんと、橋下と維新の会はそれを実現してしまいました。そして、大阪維新の会のメンバーだけが出席する「法定協議会」で「協定書」を作ってしまった。
この項では、それにまつわる経緯を。
まずはこちらの新聞記事をご覧ください。
大阪都構想の法定協から反対派排除…維新強行へ
YOMIURI ONLINE 2014年06月05日
ざっと読んでわかったと言う人は少ないはず。少々解説が必要でしょう。
出直し選前、すなわち区割り案絞り込みが否決された時点での、法定協議会の会派別のメンバーは下の表のとおり。
党派 | 大 阪 府 | 大 阪 市 | 計 | |||
---|---|---|---|---|---|---|
維新 | 府知事 | 1 | 市長 | 1 | ||
議員 | 4 | 議員 | 3 | |||
維新計 | 5 | 4 | 9 | |||
公明 | 議員 | 2 | 議員 | 2 | 4 | |
自民 | 副会長 | 1 | ||||
議員 | 1 | 議員 | 1 | 3 | ||
民主 | 議員 | 1 | 1 | >|||
みらい | 議員 | 1 | 1 | |||
共産 | 議員 | 1 | 1 | |||
維新以外計 | 4 | 6 | 10 | |||
合計 | 9 | 10 | 19 |
競技会の委員は、府側からは知事と議員9名、市側から市長と議員9名合計20名。そして会長は大阪維新の会の浅田均氏ですが、議決には加わらないことになっています。
つまり、維新9に対して、維新以外10であった。ゆえに1月の区割り案の絞り込みが否決されたわけです。
3月の時点で、府議会は定数109欠員4で議員数は105。過半数は53だが、維新の会の議員は51人で過半数を割っています。さらに、6月に入って維新の会から3人が離党を提出しました。
したがって、本会議にかければ、法定協のメンバー入れ替えなど出来ないのだが、<…府議会では、議事運営全般を協議する議運メンバー17人中10人を押さえている。このため、維新幹部は「議運で府議委員の入れ替えの賛同を得る」としている。>(前掲)しかも、委員長、副委員長とも維新・みんなから出しているので、こういう無茶ができる。
<一方、開会中の府議会の会期は6日まで。野党側の反発による議事への影響を避けるため、入れ替えの手続きは閉会後に着手する。>(同上)
というわけで、実際に大阪府議会運営委員会での決定は6月27日(YOMIURI ONLINE 2014/06/27)。まずは、自民民主所属の委員を大阪維新の会の議員と入れ替え、これで法定協内の委員は維新11対維新以外9。維新は過半数を確保した。
それに対して、府議会、市会の野党はメンバー入れ替えを阻止しようと、松井知事、橋下市長に臨時議会の招集を要求するが、知事、市長ともこれに応じない。(これについては詳細後述)
そこで、市会野党は7月2日、法定協のボイコットを決定(2014/7/2 時事ドットコム)。すなわち大阪市会野党は、大阪市側の議員から選出された委員9名を出席させないことにして、なおかつ、府側の公明党議員2名を欠席させると、<法定協は開催に必要な過半数に届かず、開けなくなる。>(前掲)
大阪市会の党派別構成を見ますと、議員数86に対して維新の会は31人、維新以外は55人。市会運営委員会19人(委員長を除く)も維新7に対して維新以外12、委員長は公明党出身。市会では維新の思い通りにはならないということです。
それに対して、<維新の会は対抗策として、3日午前に府議会議運を開き、公明党の法定協委員2人を維新に入れ替え、過半数を確保した上で維新会派のみで開催を強行する方針だ。>(前掲)(こうすれば府知事1市長1府議会議員8会長1計11で、過半数の出席は確保できる。)
ということで、橋下と大阪維新の会は7月3日に法定協議会の委員を大阪維新の会所属議員で固めて、協議会を再開してしまう。
府議会野党も手を拱いていたわけではない。6月25日松井知事に臨時府議会の招集を要求。(MSN産経ニュースwest2014/6/25) 法定協委員の<入れ替え手続きを阻止するため、関連条例案を提出、議決を目指す>(前掲)。具体的にどんな条例案かは、引用した記事ではわからないが、のちに提出された条例案は、「大阪府議会における大阪府・大阪市特別区設置協議会委員の推薦 手続に関する条例制定の件」。<推薦議員は、大阪府議会における各会派の所属議員数の比率により、これを各会派に割り当てて選定するものとする>(前掲第2条)、というもの。
