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前章「出直し選後 9月中旬まで」の続きです。
とりあえず、大阪都構想の「協定書」を完成させはしたものの、これだけでは大阪都構想は実現できません。協定書を府議会、市議会で承認され、特別区設置についての住民投票が実施されて、過半数の賛成を得る必要があります。
大阪府議会、市議会とも、大阪維新の会は過半数の議席を占めていませんから、協定書の議会における承認、住民投票実施に関する条例の可決は不可能というのが、普通の考え方でしょう。
しかし、橋下徹は、大阪公明党に住民投票に賛成させてしまう、という離れ業を演じました。
経過を説明しましょう。
平成26年9月25日、松井知事が大阪府議会に、10月1日、橋下市長が大阪市議会に「協定書」を議案として提出、議会での討議の結果、28日には府・市両議会で否決されました。ここまでは、ごく普通の経過。
11月にはいると、にわかに衆議院解散するという話が出てきた。
そして、それを受けて橋下が衆院選出馬も辞さないと表明。大阪都構想での公明党の「裏切り」に復讐するためだ、という。
橋下氏「公明にやられたままで終われぬ」出馬可能性否定せず 市長職投げ出しも「致し方ない」
産経WEST 2014年11月12日
維新の党共同代表の橋下徹氏（大阪市長）は１２日、衆院解散・総選挙が早期に行われた場合の出馬の可能性について「いろいろと考えています」と述べ、支部長に就任している大阪３区＝大阪市大正区・住之江区・住吉区・西成区＝からの出馬も選択肢に入れていることを否定しなかった。３区は公明党大阪府本部代表の佐藤茂樹衆院議員の選挙区で、前回衆院選で選挙協力をした後、大阪都構想などをめぐってたもとを分かった公明との全面闘争を示唆した形だ。橋下氏は「公明にやられたままで人生を終わらせられない」とも述べ、公明の現職がいる大阪、兵庫の計６選挙区に、維新として対立候補を擁立する方針を明言した。市役所で記者団の取材に答えた。
「市長職を投げ出すことになる」との質問には「致し方ない」と話した。維新の党幹事長の松井一郎氏（大阪府知事）も１１日の産経新聞のインタビューに対して、公明の北側一雄副代表の選挙区である大阪１６区＝堺市堺区・東区・北区＝からの自身の出馬と、大阪３区からの橋下氏の出馬を検討していると答えていた。
要するに、維新の党が公明党に真っ向勝負を挑む、ということ。
これは、公明党に大阪都構想に協力させるための駆け引きだったようです。前回衆院選の時には公明党との取引は『密約』でしたが、今回は公明党と取引していることを隠していません。
橋下氏、公明に「都構想」容認迫る 自身の出馬で揺さぶり
産経ニュース 2014年11月15日
維新の党共同代表の橋下徹大阪市長は１５日、公明党に対し、党の方針を転換して「大阪都」構想に協力するよう水面下で働き掛けており、受け入れられない場合には次期衆院選に公明党現職の対抗馬として自ら出馬する方向で調整していることを明らかにした。
衆議院は11月21日解散。そして11月23日、一転して、橋下、松井両氏とも出馬しない、と表明。
維新の橋下・松井両氏、衆院選不出馬 支援者に伝える
日本経済新聞 2014年11月23日
なぜ突然出馬をとりやめたか、いろいろ言われています。
たとえば、こちらにあるように、大阪維新の会の内部事情による、と言う見方。
地域政党「大阪維新の会」を安定的に運営し、看板政策の「大阪都構想」を実現させるには、市長・知事を続けた方が有利と判断したとみられる。
来年４月の統一地方選を控えた大阪維新の府議、市議らが出馬に強く反対したことや、市長・知事の後継候補選びが難航したことも、判断に影響したもようだ。
小生はそもそも、仮に橋下、松井など、維新の党が立候補しても、公明党候補に勝つのは結構難しいのではないかと思っておりました。いくら維新の党に人気があるとはいえ、公明党の組織票を崩すことは出来ないでしょう。つまり、公明党支持者の票が維新の党の候補者に流れるということは考えにくい。こういう要因もあったのではないでしょうか。
橋下と公明党との取引と言う説もありました。
維新対立候補擁立せずも�猝�約�瓠岼貔擇覆ぁ弩�明大阪府幹部
維新幹部は「いろいろある」と含みも
産経WEST 2014年11月24日
擁立見送りにあたって公明と水面下で何らかの交渉があったのかと聞かれた別の維新幹部は「いろいろある」と含みを持たせたが、公明府本部幹部は「一切ない」と否定した。
維新と公明では、言っていることが違いますが、既に述べましたように、橋下は水面下で公明党と折衝していると言っていますし、後に述べるように大阪公明党の議員のほとんどは、「方針転換」について知らされていなかったので、こういう反応の違いは当然でしょう。
衆院選は12月2日公示、投票日は12月14日。衆院選終了後に、事態は急展開します。
大阪都構想の住民投票、公明が賛成 維新と協力へ
朝日新聞デジタル 2014年12月27日
公明党本部「住民が最終判断を」…都構想巡り
YOMIURI ONLINE 2014年12月27日
24日、創価学会と公明党大阪府幹部の会談
公明党と維新が会談した前日の２４日、小笹氏を含む府本部の幹部らは、東京・信濃町にいた。公明党の支持母体・創価学会の本部に急きょ、呼び出されたのだった。「支持者を心配させない方がいい。住民投票までは認めればいいのでは」
