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9月7日夜、石原慎太郎が尖閣諸島の所有者と面会し、所有者が国に島を売却することを確認しました。どうやら、東京都による尖閣諸島購入問題に決着がついたようです。
ここで、経緯を振り返ってみましょう。多少、小生の推測が入りますがお許しを。
まず、背景としては、天罰発言以来、石原慎太郎の人気は下降気味であった、ということがあります。首相になってほしい人物というようなアンケートでは橋下徹に大きく差をつけられました。そこで、慎太郎は、橋下の市長選で彼の応援をするなど、橋下にすり寄り、彼の人気にあやかろうとしました。ところが、橋下とは政策が一致せず、政治的には連携できない。
そういった状況のところへ、都による尖閣諸島購入の打診があった。しめた、と思った慎太郎は4月16日、ニューヨークでこれを発表してしまった。島の所有者の了解も得ないで。
最初は「東京が尖閣を守る」とか景気のいいことを言っていました。できるわけありません。東京都には外交・防衛の権限がないのですから。国の役割である、外交・防衛に首を突っ込むなんて、とんでもないことです。都が外交・防衛権を持つなら、これは一種の反乱です。
また、「政府にほえ面かかせてやる」、などとも。まったく、こんな動機で、外交・防衛を扱われてはたまりません。ところが、2億円以上または、2万平方メートル以上の土地の購入には、議会の承認がいる、つまり、島の購入には、都議会の承認が必要、ということを見落としていたらしい。そもそも、都民にメリットのある話ではないから、都のカネで尖閣諸島を買う、ということは、説明がつきません。
そこで、猪瀬副知事が入れ知恵をして、尖閣諸島購入のための寄付金を募集したんです。これは当たりました。結果的に14億円集まったんですから。
だが、厳密にいうと、会計上は、寄付金収入は収入として計上し、支出は支出として計上しないと、いけない。それに「2万平方メートル以上の土地」にも該当する。つまり、やっぱり、議会の承認がいる。議会の承認を得るためには、島の調査が必要だが、上陸して調査するには、国の許可が必要。これもできない。
都議会のほうは、賛成でもない、反対でもない、態度保留みたいな感じ(5月21日、6月21日の記事ご参照)。都民にメリットのある話じゃないですからね。かえってお荷物かもしれない。だが、反対すると、石原を支持している都民の非難を浴びる。次回選挙で落選するのではたまらない。というわけで沈黙。
そういうわけで、話は前に進まない。最初は景気の良かった慎太郎も、「本来、国が買うのが筋」(6月11日)、とかいう羽目になる。都がいったん購入したうえでなら、最終的には国に譲ってもいい、というところまで後退する。
そのうち、7月に入って、国が購入の方向で動き出して、地権者と接触を始めます。地権者も、話を勝手に発表されるし、話は一向に進まないし、慎太郎はずるずる後退するし、愛想を尽かしたんでしょう。東京都の調査のための尖閣上陸許可申請に対して、同意しなかったらしい。政府は「所有者の意向も踏まえ」上陸を不許可にした(8月27日)、とか言っていました。
また、これは、いつのことかわかりませんが、石原慎太郎が所有者にあった時に、「古賀さん(尖閣諸島のもとの所有者)からこれを購入したときに、あんまり島に手をつけないでくれって実は言われたんです」と言われていた、とのこと。(石原知事定例記者会見録 2012年9月11日)
形勢不利と見た慎太郎は、「漁船の避難場所を作るなら、国が尖閣諸島を購入してもいい、寄付金は国に譲渡する」(8月31日)、とまで言い出す。これが「見込みなし」(9月1日)ということになって、今度は、「沖縄県との共同購入を提案する」(9月2日)、と言ってみたりする。
ほぼ、国の購入が決定的(9月4日)となったら、完全にギヴ・アップで「無条件で寄付金を国に譲る」(9月5日)という。これには話が違う、国に寄付するつもりではなかった、と寄付した人から抗議が来て、一転今度は「尖閣諸島の施設整備に使う」(9月7日)と変更。
しかし、国は尖閣諸島への施設建設を許す可能性は、少なくとも現時点ではない。もう一つおまけがついていて、寄付金は東京都への寄付金で、その処分は、慎太郎の一存で決めることはできないんですね。処分は都議会が決定すること。
こういうふうにみてくると、石原慎太郎が、無理な話を無理に進めて、一人で転んだ、ということがよくわかります。
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