地方自治法では、臨時議会を請求された首長は20日以内に招集しなければならないと定めている(第101条3項、第4項)が、臨時議会を召集すれば6月27日の議会運営委員会での決定が覆されてしまうので松井知事は議会を招集しない。(msn産経ニュースwest 2014/6/26)
7月1日、大阪市会野党も臨時市会招集を要求(msn産経ニュースwest 2014/07/09)。野党が何をどうしようとしていたのかは、上に引用した記事では不明だが、のちに議会に提出された条例案は、大阪府と同様の「大阪市会における大阪府・大阪市特別区設置協議会委員の推薦手続に関する条例案など。しかし市長も議会を招集しない。(同上)
地方自治法は、首長が議会を招集しない場合、議長が10日以内に招集することになっている(第101条第5項)。
府議会のほうは、知事への招集要求は25日だったので、15日にはその20日が過ぎてしまう。このタイミングで、国の新藤総務相から議会を招集しないのは違法との指摘がなされる(msn産経ニュース 2014/07/15)。府議会野党は議長に召集を要請し、議長は25日に招集を決定。(ABC WEB NEWS 2014/07/16)
臨時府議会では、「大阪府議会における大阪府・大阪市特別区設置協議会委員の推薦手続に関する条例」案が審議される。条例案は可決されるが、知事が再議権を行使、3分の2以上の賛成を得られなかったため、結局否決・廃案となる。(日本経済新聞 2014/07/26)
再議とは。
<地方自治法176条では、首長は議会が可決した議案に異議があれば、10日以内に審議をやり直す「再議」を求めることができる。再議後、再び同じ議案を可決させるためには、出席議員の3分の2以上の賛成が必要。> ( 2011-07-12 朝日新聞 朝刊 2社会 キーワードの解説)
こういう法律があったんですね。知りませんでした。
府議会野党は、直ちに議会の再招集を要求し、今度はさすがの府知事も、自ら議会を招集する(朝日新聞デジタル 2014/08/08)。8月15日に開会され、同様の条例案が審議され、いったん可決、再議で否決、と前と同じ経過をたどる。(朝日新聞デジタル 14/08/16)
市会のほうは、野党が市長に申し入れをしたのは7月1日なので、22日には市会議長が臨時市会を25日に召集することを決定。こちらは、議長が維新の会に所属していないので、速やかに決定される。(NHK 2014年7月22日)
そして、議案として「大阪市会における大阪府・大阪市特別区設置協議会委員の推薦手続に関する条例案」、「大阪市の区域における特別区設置協定書案の無効を宣言するとともに、正常な大阪府・大阪市特別区設置協議会の速やかな開催を求める決議」が提出される。
「条例案」の内容は、大阪府のものとほぼ同じと思われる。「決議」の内容は表題通りで説明不要。
いずれも賛成多数でいったんは可決されるが、条例案は「再議」により、否決される。「決議」のほうは、法的拘束力がないので「再議」にはならない。(日本経済新聞 2014/07/26)
この間法定協議会では、合計4回開催され、7月23日に特別区設置協定書(案)を可決。総務省に提出して意見を求める。(時事ドットコム 2014/07/24)
都構想否定の法定協委員も「問題なし」…総務省
YOMIURI ONLINE 2014年06月17日
この記事は、並べ替えて読むほうがわかりやすい。
<法定協規約には、「(区割りなど都制移行に伴う)協定書作成」を目的に定めている。浅田均・法定協会長(維新府議)は9日、これを根拠に、自民、民主、共産3党の委員について、「都構想の是非という『入り口論』に終始し、規約違反にあたる」と通知した。>
<一方、法定協は「大都市地域特別区設置法」に基づいて設けられており、同法を所管する総務省に対し、自民党府連関係者が、同法や規約の解釈について見解を求めた。>
それに対して、<総務省が「否定する議論をしても問題ない」との見解をまとめたことがわかった。>
大阪維新の会のほうも総務省に働きかける。
<大阪都構想の制度設計を話し合う大阪府と大阪市の特別区設置協議会(法定協)の反対派メンバー入れ替えの是非について、大阪維新の会が総務省に問い合わせたところ、法律上問題がないとの回答を得ていたことが18日、維新関係者への取材で分かった。>(msn産経ニュースwest 2014/06/19)
どういう質問だったか、詳しい内容がわからないので、「法律上問題がない」と言う回答が出ても不思議ではないが。