創価学会幹部に言われ、府議らは維新との対立の経緯を必死に説明した。さらに党本部から、議会と首長との関係を正常化するよう求められ、最終的に住民投票まで認めることを決めたという。（読売）
25日、維新の党と公明党大阪府幹部の会談
公明党大阪府本部の佐藤茂樹代表と小笹正博幹事長らは２５日夜、大阪市内で大阪維新の会の橋下徹代表（大阪市長）と松井一郎幹事長（大阪府知事）と会談。橋下氏らが住民投票の実施への協力を求めたのに対し、佐藤氏は「住民投票を実施することには賛成する」という考えを伝えた。（朝日）
26日公明党府本部で緊急会議、方針転換を伝達
２６日午後１時頃から府本部で開かれた緊急会議では「地元からの疑問に、どう答えたらいいのか」「なぜこういう判断になったのか」などと、幹部らに説明を求める声が噴出したという。出席者の一人は「みんな消化不良だが、幹部も説明できる立場ではないだろう。決まった話を押し付けられただけだ」と力無く言った。（読売）同じく26日公明党大阪の小笹幹事長が記者団に明言
小笹氏は２６日、記者団に「維新が主張する『住民投票まで行こう』ということは了解して進める」と明言した。（朝日）
この2つの記事だけでは、「緊急会議」と「記者団への明言」のどちらが先かはわかりません。まさか、「記者団への明言」が先と言うことはないとは思いますが。
この方針転換については、ほとんどの公明党の市会議員、府議会議員には知らされていなかったようで、相当な反発がありましたが、結局公明党府本部が押し切ったらしい。そして大阪都構想には反対だが住民投票実施には賛成という態度を表明することになりました。
きょう法定協 公明大阪市議団「苦渋の決断」、住民投票の実施認めても都構想は反対 他党「矛盾だ」と不信感住民投票認める公明「都構想への反対変わらず」
産経WEST 2014年12月29日
大阪維新の会（代表・橋下徹大阪市長）が掲げる大阪都構想をめぐり、大阪府市の法定協議会が３０日に再開されるのに先立ち、公明党市議団は２９日、都移行の是非を決める住民投票の実施を了承する一方、都構想反対をアピールしていくことを決めた。公明と足並みをそろえ、都構想の協定書議案を否決した市議会の野党会派は「矛盾している」と不信感をあらわにした。公明党大阪市議団は２９日、大阪都構想の是非を問う住民投票を来年５月に実施するために、大阪維新の会が提案する制度案に賛成することを確認した。
自民、民主、共産などはこれに反発しましたが、その後の事態は維新・公明のペースで進みます。
前回衆院選での「取引」については、橋下が一方的に約束（密約）があったと言っているだけで、公明党は何も言っていません。したがって、本当に約束があったのか、あったとしてどのようなものであったかはわかりませんでしたが、今回の場合は、一連の経緯を見ていくと、「取引」があったとみるほうが自然でしょう。橋下の衆院選出馬取りやめは唐突ですし、公明党の方針転換も唐突です。
そして、密約ではなく、半ば公然たる取引でしょう。橋下はすでに前回の衆院選での密約をみずから暴露していますので、いまさら密約を装う必要がなかった、ということです。
前回衆院選の際の、橋下のいう「協力」の時点では、党中央（創価学会？）が大阪を強引に押し切る、と言うことはありませんでした。当時は橋下の人気は絶大であり、大阪の公明党支持者の中でも橋下や大阪都構想を支持する人が多かった。それゆえ、大阪公明党も中央の指示に抵抗しなかった、と思われます。しかし今回は、公明党中央（国会議員）が、大阪（地方議員）の意向を無視して取引したことが明らかです。
小生は、前回の「取引」については、公明党の批判はしませんでした。「取引」があったかどうかが明らかでなかったからです。
しかし、今回の場合は、公明党中央または創価学会が、大阪公明党の意向を無視して、明らかな意思をもって橋下と取引をした、と言えると思います。橋下が突然立候補を取りやめたこと、公明党が突然住民投票に賛成と方針転換をしたのはいかにも不自然で、なにかあった、としか思えないからです。
公明党中央（または創価学会）の行為については、以下の2つの問題があります。すなわち�＾歐靴僚葦〜�での選挙協力の見返りが公明の大阪都構想住民投票への賛成、という取引は、おかしい。��大阪公明党の意向を無視しており、強権的である。�，砲弔い討蓮◆崑膾綸垤汁曚砲�ける公明党の「裏切り」について」で詳しく述べました。�△砲弔い討論睫世垢襪泙任發覆い任靴腓Α�
この公明党の方針転換後の経緯について、簡単に記しておきます。
12月30日 いわゆる法定協議会再開。次回には10月の府市議会で否決された協定書案が修正なしでそのまま提出されることになる。 (産経WEST 14/12/30)
1月13日 法定協議会で協定書案が可決される
1月26日 創価学会は自主投票とすることを公明党に伝達。 (産経WEST 15/01/27）
2月23日 橋下大阪市長が協定書議案を大阪市会に提出。
2月24日 松井大阪府知事が協定書議案を大阪府議会に提出。
3月13日 大阪市議会で協定書議案が可決される。
3月17日 大阪府議会で協定書議案が可決される。
４月には統一地方選。大阪府議会、大阪市会議員の選挙（4月3日告示 4月12日投票）があるため住民投票は5月17日。
4月27日 大阪都構想の住民投票告示
5月17日 住民投票