次は7月15日。これについては先にちょっと触れましたが、
<新藤義孝総務相が同日の記者会見で、松井氏や維新代表の橋下徹大阪市長が府市両議会の野党会派による議会招集請求を拒否する考えを示したことに「(地方自治法で定められた請求から20日以内という)期限内に招集しなければ、法律違反になる」と苦言を呈した。>(msn産経ニュース 2014/07/15)
当然と言うか、法律をどう解釈しても、議会招集拒否は違法でしょう。
違法な手続によって作られた協定書案など、門前払いにすべき、と小生などは考えますが、<集団的自衛権の行使容認などをめぐり、橋下氏と良好な関係を維持したい安倍晋三首相らは今後の「間合い」に苦慮しそうだ>(産経新聞 2014/07/16)。<13日投開票の滋賀県知事選で、橋下氏は自民、公明両党の推薦候補を支持し、選挙戦の最終日には現地入りした>(同上)。自民党の推薦候補は惜敗したが、安倍首相・自民党にはこの件での橋下への義理もある。というわけで、総務省は協定書案を受理。
7月17日、<自民党と公明党の大阪府、市議団幹部は17日、新藤義孝総務相(自民)と面会し、法定協から自公を含む野党会派が排除され、維新メンバーのみで協定書作りを進めている現状を説明した。>(msn産経ニュース 2014/07/17)<面会した幹部によると、新藤総務相は現在の法定協について「正常な状態とは思えない」と指摘>(同上)<一方、現状の法定協で作られる協定書の正当性については「現段階では判断できない」と明言を避けた。>(同上)
そうこうしているうちに、「協定書」が出来上がって、「法定協」=橋下・松井と大阪維新の会は協定書(案)を総務省に提出して意見を求める。
その後、総務大臣は橋下・松井らと面会、議会との対立深刻化に対し苦言を呈したが(時事ドットコム 2014/08/20)、9月3日、結局「協定書」を容認(日本経済新聞 2014/09/03)。9月5日、その協定書は法定協から橋下市長、松井知事に手渡される。(時事ドットコム 2014/09/05)
さて、<協定書議案を提案するまでの法手続きは今回で終わり、大阪市は10月1日に、大阪府は9月25日に、それぞれ議会に提案する方向で府市が最終調整している。>(同上)
大阪市会は第3回定例会が9月9日開会。大阪府議会は9月25日開会予定。
以上が、出直し選後、9月14日までの経過。
小生、こんなややこしい話、うまく説明できているのかな、と思いつつ、この項を書いて来ました。というわけで、ここまで辛抱してお読みくださった方々、ありがとうございます。ご苦労様でした。
さて、みなさん、議会運営員会で法定協委員を選出するなんて、ご存じでしたか?小生は、本会議で承認するものと思い込んでいたのですが。
読売新聞の3月29日付の記事では、<維新は、与野党勢力が拮抗する府議会で委員を入れ替える構えだが、過半数に届かないため、入れ替えの議案を提出しても単独では可決できない。過半数を持つ議会運営委員会で入れ替えを強行する方法も模索しているが、野党側の反発は必至だ。>としています。
というわけで、全く予想されていなかった、と言うわけでもないらしい。が、この書きぶりでは、まさかそんなことはしないだろう、と言う感じか。
では、この種の委員は通常どのような手続きで選ばれるのか。といっても、「特別区設置協議会」の委員を選ぶなどと言うのは、先例はないでしょうが…。
実際、当初「法定協」が設置されたときには、どのような手続きで選ばれたのか。
これについて調べてみたのですが、当初大阪市法定協議会委員を選んだのは、平成25年2月8日、15日の市会運営委員会において(府議会のほうはわからない)。
法定協議会の前身である<「大阪にふさわしい大都市制度推進協議会」と同様に、各派の所属議員数の比率によって割り当て>各会派からは異議もなく、決定されたようです。
これが慣例といえば言えないことはないのでしょうが、だからと言って、各派の所属議員数の比率によって割り当てる、という重要な事項の変更を、運営委員会で決める、しかも運営委員会の会派別構成は議会の会派別構成と異なっている、ということは承知のうえで、多数決で決めてしまう、というのは、常識では考えられない。どうせ本会議で問題になることは明らかですので。
地方自治法では、臨時議会を請求された首長は20日以内に招集しなければならない、そして首長が20日以内に議会を招集しない場合、議長が10日以内に招集する、と定めているなんてご存知でしたか?
これには悪しき先例があって、竹原信一阿久根市長。議会を招集せずに専決処分を繰り返して問題になりました。
ちょっと寄り道になりますが、専決処分についても解説が必要でしょう。
<専決処分は、本来、議会の議決・決定を経なければならない事柄について、地方公共団体の長が地方自治法(昭和22年法律第67号)の規定に基づいて、議会の議決・決定の前に自ら処理することをいう。>(Wikipedia「専決処分)
そして、議会が地方公共団体の長にあらかじめ専決処分を委任している場合は、地方公共団体の長は議会に報告を、そうでない場合は承認を求めなければならないことになっています。
当時は地方自治法に首長が議会を招集しないときは、議長が臨時会を招集するという規定がなかったため、市長が会議を招集しなければ、専決処分がそのまま有効と言うことになってしまいます。
というわけで、この阿久根市長のようなことが出来ないように、ということで、2010年地方自治法が改正された、といういわくつきのもの。
話を元に戻して、法律に明文の規定があるのに、堂々と法律違反を招集しない、なんて、普通の人の思いつくことではありません。
橋下のやっていることは、たいていの場合、ルールに反することではありません。今回議会を招集しなかった、というのは明らかな法律違反です。しかし、罰則規定がなかった。それゆえ、堂々と法律違反をしたのでしょう。
先に、府議会議長は25日に招集を決定(ABC WEB NEWS 2014/07/16)したのですが、法定協が協定書(案)を決定したのはその2日前の23日。<法の定めにより16日から10日以内に議長が議会を招集することになります。岡沢議長は維新の会の所属のため、協議会で都構想の「設計図」を完成させた後の25日に臨時議会を招集すると明言しました>(同上)。 10日以内なら法律違反にならないが、協定書(案)完成後の25日に召集というのは、わざとそうしたとしか思えません。
「再議」なんてご存知でした?
再度引用しますが、<地方自治法176条では、首長は議会が可決した議案に異議があれば、10日以内に審議をやり直す「再議」を求めることができる。再議後、再び同じ議案を可決させるためには、出席議員の3分の2以上の賛成が必要。>
この「再議」で有名になった?のは、名古屋市長河村たかし。出席議員の3分の2以上の賛成がなければ否決、というのは、かなりハードルが高い。与党議員が3分の1以上いれば、議案を再議により否決できることになる。
橋下はこんなことを言っています。
(橋下は)合法でさえあれば道徳にしばられず競争すべきだとしている。例えば、著書の中では「ルールをかいくぐるアイディアを絞り出すことこそ、いまの日本にとって一番必要なんじゃないか!」「明確なルールのみが行動の基準であって、明確なルールによる規制がない限りは何をやっても構わない」「ルールの隙を突いた者が賞賛されるような日本にならないと、これからの国際社会は乗り切れない」などと述べている。
(Wikipedia「橋下徹」「エピソード」「思想」)
そして、橋下は罰せられなければ、法に反することをやってもいいと思っている。
早稲田大学政治経済学部経済学科に入学。兵庫県明石市の泉房穂市長(第49期司法修習生=1995年研修所入所=橋下と同じラグビー同好会に所属)は同じ自治体トップとして橋下をよく知る人物の一人であり、ラグビーの練習後に聞かされた話を今も覚えている。 「橋下は破れた革ジャンをタダ同然で仕入れて1着3万円とか5万円で売って大学を卒業したと言っていた。『破れたやつを売ったらまずいやろ』と言うと『どこが悪いんですか。気付かずに買うのはお人よしや』と」。
(Wikipedia「橋下徹」「大学時代」)
上記のWikiからの引用は、橋下は、法は尊重する、というよりも悪用する。だが罰せられなければ法は無視する、ということを表していると思います。そして、今まで述べてきた、出直し選後の経緯にも、それが充分表れている、とと思います
普通の人は、法を悪用したりしない。法の目的にそわないような、法の利用はしない。罰せられなければ法を無視していい、とは思わない。普通の人には、法=人間の外面の規制以外に道徳=内面の規制があって、法で規制されていなくても、法の目的に反するようなことはしない。
つまり、橋下には道徳はない。
普通の人は道徳を持っていますので、道徳に反するような法の運用なんて、考えつかないのです。だから何度も橋下にしてやられる。
橋下のやっていることは、法の精神には反していても法に反してはいない。法に反していても、罰則規定がなければ橋下を罰することはできない。
それにしても、なんとややこしい話か。橋下が絡むと、話がややこしくなる、と思いませんか。
道徳のない人と付き合うのは面倒、ということか。
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